アルファリーダー(Alpha Reader)求む

先日書いたオススメネット小説についてのエントリに、予想以上の反響をいただきましてびっくりしております。
そこで調子に乗って、というわけでもないのですが、面白いネット小説を探す方法について考えたことをまとめてみました。
ただ、書いてみたらえらく長文になってしまったので、最初に結論だけ。

面白いネット小説を教えてくれる目利きの人が必要だ。

なんの事やらサッパリの人は、以下本文をお読み下さい。

ネット小説を探すこと

残念なことですが、ネットで面白い小説を探すのは簡単ではありません。特に、自分の趣味嗜好にピッタリ合った小説を探し出すのはちょっとした難事業ですらあります。私などは、面白い小説についてまとめてあるサイトなどを見つけると、「新鉱脈発見!!」などと喜んだりするのですが、自分の好きなネット小説に関連して情報を手繰っていくと芋づる式に面白い小説が見つかる点や、その最初の手がかりを選るのに地道な読み歩きが必要な点など、実際のところ鉱脈を探す山師の仕事に似ていなくもない。
その"ネット小説山師"たる読者が、面白いネット小説を見つけるための手がかりは意外と整理されていません。人によっていろいろやり方はあるでしょうが、私の場合は大体こんなやり方をしています。

  1. まず、これは気に入った!というネット小説を一つ決める*1
    • その小説を掲載しているサイトのリンク集があれば、そこから他の作品を探る。
  2. その小説のタイトルでググる
    • その小説を紹介しているレビューサイトで他の作品を探る。
    • その小説へのリンクを持っているリンク集などで他の作品を探る。
    • その小説をブックマークしているSBMユーザの、他にブックマークしている作品を探る。
  3. 小説のオススメ情報を読者同士が交換しているサイトで、小説のタイトルをキーワードに検索する。
    • 具体的にはArcadiaの「SS捜索掲示板」「おすすめSS紹介板」か、ChaosParadiseの「ネット小説口コミ掲示板」を使う。
    • 2ch等の掲示板も使う。(二次創作などジャンルがはっきりしている場合は特に)
  4. 詳しい人に聞く
    • IRCチャットなどで詳しい人に「***が面白かったんだけど、何かそれ系でオススメない?」などと聞く
    • リアルの知人に教えて貰うことも。
  5. 小説ランキングサイトなどで同ジャンル作品を探ってみる。
    • 主に「ネット小説ランキング」を見る。
  6. 登録型サーチエンジンサイトで同ジャンル作品を探ってみる。
    • 「ChaosParadise」とか「NEWVEL」とか「駄文同盟.com」とか

もちろん、上位に書いたやり方に重きを置いていて、下位になるほど頻度は低くなります。
*2
もちろん、情報に辿り着くための方法が多いに越したことはありません。越したことはないんですがそれにしても、同じように「面白いネット小説を読みたい」という読者層は結構いるはずなのに、その目的を達するための手順が煩雑すぎる気がします。特に、限られた時間の中で効率よく「当たり」を引きたい場合は、「外れ*3」を減らすことが重要になってくる。なにしろ、小説はある程度読んでみないと、本当の当たり外れが分からない場合も多いので、「外れ」を読む時間はなるべく少なくしたいのが本音。
そういったニーズを、もっとスマートに満たしてくれる方法はないもんだろうか、というのがこのエントリの主旨であります。(長い前置きでした)

探索方法の比較

さて、まずは既存の探索方法についてそのメリットデメリットを比較してみました。
以下、それっぽく表にしてみます。*4

探索方法 ヒット率 検索性 登録母数 共有性 情報濃度
お気に入りサイトのリンク集 × × ×
ネット小説のリンク集 ×
ネット小説レビューサイト
捜索掲示
2ch等の掲示 ×
人に聞く ×
ランキング × ×
登録型サーチエンジン ×

ヒット率:どれだけ趣味嗜好に沿った情報が期待できるか。いわゆる「当たり」の期待率。
検索性:キーワードやジャンルなどで探しやすいか。あるいは使い勝手がいいか。
登録母数:トータルでの作品件数がどれだけ多くあるか。
共有性:読者間の相互コミュニケーションが期待できるか。情報共有による相互利益が見込めるか。
情報濃度:あらすじやレビュー・感想など付随情報が見れるか。情報がどれだけ参考になるか。

