二次創作書きかけ

「今な〜ら言える〜、言えなかったあの〜言ぅ葉ぁ〜〜♪」
夜の繁華街に調子っ外れな歌声が響く。
「ほかに何もい〜らない〜!ただ君さえいてくれれぇぶぁ〜♪」
千鳥足で家路に向かう男は、よれた上着を肘にひっかけてなおも声を張り上げる。
やけくそのように歌詞をがなっていた男は、急に動きを止めると、顔を押さえて震え
始めた。
「……う。」
吐き気が兆したのだろうか。
「……ぶ、ぶぇ〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
違った。何がツボにはまったのかわからないが、その酔っぱらい風サラリーマン推定
年齢20代後半は、飲み過ぎたアルコールのおかげで青白くなった顔に大粒の涙をこぼ
し、外聞もはばからず大声を上げて泣き始めた。
カードレールに踞るように掴まってひたすらに泣く。
ご同輩のサラリーマンの同情を込めた薄ら笑い。
まだ世間を知らない学生たちの見下げた嘲笑。
夜の町を徘徊する女子生徒たちの軽蔑のまなざし。
「もとこ〜〜〜〜もどご〜〜!何でだ〜〜〜〜っ!」
周囲から浴びせられる視線も全く気づくことなく、男は薄みっともない泣き声を上げ
る。「ち、ちきしょ〜〜〜〜!オレのどこがいけないんだ〜〜〜!プレゼントだって
欠かしたことないじゃないかっ!週末だって忙しいのに何とかやりくりしていろんな
とこ連れてったじゃないかっ!がんばって同期じゃ一番の出世頭だしっ!収入だって
悪くないのにっ!!」
その言い分はそんなに間違っていないだろう。少なくとも、よれてクタクタになって
しまっているスーツやワイシャツは、生地も仕立てもそこそこ高級そうではあるし、
靴底の幾分すり減った革靴も、元々はそれなりの品だったに違いない。
まじめに働いているのも収入が悪くないのもきっと本当のことなのだろう。
「……か?」
ふと泣きやんだ男は、何かつぶやいた。
「……やっぱ顔なのかねぇ。」
男はつるりと自分の顔をなでる。
そこにあるのは、お世辞にも色男とは言えないご面相である。
輪郭は丸顔だ。別段太っているわけではないが、ふっくらとした丸顔である。
目は少し細めで一重。目尻がたれ気味で黒目がち。ちょっと愛嬌のある糸目。
鼻は大きくもないが小さくもない。鼻筋はまぁまぁ通っていないわけでもないが、ほ
とんど印象に残らない控えめな鼻。
口も少し大きめだが、いつも中途半端な笑みを浮かべているせいか、自己主張の少な
そうな控えめな口に見える。
無難に短く揃えた髪もあわせてみると、実に平凡そうな男の顔ができあがる。
人畜無害。
それが、彼の顔を一言で言い表す言葉であった。
そして、平凡で特徴のない顔が災いしてか、彼の顔を一発で覚えてくれる人間は少ない。
仕事の場で一番よく言われる切ない言葉は、
『どこかでお会いしましたっけ?』
であったりする。
「はっ!何が『あなたはすごくいい人だけど、私にはもったいない。』だっ!結局
女はイケメンがいいだけじゃないかっ!」
そう言って男は地面を叩く。
「……女は男の顔しか見てないのか。……オレは一生『いい人止まり』でいろってことかよ。………ちくしょぉ。」
泣き続ける力も尽きたのか。男は力なく歩道にうずくまる。
「……はは。たかがアホ女に逃げられたくらいじゃないか。……でも、たかがそれ如きで何にもする気がしないや。……田舎にでも帰ろうかな。」
俯いて動く気配も見せない男。
と、そのとき。
何かひんやりする物が男の頬に押しつけられた。
「うひゃぁっ!」
ビクリと反応した男が振り向くと、何か湿ったものが押しつけられていた。ペロリと舐める生暖かいもの。ちくちくと毛のような物が刺さる。そして鼻息。
呆然とする男の顔を、犬がなめ回していた。
「お、おい!ちょっ………な……おいってば!」
話しかける男にかまわずに、勢いよく顔をなめ回す犬。遠慮無く襲いかかってくる舌と危うくフレンチキスを交わしそうになるのと必死で回避しつつ確認すると、それは見事な黒い毛皮を艶やかに波打たせたラブラドール・レトリーバーだった。
「ちょ!も、もういいって!わかったわかった!」
何が判ったか判らないが、男が首を抱きながら撫でてやると、黒い犬は満足げに鼻息をならした。
「なんだお前?もしかして慰めてくれたのか?」
もちろん、犬は答えを返さない。男の撫でる手が止まると、続きを催促するように鼻息を吹きかけてくるだけだ。
「そうか。ありがとうな。何でか知らないけど、気にしてくれたんだな。」
男は、独り合点に結論を出すと、嬉しげ表情で犬を撫でてやる。
「お前、凄く毛並みが良いな。野良じゃなさそうだし、どこかの飼い犬なのか?」
撫でながら探るが、首輪をしているわけで無し。ただ、胴体に見慣れない何かが巻き付いている。
胴に巻かれた布と、そこに止められた金属のプレートのようなもの。
「……なんだこりゃ。」
それは、伸縮性の強い布に止められた、銀色の金属板だった。数センチ×十数センチで、リベットのような物が両端に打たれている。そして、中央には渦巻きと矢印を組み合わせたような奇妙なシンボル。
「あれ?何か見覚えがあるような。なんだっけこれ?」
もうちょっとよく見せて貰おうと、男が黒犬の背に回ろうとすると、犬は優雅に立ち上がった。
「……」
犬は男に一瞥を与えると、もう用は済んだとばかりに立ち去ろうとする。
「おい、……なんだ、もう行っちゃうのか?」
寂しげに漏らす男にかまわず、背中に金属板を背負ったラブラドールはスタスタと歩み出した。
車道に向けて。
「え。お、おい!」
男が犬に声をかける。幾分人通りが減ったとは言え、まだ繁華街からネオンサインは消えていない。車道は頻繁に車が行き交う。
「危ない!!」
無造作に車道へ歩み出した犬に悲鳴を上げる。
そのまま、男は走り出した。
犬に向かって。
男の何処にそんな力が眠っていたのか。
人間離れした瞬発力で犬に抱きついた男は、直前に迫った車に背を向ける。
自分が轢かれてもコイツは守らなきゃ。
衝撃
衝突音
回転する光
そして、暗転
急激に遠ざかる音の中に、確かに男は一条の遠吠えを聞いた。

上の二次創作は

この後の展開を3つほど用意していたりします。

  1. 主人公は、実は行方知れずだった犬塚一族の一員だった。原作の九尾来襲直後。オリキャラが大暴れと言うか小暴れ。里の立て直しに苦労する木の葉経営シミュレーション風。
  2. オリキャラに転生。原作主人公連中と同世代。特殊能力もちのオリキャラ主人公が秘密組織に属して暗躍する最低系テンプレになりそうでならないかもしれない展開。秘密組織の名前は"世界忍者連盟ビンゴブック編集委員会"とかそんな感じ。
  3. 瀕死のまま異世界召喚された主人公は、その命を救われるが、その代償として口寄せ動物として使役されることになる。通勤中でも仕事中でも睡眠中でも容赦なく度々呼び出されて酷使される毎日。忍犬ライクなしもべ生活から脱出できるのか。

まぁ、とりあえず思いついたネタは書いてみないと気が済まないので書きましたが、続けて書くかは微妙。