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よそ行きの妄想 RSSフィード Twitter

2010-07-08

日本のベンチャー企業を取り巻く環境があまりに悲惨すぎる件について

VC(ベンチャーキャピタル)を含む日本のVBベンチャービジネス)をめぐる環境はまだまだ未整備*1で、日本からGoogleやAmazonやAppleのような高い成長を実現するベンチャー企業が出て来ないことの一因となっている、なんてことは実によく言われることで耳にタコなわけだが、先般ふとしたきっかけで某ベンチャー企業の資金調達のアドバイザリーの仕事を引き受けさせていただいたので、実際にいろいろVCやらなにやら回ってみたところ、まったく虚しい回答ばかりで資金がさっぱり集まらないという実にお寒い状況に直面し、こんなことでは日本からGoogleやAmazonやAppleのような高い成長を実現するベンチャー企業が出て来ないよと強く思ったので、少し不満など整理しておく。

ファンドの満期

大概のVCは、ファンドを運用している。つまり年金やら生保やらといったところからカネを集め、ファンドを通じてVBに投資するわけだが、そのファンドには基本的に満期というものがある。満期(まで)にファンドの出資者に払戻しをしますよということだ。

で、ファンドの満期というのは、大体5年から8年くらいが多い。たった5年から8年だ。VBに投資をするにはあまりにも短すぎる期間で、そもそも創成期のVBに投資する気があるのか疑わしい。

こうしたVCの投資期間に無理矢理目線を合わせると、VBを営む企業の側も、必然的に設備投資が軽く、比較的早期に損益分岐を超えてくるようなビジネスに焦点を絞らざるを得ず、結果としてどうでもいい受託型のシステム開発企業と、CGMSNSと言えば聞こえはいいが単なる流行りものの二番煎じみたいなクソ企業が世に氾濫することになる。

このような惨状の一因は、間違いなく主だったVCの投資期間が一様に短いことによるものだろう。

また、VCはこうした資金の集め方をする限り、必然的に5年から8年おきに大型のファンドレイズを続けて行く格好になるが、ではそのタイミングでたまたま市況が悪く投資マインドが低迷しているとどうなるかというと、ファンドレイズが滞ることになる。

最近VCを回っていて頻繁に聞くのは、「現状で走っているファンドについては概ね組み入れが終わっている一方で、新しいファンドは予定が立っていないため、創業期の会社に投資できるエンティティが存在しておらず、結果としていま投資できるとすると上場を間近に控えたようなレイターステージの会社くらいだ」という、聞くも無惨語るも無惨な悲しい懐事情である。

そんな都合のいい投資先がそうそうあるはずもない(レイターステージの会社は一般的に資金に困窮していない)し、VCがそんな状況では、VCをあてにしたVBの創業は事実上不可能である。


イグジットはIPO

今でも多くのVCはVB投資における投資回収の基本路線として、IPOをあげる。IPOというのはつまり新規株式公開のことで、IPOで回収という場合、投資先が株式を公開した後に保有株式を株式市場で売却することを指す。

VCのスタンスは基本的にキャピタルゲイン(譲渡益)狙いだということだ。キャピタルゲインというのは確かに当たればデカい。VB投資であれば投資額が10倍程度になることはざらだし、100倍以上だって夢ではない。

ただし問題なのは、結局譲渡益というものは、譲渡の相手先がいなければ実現できないという点だろう。投資先の業績がいかに良くても、それを実際に高く評価し、かつそれを購入する資力のある相手がいない限りキャピタルゲインは実現し得ない。

要するにキャピタルゲインによるイグジットを前提に据えた投資は、投資先の事業リスクに加えて、イグジット時点のマーケットリスクをとっているということになる。ただでさえVB投資においては投資先の事業リスクが計り知れないほど大きいのに、その上マーケットリスクまで負っていては事業としてかなり厳しいだろう。

そもそも投資時において、投資先の事業内容の審査こそすれど、イグジット時点のマーケットリスクについてまで検討しているようなVCは、見たことも聞いたこともない。イグジットはIPOと公言しているにもかかわらずだ。

