2011-05-13
子どもと産業2 アスベスト>子どもの命
「健康に問題はない」というレトリック は、非常に重要なものを我々に突きつけている。
「子どもの命と産業は、どちらが重要なのか?」
首相官邸の発表は細かい少数の弱者の大きな不利益に対し、共同体利益を追求した結果とも言えるかもしれない。ここで無限に補償問題に関し時間を取られたら、日本政府が危機に瀕する。だから影響が出やすい少数の子どもの命に関しては触れない方向で話を進めよう、と決めたわけだ。産業が立ちいかなくなれば国の不利益になる。こういうことは非人間の行いに見えるかもしれないが、昔から繰り返されてきたことである。
私が小学生の時、今から20年以上前の話だ。その時テレビを見ていたら石綿(アスベスト)に関するニュースをやっていた。日本の建築物に多く使われているアスベストに高い発ガン性が確認され非常に危険だということ。特にそれが公共の建物に使われるケースが多く、学校の天井に多用されている。親たちは国に取り払うよう訴えているが、国の回答は予算がないからできないというものだった。このニュースは強く記憶の中に残っている。なぜなら私の通っていた小学校にはまさに石綿がこんもりと使用されていたからである。アスベストは私達の頭の上でこんもりフワフワしながら、卒業まで頭上に存在し続けた。
それから10年後、アスベストの危険性がある日いきなり大きく報道され、瞬く間に認知されるようになった。幼いときニュースを見ていた姉と「なぜ今???」と驚いた。10年の間あの報道は脚光を浴びることはなかったが、ある日爆弾が弾けるかのように「問題視される」ようになった(多分あの時の親御さん達が細々と活動を続け、この時実を結んだのだろう)。危険性など何も変わっていないのに、「問題だ」と言われるようになり、国を動かす騒動になった。
国は反響を受けアスベストの除去費用、医療保証などの協議に入った。ちなみに我が母校の小学校もこの騒動後に除去の対象となり、天井のアスベスト除去作業が行われ、その様子が放映された、というオチまで存在する。私は当時その教室にいた。15年前に見た報道を思い出しながら、大きくなった自分が今見ているニュースで写っている教室の映像を不思議な気分で見た。私の中では 人命は金に劣る ということをまざまざと見せつけられた象徴的な事件だった。子どもの命は金に劣るという事実は普通に確実に存在する。
私は30代だが確かに未だにガンにはなっていない。クラスメイト全員の今の生活を知っているわけではないし、当時から今までのOBやOGを知っているわけではないが、もし若年でガンになっている人がいてもごく少数だろう。だがだからといってそれはアスベストを黙認する理由になったのだろうか?それほどの恩恵を我々は受けたのだから、誰かがガンになるのは当然のことなのだろうか?危険性が認識されていたのならば、その少数の人たちはただ我々健康な人間のスケープゴートではないのだろうか。
そして今回は放射能だ。
子ども達の命を見殺しにしてまで、産業を貫き通さねばならないのか?
確かに政府が安心と言っているのに疑い深い自分のような連中が騒いで、福島近県を巻き込んで農畜産業をズタズタにする権利はないのだろう。だが医療の分野では当然の、予防措置原則を踏み倒してまで産業は重要なのだろうか?もちろん子どもが生きていく基盤に親と地域が産業をしていなければ、子どもを育むことなど出来ないだろう。政府が守ろうとしているのは主に農畜産業であり、それは子ども達の健全な成長に通じるのかもしれない。だがそれは本当に我々の意志なのだろうか。本当にみながみな危険性を理解し、その危険度なら受け入れると納得したのだろうか。アスベストの時は少なからず知識のない者が大多数で、一部知識のある保護者は納得していなかったが世論は何も動かなかった。
今はどうだろう?世論的には子どもを守るという言い分は過剰反応として受け取られている。原発騒動で善良な人々が恐怖に怯える人を臆病者扱いし、逃げろという人を扇動者扱いしたのを私は知っている。現地の人々や子ども達が逃げ怒れた一端を、我々は確実に担った。そして今も人々は取り残されている。
もう真剣に自らに問いかけてみる必要がある。
子どもの命と産業、我々はどっちを大事に思っているのだろうか。
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