総論として、どの情報源が一番あてになるか、という意味では、やはり「ネット小説レビューサイト」「人に聞く」の評価が高くなるかと。なにより、評価やジャンルわけなどの付帯情報が多く、全般的な情報濃度の高さは比較にならないので。しかしながら、これらの情報源は絶対数の面でどうしても不利。サイト作るにしても手間が掛かりますしね。また、「人に聞く」は情報源に常にアクセスできるわけではないし、そもそも、ネット小説に詳しいお友達を作らないことには始まらない。
「リンク集」や「掲示板」は、検索エンジンである程度絞り込んだり、ジャンルを事前に特定していると言う前提であれば、それなりにあてにはなると思れ。ただ残念なことに「外れ率」は決して低くない。どうしても、趣味にぴったりフィットする小説を掘り当てるには、それなりの根気が必要になるかと。
一方、ランキングや登録型サーチエンジンは、登録数が非常に多いのだけど、その多さがかえって「外れ率」を上げてしまっている。なにしろネット小説の数は膨大なものになる。例えば「ChaosParadise」の「異世界ファンタジー:連載中」で検索すると、総数はなんと1320件(2007/09/28)。説明文を読むだけでも一苦労。とても総当たりできる数ではありません。もちろん、根気よく「当たり」を探していくことも必要だけど、この母数だと誰もが出来ることではないでしょう。

ネット小説コミュニティ

さて、このエントリの結論に至る前に一度寄り道して、ネット小説を取り巻くコミュニティについて簡単に触れておきます。
書き手と書き手、あるいは書き手と読み手の間では比較的容易にコミュニティが形成されている状態であるのに対して、読み手同士のコミュニケーションは、意外なほどに組織化されていません。
というのも、ネット小説の情報交換は掲示板を中心として行われていて、掲示板では多くのユーザが「無名の読者」なわけです。これは2chのような匿名文化の強い掲示板に限った話ではなくて、固定ハンドルを推奨している掲示板とかでも、個々人が目立つことはない。一つには、あんまり出しゃばると悪目立ちしてしまうというのもあるけど、やはり大きな原因は、「書き手は有名になってもいいが、紹介者が尻馬に乗って名を上げるのはおかしい」的な意識にあると思われる。もちろん、そう言う意識付けが絶対いけないとは言わないものの、結果的に「無名の読者が」「何となくザワザワ噂して評判を作っている」という、コミュニティとしては居心地はいいが、情報の共有としてはあんまり効率の良くない状態を作っているような気がしてならない。
もちろん、誰もがガンガン自己主張しろとは言わないけれど、例えば「この紹介者はこんな傾向の作品が好きですよ」的な、お互いの趣味や傾向がもっと見える形になれば、読者同士の情報交換に有利なんじゃ無かろうか、と思うのですよ。

アルファリーダー求む

さて、やっと結論です。ここまでお疲れ様でした。
要するに、我々普通のネット小説読みよりも一段深く広く読み込んでいる読み専の中の読み専さんが、その読書経験を少しおすそ分けしてくれたら楽に面白い小説を探せていいのにな、ということです。
もっとも、実際にそういうありがたい活動をしてらっしゃる方はいるわけで。例えばこちらのサイトは精力的にSSを紹介してらっしゃいます。

二次創作/SS/web小説/novel 情報
http://sitennsi.blog98.fc2.com/

あるいは、こちらのサイトさんは更新チェック機能を組み込まれていますね。

裏道街堂
http://www5f.biglobe.ne.jp/~sinkarou/

あと老舗の書き手さんでありますが、リンク集として膨大な量をまとめてらっしゃるこちらもすごい。

NaCoPa
http://www.owari.ne.jp/~wer/

たしかに実例はあるのですが、しかし、残念ながらまだまだこういったサイトさん、読み手さんが少ないのは事実ですし、さらに言えば、こういう労力を掛けていらっしゃる方は、もっと評価されて然るべきだと思います。
そんなわけで、ごく個人的にですが、これらの方のように、読み専の中の読み専、労を惜しまずネット小説の紹介をして下さる方々を、アルファブロガー風に「アルファリーダー」とお呼びしたいと思います。(エースコンバットみたいだとか言わないっ)
そして、よりよい情報交換のために、もっと多くのアルファリーダーさんが増えてくれることを願って止みません。


……ていうか、皆さん是非面白いネット小説を紹介して下さい。出来ればレビュー付きでw

そして蛇足

出来れば、1からサイトを立ち上げたりしなくても手軽にお互いの情報を交換できるいい方法がねぇかなぁ、とか思ってます。もっとシステマティックなやり方が出来ると思うんですがねぇ。

*1:最初の一本をどうやって決めるかは人それぞれということで

*2:当然ながら、どういうやり方をするか人それぞれ違う意見もあるでしょうから、あくまで私の場合という但し書きを付けておきます。言わずもがなですが一応。

*3:当たり外れは、あくまで読み手の主観によるものであり、特定のサイトを貶める意図を込めた言い方ではない。念のため。

*4:なお比較する探索方法やその評価は私の主観に基づくもので、定量的なデータに基づいたものではないので、その点ご了承ください。