そして現実には、案の定、IPOの主戦場たる振興市場の市況に振り回されているわけである。VCが口を揃えて言うのは、「IPOの件数自体が激減*2しており、業績が厳しく、新規の投資はストップしている」ということだ。数ある投資先のうちには業績がいい先もあろうが、IPOマーケットが悪ければVCの業績にはまったく繋がらないわけだ。バカじゃないんだろうか。


金貸し気質

投資に際しての条件に担保提供や代表者による連帯保証を求めてくるVCは、一度自分たちのやっている事業がなんであったか、声に出して確認してみていただきたい。VCが銀行と同じスタンスをとったら、存在意義がないではないか。

連帯保証については、億単位の債務など個人が保証したところでどうせ返せるはずもなく、VCに言わせればおそらく「覚悟の問題(精神論)」なのだろうと思われ、まあそれはそれでそこまで強く否定するつもりもないが、担保となる資産を求める様には絶句せざるを得ない。担保となる資産がないからこそ高い資本コストを払って資本調達をするんであって、担保があるのであれば銀行から調達するだろう常識的に考えて。

そうしたスタンスであるからその営業もまったく銀行のようで、要はカネなどいらないような優良先に、何とかカネを入れさせてくださいと頼むというものだ。

確かに、カネを欲しがっている先にカネを渡すと使ってしまうから、回収できなくなるリスクが高いが、カネが余っている先であればそういった心配はない。自分で言っていてもバカバカしくなるほど当たり前の話だけれど、それはそうだ。しかしそれは世の中の役にも何にも立たないまったく無駄な事業である。


ハンズオン(笑)

ことほどさようにVBにとって当てにもならなければ頼りにもならないVCが、自分達が投資先に対して提供する価値として何とかの一つ覚えのように得意げに吹聴しているものが、ハンズオン投資である。

単に資金を提供するだけに留まらず、管理系役職員の派遣や投資先企業同士のアライアンス斡旋など積極的に経営の支援を行い、リソースが不足しがちなVBを全面的にサポートします(キリッ)」みたいな金看板がそれだ。

で、実際になにをするかと言えば、「我々は事業のことは素人なので」などと逃げを打ちつつ、雑談に毛が生えたような思い付きを垂れ流す程度のものである。

本質的に金融の会社であるにもかかわらず、何故か事業面でのサポートで付加価値を出そうという姿勢がそもそも歪で、カネのいらない先に無理矢理投資するための口上にすぎないことは火を見るより明らかである。


結論に代えて

要するに、既存のVC*3のビジネスデザインは、背後にいる投資家の都合だけでつくられていると断ぜざるを得ない。

結局、投資家が投資しやすいようにファンドの満期を可能な限り短く設定するものだから、短い期間で何とか投資を回収するためにキャピタルゲインに頼らざるを得ず、おかげで余計なマーケットリスクを背負っているがために損失には不寛容で金貸し気質によらざるを得ない。挙句にハンズオン投資などという絵空事を掲げて、カネのいらないような先に無理矢理投資する傍、投資家に対してはさも自分達がサポートすることでVB投資が成功する確率を上げることが出来るかのような顔をするわけである。

VCも、当然だが、本質的には金融業なのだから、その商品はカネである。であれば、投資家というのは仕入れ先であり、投資先こそが顧客に他ならない。確かにカネの需給を考えると仕入れがボトルネックになることは明らかだから、仕入れを中心に据えたビジネスモデルを構築することはある意味で理に適っていると言えるかもしれない。しかし、顧客に対して提供する価値を増大させずに、ビジネスを成功に導くことは不可能であることもまた真実と言えるのではあるまいか。

VCが提供出来る価値とはなにかと言えば、それはつまり顧客がVCに求めているものであって、要するに超長期性資金の提供以外の何ものでもない。

本来、この超長期性資金の提供こそが、VCのビジネスをデザインするうえで中心に来なければならないものである。安定した資本を得れればこそ、優秀な企業経営者がVBに専念できるのだ。

