厭な小説

厭な小説

厭な小説

本当に厭ーな空気が漂う話でした。嫌ではなく厭。そういうのやっぱりうまいなあと思いました。装丁も凝っていてそういうとこも好き。こういう姿勢って大事だと思います。中身が大事なのはいうまでもないけれどどう見せるのかという意味で。
この中だと「厭な彼女」が一番嫌かなあ。言葉が通じない不条理空間って耐えられない気がする。

喜嶋先生の静かな世界

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし)

森博嗣の自伝的小説。主人公は大学時代・院生時代師事していた喜嶋先生の研究へのストイックな姿勢に尊敬と憧れのまなざしを持っていたという話。うーん、いいたい事はわかるんだけど諸手あげて賛成できない私がいたり。いやね、何故に大学内では出世をすればするほど研究の時間が削られそれ以外の雑事に終われる時間が増えるんだろうか、理不尽なっていうのはよーく分かるんです。より深い研究ができるようになるはずが現実は真逆をいっているその矛盾。それをおかしいと思う気持ちはわかるけれどでも誰かがその雑事をやらなきゃいけないわけで。これは色んなことにいえると思うんだけど、雑事って評価されにくいものですよね。本筋じゃないから。でも誰かがやってくれてるおかげで世の中うまく回っていってくれてるんだと思うんです。そこら辺がちょっともやっとしました。
十代の頃に読んだら全然違った感想を持ったんだろうなあと思いました。そしたらきっと主人公と同じ気持ちで読めただろうなあ。やっぱり本って何を読むかも大事だけどいつ読むかも大事ですね。