パリ近郊の静かな町。36歳のエリーズは爆弾テロに巻き込まれて全身麻痺に陥り、目も見えず、口もきけなくなった。そんな彼女がある日、幼い少女から奇妙な話を聞かされる。「森の死神」が次々に男の子を殺していると。やがて少女の話が真実らしいとわかるが、エリーズにはなすすべがない。そしてサイコキラーの魔手が彼女にも!

『マーチ博士の四人の息子』が面白かったので、二冊目のオベール。

すっごく面白かった!指先しか動かせず目も見えず話もできない女性を(巻き込まれがたとはいえ)ヒロインに据えて、連続殺人事件の謎解きをさせるとはなんて斬新な!
このエリーズという女性、不幸な事故で体が不自由になり恋人も失ったのだけれども、その悲しみといらだちを抱えつつも、とてもたくましくユーモアがある素敵な女性で、共感せずにはいられない。まさに手も足も出ない状態の彼女に危険が及ぶ時にはドキドキするし、彼女が「この手が動けば!」と思えばこちらももどかしく焦れた気持ちになり、最後までドキドキと楽しむことができた。
『マーチ博士の四人の息子』と比較しても、登場人物が人間味を持って描かれていて伏線も行かされているので、謎解きとしてもとても面白い。細部にこだわるガチガチのミステリーと比べれば大雑把ではあるけど、私にはちょうどよかった。続編があるようなのでそっちも読むつもり。