顧客との長期的な関係を念頭に置けば、投資から数年で無理なキャピタルゲインを狙う必要もなくなる。ゆっくり配当で回収して行けばよいのだ。予期せずにキャピタルゲインを得る機会もあろうが、それはそれで臨時収入として歓迎すればよい。無理なキャピタルゲイン狙いの投資さえやめれば、過剰なマーケットリスクに頭を悩ませるようなこともなくなり、VC自体の収益も安定したものになるだろう。

問題は、逆に、VCがそのような長期性資金をいかに調達すべきかということになろうが、これについては、投資家が急に資金を回収したくなったときのためにファンドの出資持分に流動性を持たせる*4か、ファンドに余剰な資金をプールしておくか、もしくはそもそも超長期の投資に耐えうるようなゆとりある投資家だけを相手にすることなどが考えられる。


追記(7/9)

当方、カネが集まらなさ過ぎてイライラしている面もあり、少し批判が行き過ぎているところや、誤解している点もあるやに知れず、そういう意味でコメント欄の一番上の人によるご指摘などはあわせて読んでいただいた方がよいかも。

*1:おそらくシリコンバレーなんかと比べて

*2:2006年には200件近くあったIPOだが、2009年はまさかの19件だった。

*3:日本の、とは言わない。海外の状況はあまり知らないから。

*4:出資持分の上場など。

kazemachikazemachi 2010/07/09 17:29 うーんと、(日本のVCに限定しても)かなりバイアスのかかった記事なので、一応現場にいた人間としてコメントします。
・ファンドの満期
一般的なファンドの期間は8年〜10年で投資家の同意により最長2年間延長できる、というのが一般的だと思います。一般的なサイクルは、設立
後2〜3年で組入れ、その後3〜5年で成長、再投資、IPO、上場後2〜3年で流動化(イグジット)という感じでしょうか。したがって、ファンド
レイズのサイクルは「組入れ終了後」なので2〜3年後とになります。
・イグジットはIPO
これは仰るとおり。理由は、VCにとって「M&AよりIPOのほうがはるかに儲かるから」、VB(創業者)にとって「事業売却に抵抗があるから」の
2点が大きいと思います。なのでリビング・デッドは確かに多いです。ここの指摘は的を射ている。
・金貸し気質
現在少なくとも大手VCの標準的な投資契約では経営者の債務保証や上場の確約は求めていないはずです。求めていたとしてもそれは「契約交渉
のための条件」であり、交渉によって充分に緩和可能です(基本は努力条項)。ここは明確に事実誤認。
・ハンズオン(笑)
VCにとってハンズオンは「コスト」なので黙って成長してくれるならハンズオフのほうがよいはず。ただ、社内体制の整備や上場準備のための
(証券会社等との)交渉、経営者へのコーチングや社内問題への対応等、投資実績が豊富なVCは多くの(ギリギリのことや失敗事例)ケースス
タディの蓄積があるため、初めて創業した経営者にとってはかなり頼りになるのは確かです。また、中期計画の策定や資本政策の支援、持株会
の設立・ストックオプションの設計・手続きサポートなどは実務面でのサポートはかなりバリューがある(今コンサルにいるので実感しますが
)と思いますよ。確かに事業面でのサポートは、欧米のVCに比べて弱いかもしれませんが、それは経営者の特質やVCへのシェア配分にもよるの
でそれが「日本のかたちだ」ということもできるかと思います。いいか悪いかは別として。
・結論に代えて
上記のような特徴から日本のVCは「戦略的行動のとれるVB」にとっては極めて使いやすい(ヌルい)と思います。VCの思考・行動特性を踏まえ
たうえで、用法・用量を守って正しく活用しましょう!

