貯金箱の流れ

[日本]

貯金箱のルーツ
 縄文時代に現れた「甕(かめ)」ではないかと言われています。甕は、稲作が始まり、穀物を貯える為に必要とされました。ここから、「貯える・備える」の考えが 始まりました。
 室町時代の「せんべい壺」(伊賀で焼かれた、深さ、28センチ位の壺、銭が入って出土しています。せんべい=銭瓶でしょうか?)は、具体的に名づけられた貯金箱の祖先であると言われています。

江戸時代
 貨幣制度が整えられ、商業活動が盛んになりましたが、金融は、武士、商人や農民の一部などの限られたもので、一般的ではありませんでした。
 貯金箱と呼べるものは、千両箱、商家が使った木製の銭箱、広く庶民の使った竹筒に入れ口を作った銭筒、それに銭壺がある程度です。

 尚、堪忍箱(買い物をした時に、節約して安い物を買い、余ったお金を貯めておく入れ物)と称するもの、また大黒の貯金箱もあったとする説もあります。

明治時代
 欧米に習った、金融の仕組みが出来、銀行制度や郵便貯金制度が整いました。お金の流通が盛んになると共に、開国後の富国強兵や産業振興のため、勤倹節約の思想が高まりました。これらを背景に、貯金箱も、一般の人々を対象としたものが、たくさん現れるようになりました。
 明治時代初期の貯金箱は、「貯金玉」と呼ばれ、持っているとどんな願いごとも叶う"如意の玉"、つまり「宝珠」を形どっています。大きな目的のために、小銭を少しずつ貯める器として、これが選ばれたことは、当を得ていると言えましょう。
 その後、郷土人形や民芸品に穴を開けたものが現れ、特に縁起物の置物は、いち早く貯金箱に変身しました。恵比寿・大黒・布袋・達磨・福助・招き猫などです。

 「蔵の貯金箱」も、明治時代の代表的な貯金箱です。当時は、大事な財産などを、頑丈な土蔵に収めていました。沢山の蔵の数が、その家の豊かさを現わすものでした。蔵の貯金箱は、庶民の豊かさへの憧れの気持ちが現れている貯金箱だと言われています。

 この頃の貯金箱は、壊さないと一度入れたお金は、取り出せませんでした。その為、「地獄落とし」とも呼ばれたようです。

昭和時代
 昭和時代に入ると、貯金箱=豚というイメージができました。何故、貯金箱と言えば、豚なのでしょうか。それは、イギリスで、使わなかったコインを、台所にあるpiggyと呼ばれる陶器の壺に入れておく習慣があり、Piggy bankと呼んでいました。piggyが、豚を意味するpigを連想させることから、貯金箱には、豚の形を使われることが多くなりました。
 また豚は、スイスでは、運をもたらすものとされています。裕福な農家の象徴とも見なされています。これらから、豚の貯金箱は、19世紀に、様々な貯金箱の中で、もっとも普及しました。
 キャラクター貯金箱の登場、遊びの中から子供たちに、貯蓄の習慣を自覚させる目的で、漫画の主人公やテレビアニメの、キャラクター貯金箱が登場しました。
 昭和時代初期、アメリカ漫画のフェリックスをヒントにした、「のらくろ」、戦後、「鉄腕アトム」、「ウルトラマン」、「ドラえもん」など、数多くの貯金箱が登場しています。以後、貯金箱も、時代を反映する形で、様々な種類のものが出てきています。

 販促品の貯金箱(ノベルティ)の登場、貯金箱を景品として、最初に配った銀行は、三菱銀行です。1961年11月に、「ブーチャン貯金箱」を配布しました。


[外国]

貯金箱のルーツ
 ヨーロッパでは、貨幣の登場(国の刻印が押された鋳造貨幣が誕生したのは、紀元前7世紀から6世紀に、小アジアに存在していたリディア王国だと言われています。)前から使われていた、貴金属の小片などを入れて貰うために、教会に置かれた「献金箱」が、貯金箱のルーツと言われています。
 貨幣を入れる貯金箱としては、アテネオリンピア遺跡から、紀元前300年頃の、テサウロスと呼ばれる粘土製の、宝物寺院型貯金箱が発見されています。
 更に、古代ローマの遺跡からは、3〜4世紀の洋梨型の陶器製貯金箱が数多く見つかっており、当時の人々が、貯金箱と深く関わっていたことが解ります。この貯金箱の型は、女性の乳房を模っているとも言われ、ヨーロッパの貯金箱の伝統的な形として、イタリアなどでは、現在もこの形の貯金箱が使われています。
 アジアでは、今から2100年前、前漢時代のもので、中国の雲南省、てん王一族の墓から出土した、「貯貝器」が、ルーツだろうと考えられています。これは、青銅製で円形筒型をしており、貯貝器は、つまりお金を貯める器と言えるでしょう。ですから、今も財貨に関する漢字には、「貝」という字がくっついているのです。
 中世のヨーロッパでは、鍵付きの鉄製の貯金箱が登場しました。
 19世紀、この時代は、節約することが美徳であり、そのため、貯金箱もたくさんの種類が作られ、また、鉄・真鍮・錫・鉛などが豊富で、容易に手に入ったことから、手工業者の手作りで、数多く作られたのは、金属工芸品の貯金箱でした。それらの貯金箱は、動物・人形・乗物など、子供の玩具を兼ねたものから、技術的にも優れた細工の施された様々なものでした。
 世界の貯金箱のコレクションの大部分を占めるのが、欧米の19世紀の貯金箱です。これらは、アメリカのカラクリ貯金箱が、メカニカル バンクと呼ばれるのに対し、スティル バンクもしくは、ペニー バンクと呼ばれます。
 19世紀後期に、アメリカで登場した貯金箱が、鉄製のバネ仕掛けの貯金箱、カラクリ貯金箱(メカニカル バンク)です。玩具メーカーが、玩具を貯金箱に出来ないかと考えた末に、子供達に夢を与えようとした奇抜な思い付きから生まれました。子供のための貯金箱でしたが、当時の大人たちの、爆発的収集の対象となってしまったそうです。現在のカラクリ貯金箱の原点になった貯金箱です。

 現状の各国の貯金箱は、それぞれの国の特色を生かした、その国らしい貯金箱が主流となっています。


◎ 以上は、先人等、貯金箱の魅力にとりつかれた方々の、研究の成果で、通説となったものなどを纏めてみたものです。