ノーマンズランド(上・下)

作者:永瀬隼介|徳間文庫
昭和49年の冬、東北地方の寒村の鎌刈集落で、父親は絶滅したはずのオオカミを見た。
昭和55年の秋、その集落で、美少女が失踪し、売春の疑いがかかった公務員が自殺した。
鎌刈集落は平成の大合併で、清河市に組み入れられた。
やり手の清河市長は、廃村寸前の鎌刈集落に民間の刑務所を誘致しようとする。
鎌刈集落には野人のように育った純平がウルフドッグと生活していた。
市役所に勤める幼馴染の敏郎は、純平とともに、鎌刈を別の手段で蘇らせようとしていた。
だが、市長と純平の同級生の土建屋連中は、純平を排除しようと強制手段に出る。
無人地帯で同窓会を開いたのをきっかけに、殺し合いが始まる。


この小説には色んなエピソードが盛り込まれる。
絶滅したオオカミを蘇らせるウルフプロジェクト。
終戦前に満州開拓団が見捨てられ、悲惨な運命をたどった話。
過疎に悩む地方問題や、犯罪心理学によるシリアルキラーの話。
色んな下敷きがあり、それぞれの話が面白い。
本編のストーリーも面白い。
でも、掛け値なしの傑作とまで感じなかったのは、人物造詣が今一つだったからだろう。
この作家は面白い作品を書いていると思うが、何となく登場人物に共感できない。

ノーマンズランド 上 無人地帯 (徳間文庫)

ノーマンズランド 上 無人地帯 (徳間文庫)