Tetsuya IsozakiTetsuya Isozaki 2010/07/09 18:38 同上。

michikaifumichikaifu 2010/07/10 00:49 私も、「IPOしかない」というのが最大の問題だと思います。回収期間の問題はシリコンバレーでも同じで、だから最近、小粒のベンチャーしかない。

joejoe 2010/07/10 04:02  独自技術で勝負しているベンチャー企業の社長をしておりますが、ちゅんぷくさんがついついキツイ文体になるのもとても納得できます。

半年ほど前、出資を求めたVC数社に「ソーシャルアプリ、iPhoneアプリあたりが投資効率がいいので、そっちなら出します」と言われ大いに幻滅しました。ですので

「結果としてどうでもいい受託型のシステム開発企業と、CGMやSNSと言えば聞こえはいいが単なる流行りものの二番煎じみたいなクソ企業が世に氾濫することになる」

という部分は大いに同意します(いい物もあるとは思いますが)。

最近ようやく大手から技術が認められ、VCからも出資したいと言われるようになりましたが、勝負すべき時期で資金需要があるものの全く出資をうけたくない程度にVCに対して失望しております。弊社は自力でギリギリ持ちこたえ、独自技術で新しい価値を生み出せる可能性が残りましたが、少しでも運が悪ければ途中で力尽きるぐらい厳しい状況がありました。同じように力尽きた会社も多数あることと思います。

ベンチャーを育てるという建前のVCという組織が資金を吸い上げながら、発展する可能性のある技術を評価しようともせず、役割を果たしていないことはとても残念です。

VCにいる方は、もう少し今のVCにいることに恥じながら早めに辞めるか、でなければ少しでも組織を変えて頂きたいと思います。

と、実体験があるとついついキツクなってしまいます(笑)色々書きたいことはありますが、長い愚痴になりそうなのでこの辺でやめておきます。

hatesatekinghatesateking 2010/07/10 15:59 難しいお話ですね。勉強になります。
うーん、そういう考え方もあるかなぁ。

凍死家凍死家 2010/07/11 08:28 こちとら上場されてからバトンを引き継ぐ立場です。VCがなりふり構わず売り逃げるのは別にかまわないのですが、売りつけた会社が上場とともにゴールしてしまうのは困ります。

新興企業なので、頑張っていても残念な結果になることはあるわけで、それはリスクとして引き受けがいがありますが、そうではないところが印象悪すぎます。最近でも上場わずか半年で退場というのがありましたし、上場までは毎年増収増益ですが取引相手はほとんど親会社一社だけとか、明らかに詐欺っぽいのが印象を悪くしています。

たぶん、そういう記憶が消えるまで、あと5年ぐらいは新興市場は盛り上がらないんじゃないかと悲観しています。

AlainAlain 2010/07/17 09:11 VCを2社渡り歩いた者です(計15年ほど)。

なるほど、立場が替われば、、、と思いながら拝読しました。

かつてVCに籍をおいたものとして、看過できない根本的な誤解があるのでコメントさせていただきます。
VC業界はそもそも直接的に利害関係をもつ人数が少なく、しかも歴史が浅いため、本来、利害関係者であるはずのベンチャー企業の経営者の中にも、大きな誤解が存在しています。
(VC側の啓蒙活動が足りないという現実と、ITバブルを境に新規参入者が急速に増えたため、VCの中にも理解ができていない人が多い現実があったりします。)
いずれにせよ、ベンチャー企業とVCの発展のためにも看過できないと思ったので、書かせて頂きます。
あくまでVC側からの視点であることを踏まえ、ご高覧頂きたく思います。

<VCと利害関係者との関係>
まず、VCと利害関係者との関係を説明させて頂くと
VCにとって、
顧客とは、ファンド出資者、(ExitがIPOならば)証券市場に参加する一般投資家、
     (ExitがM&Aならば)投資先株式を買ってくれる投資家<多くは、事業会社※1>
     ※1 事業会社とは、金融以外の事業を営む企業と定義します。
投資先(投資検討先)は、事業会社で云うところの仕入先(外注先)となります。

chnpkさんの認識とは異なりますが、なぜでしょうか?
それは会計(決算書)を基に考えれば理解できるのですが、VCの売上相手先は投資先ではなく、上記3者だからです。VCの売上とは、主にa)ファンドの管理報酬とb)ファンド運営で発生した成果報酬とc)自身で運営するファンドに自己資金を出資した結果の分配収入だからです。
ベンチャー企業の若い段階で安い株価で仕入れ(投資し)て、投資先が成長し高い株価がついた時点で売却することを生業としているからです。だから、投資先は仕入先という認識が正しいです。

一方、銀行は、企業にお金を貸し付けて、企業から利息付きで返してもらう(売り上げる)業なので、融資先は顧客になります。また、預金者は、お金を預けてくれる債権者(利息をつけて返済する義務を負う相手)であり、ATMや窓口業務で各種決済手数料をもらう顧客でもあります。


<VCビジネスとは>
簡単に説明しますと、VCはchnpkさんがご説明の通り、ほぼ100%がファンド運営という形態で営まれています。ファンドは、主に機関投資家(保険会社、銀行、事業会社)からお金を預かり、キャピタルゲイン(投資による利益)を上げて、元本に利益をつけてお返しする事業です。
お金をお金のまま運用する、正に金融業です。

<ファンド運用の理由>
なぜ、ファンドという形態なのでしょうか?
VCの自己資金で投資すればいいのでは?
と思われるでしょうか?

もちろん、自己資金で投資業(VC)を営むことは可能ですが、VC専業で自己投資のみを行うと、投資を失敗した際のリスクが大きくなり過ぎますし運用できる金額にも大きな制約が生じるので、自己投資だけのVCは存在しません(私の知り得る限りないですが、あればそのVCはアホです)。
だから、大規模な資金を運用している、保険会社、銀行、年金基金から資金を預かってファンド形態で運用することを業とします。もちろん、VCファンドは「当たればデカいが、失敗すれば大きく元本割れする(ハイリスク・ハイリターン)」型金融商品なので、保険会社らも全運用資金の1%よりも遥かに低い割合をVCファンドに出資します。
 個人投資家であれ、機関投資家であれ、ハイリスクの金融商品への投資金額は、全運用資金のわずかな割合で投資します。大部分は国債ほか「ローリスク・ローリスク」な金融商品に運用を振り分けます。
ちなみに、ファンド運用期間が8〜10年間(+2年間)なのは、ファンド出資者が資金をファンドに拘束(固定化)されて我慢できる期間と思ってください。
政府系のファンド出資者で構成されるファンドで、15年〜20年のVCファンドもあります。
事業会社では在庫などで資金を寝かせておく(固定化)させておくのを嫌うように、ファンド出資者もお金をファンドに予め全額出資するよりは、出資総額を約束しておいて、具体的に投資案件が見つかったら必要金額をファンドに振り込む"キャピタルコール方式"というファンド出資形態を好みます。また、ファンド満期前にキャピタルゲインが生じた場合に満期前でも収益を分配するファンドの運用形態もあります。
 どんな営利企業でも、お金は固定化させず、常に廻して(事業や投資で運用して)増やす努力をするものです。

<なぜ、配当ではなく、キャピタルゲイン狙いなのか>
配当でVCは元本と受取利息を回収できるできるでしょうか?答えはできません。やって”やれないことはありません”。しかし、上場株式で株価1,000円の銘柄が年に幾ら配当しますか?多くは数十円でも配当できればいい方でしょう。仮に多めに100円/年の配当できても10年で元本回収がやっとです。11年目で1割増しですが、11年で元本の10%増しか得られません(年率換算の利率は微々たるモノです)。
ベンチャー投資の場合、数件に1件だけ投資に成功する位の打率ですから、トータルでプラスの利益をあげることなど不可能です。仮に奇跡的に利益が出たとしても、ファンド出資者には全く納得できない時間軸と運用利率のバランスです。
別のあり得ないであろう好条件の投資例を仮定してみましょう。投資家の投資株価と同じ金額を毎年配当する例です。1億円で会社を立ち上げ、数年後に1億円/年のキャッシュフローが産み出せ、かつその全て(大部分でもいいです)配当したとしましょう。産出したキャッシュフローを配当として会社から流出させる訳ですから、この先の事業展開に投資して成長へつなげる資金はありません。会社も時代の流れに合わせて変貌する必要があることから、事業で産み出したキャッシュをさらに投資(事業で運用)してさらに事業を成長させる必要があります。だから、上場会社も利益の良くて10%〜20%程度の配当しかしませんし、投資家は発行済株式を証券市場で売買することでキャピタルゲインを得る投資をしようとするわけです。


<ハンズオンは、何のため?>
VCは誰のためにハンズオン(企業価値向上のための経営支援)を試みるのでしょうか。
実は会社(投資先)のためではありません。ファンド出資者のためです。
根本的な話になります(しかも、ちょっと長いです)が、会社とはなんでしょうか?誰の所有物でしょうか?
所有<物>と書くのは躊躇われるのですが、他に適当な表現がわからないので<モノ>という表現にします。

会社(株式会社)とは、法律上は”法人”という自然人(いわゆる"人間")と同じように人格(権利義務)を有している、営利を目的とする組織です。

そこには利害関係者が取り巻いており、経済的な関係者として、顧客、株主、経営者(会長、社長以下、いわゆる取締役)、従業員、仕入先(外注先)、借入先金融機関などがいます。
この中で所有者(オーナー)は株主です。
なぜか?会社を設立した直後(お金だけ集めて、まだ何もしていない状況)を考えてみましょう。まず、設立発起人をはじめ、設立時出資者がお金を会社の口座に振込をしてその証しとして会社が発行する(現在の法律では発行しなくてもよい)”株券”を受け取ります。この段階で株券を持つ”株主”以外の利害関係者は誰もいません。活動を進めていくうちに利害関係者が増えていく事になります。つまり、株主が"(オーナー)"です。
顧客、仕入先、金融機関がオーナーでないことは説明する必要はないでしょう。
では、経営者と従業員は”何者”でしょうか。
従業員は、雇用契約により”労働”という役務(サービス)を会社に提供し、その対価として給料(報酬)を得る身分ですので、オーナーではありません。
経営者は、定期的(任期毎の定時株主総会)もしくは臨時株主総会(不定期)で選任され、株主から実際の会社運営を任される身分ですので、オーナーではありません。ただ誤解を招くのは、日本の会社数の大部分を占める非上場会社の多くは”オーナー企業”と呼ばれる"経営者が会社株式の全部もしくは大多数を保有する会社"であり、その場合は経営者が株主という側面も持つため、会社は社長(社長一族のモノ)と思われがちなことです。
※余談ですが、法律用語の「社員」は、"従業員"ではなく”株主”のことです。一般に株主は1つの企業に複数いるため、会社の所有権を株式の所有割合に応じて区分所有するメンバー(員)ということで、"社員"と定義していると思われます。昔、赤十字のマークに社員と書かれた札を玄関に貼っていた家が多くありましたが、あれは日本赤十字社に少額でも出資したという証明として配布したものと思われます。

話が長くなりました。(諸処の学説等ありますが、経済的側面においては)会社は株主の所有物であり、投資後に企業価値を上げて高値で売却することを投資の目的としているので、VCはそのため(株主であるファンド出資者のため)に”ハンズオン”することになります。
 ※経営コンサルタントという仕事があり、彼らはコンサルティング料を会社から受け取りますが、VCは受け取りません。これは、投資先の株主であるファンド出資からファンドの管理報酬を受け取っており、この中にハンズオンのコストも含むとされるため、会社から別途受け取ると二重取りする事になるからです(通常、本件はファンド契約書内に明文化されています。)

経営者、従業員は、企業価値向上(彼らにとっては、業績向上<利益がふえること>とイコール)で、役員報酬や給料が増えることが期待できますが、VCのハンズオンは彼らのためではありません。
 ※ストックオプション(SO)や株式による上場後のキャピタルゲインも彼らのインセンティブ(飴とムチの"飴")を会社が与えることもあります。会社所有権の一部を彼らに安く分け与えても、その飴でより一生懸命働いてくれれば、投資家の株式持ち分もSOで希薄化した分以上に上がると思うからです。

chnpkさんは書かれていますが、”要するに、既存のVCのビジネスデザインは、背後にいる投資家の都合だけでつくられていると断ぜざるを得ない。”
解釈は、良くも悪くも、正解です。VCの顧客は、投資家ですから。でも、顧客以外の利害関係者を踏みつけたら、どんなビジネスも継続しません。多少の扱いの差は生まれるにしても、どんなビジネスパートナーとも対等につき合うのが商売の大原則です。”投資家の都合だけ”と云われますが、上記で、投資家の都合にその他利害関係者の利害も方向性は一致しているように思われませんか?
日本のVCの歴史は40年弱、本家USでも60〜70年程度でしょうか。短いようにも思えますが、本当に投資家の都合だけ考えてVCをやっていたら、40年もこの業界は続いていないように思います。

VCから資金が集まらずいろいろ考えられるとは思いますが、VCから投資資金を集められないのは、VCに儲かる投資案件と思わせられないからです。
この先の顛末がどうなるかは別にして、なさけないことに、「ソーシャルアプリ」とか「iPhone/iPadアプリ」とかのマイクロビジネスがなぜかVCに人気です。
後述しますが、僕の見方は違います。


自己満足ですが、だいぶ網羅できたなと納得しています。

現場にいた人間としてとても気になった点をもうひとつ。
1.”担保提供、連帯保証”云々とありますが、これは誤解でしょう。
 そもそも株主が会社財産の所有者であり、経営者は株主に経営を委託される身分ですから、ありえません。株主所有の会社財産に担保設定して、何を引き金とするか判りませんが、担保を株主に取られるのでは論理的に整合しません。また、連帯保証とは誰に連帯して債務保証するのでしょう?債務が何かも判りません。
ご承知とは思いますが、経営株主(経営者であり株主でもある人物)にファンド満期までに上場できなければ、会社株式を買い取って欲しいという旨の条項を投資契約書に入れることが多く、(当然ながら)経営者に抵抗されることが多いです。ただ、これはファンドに年限があり、ファンド満期日までに現金化しなければならないVCの立場では必要になります。しかし、買い取り株価については明文化されないはずです。裁判沙汰にしても、裁判コストはかかるし、経営者が無い金を払える
はずはないので、金額を明示されない限りはあまり気にされない方がいい思います。結局、約束すればゴネて総額1円で買い取ることも全然可能です。そもそも買い取り金額(株価)が事前に確定していなければ、経営者にはなんら債務ではない(よくわからん約束な)わけですから、提訴にて請求しようもないと思います。覚書上の努力義務の確認程度の意味合いしかないはずです。
 契約書から丸々削除となると、VCもファンド出資者に顔向けできませんので、出資を受けたい立場では大きな障害になるはずです。

あと、最後に予言です。
1.ITバブル以降VCが雨後のタケノコのように発生しましたが、そろそろ1発目のファンドが満期を迎えており、パフォーマンスが著しく低いので、
90年代中盤くらいの数以下まで淘汰されるでしょう(序の口)。
2.ソーシャルゲームとか、iPhone/IPadアプリとかしか作れないベンチャーに特化して投資するVCは(まず確実に)淘汰されます(中級)。
3.生き残ったVCの投資金額は2〜3億円/件以上が普通になり、投資件数はかなり現象する。ファンド規模が100億円くらいないと、ポートフォリオが組めない。
 資金需要が旺盛で当たればデカイ産業にフォーカスされ、徐々にモバイルとか2.などに資金は向かわなくなる(やや上級)。
4.日本のソフトウェア産業は崩壊する。つまり、市場規模は大きく減少する(上級)。
 
 そう思う理由は書きません。

 少しでも誤解の解消になれば幸いです。

AristotleAristotle 2010/12/12 23:23 日本のVCが悪いというなら、海外のVCにお願いしたらよいだけです。  たぶん、もっとボロクソに言われて、終わりでしょう。

tori.sugaritori.sugari 2011/06/20 21:44 IPO後も企業価値を高める形で投資先に関与し、かつ投資業者として成り立つようなモデルを持つVCが出てもいいのになぁ、と思います。数少ないヒットから全体回収を高めないといけないのだから、ヒットをすぐに手放すのは賢くない。

ffffff 2011/07/09 16:29 もっと株式市場と債権市場の規制を緩くしてジャンク市場を作り
ハイリスクな企業に投資できるようになればいいのですけどね

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