創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

02-27 2人で道を間違えることは、1人の時より少ない

VWのライターであったレブンソン氏は、ペア・チームの会談の状態を、次のような表現で話しています。
「私たちがよく耳にする質問:『君たち二人は、どんなふうにして広告をつくっているのか?』という質問です。そんなに興味のあることなのですかね?

話の出だしとしては、これはあまり適切ではありませんが、まあ、いいでしょう。その答は、私たちはそれを、きびしいやり方でやっているということです。
私たちは、大いに悩みます。
私たちは、大いに騒ぎます。
私たちは、大いにうんざりします。
私たちは、大いに議論します。自分自身と、そして仲間と。
私たちは、多くの時間を費やし、多くの広告を反古(ほご)にします。
私たちは、給料に値する仕事をしているかどうかわかりません。
給料に値する仕事をするということは、楽なことではありません。
もし楽なら、それはきっとどこかが間違っているのです」(注:1963年NYADCの会議での講演)。
そして、レブンソン氏は、ペア・チームの効用について、こう話します。
先に引用した糸川博士の「2人1組で考え、仕事をする時は、絶えず相手の存在によって」どちらか一方に片寄りすぎることが防げるということを明確に証明しているのは驚くばかりです。(→02-12 流動的なペア・チーム
「おかしなことですが、自分がいったい何をしようとしているのかを忘れてしまうというのは、よくあることなのです。
私たちがDDBで使っているチーム・メソッドが役に立つという理由の一つはここにあります。
2人の人が道を間違えるのは、1人の人が道を間違えるよりもむずかしいものです。
互いに相手の考えを尊敬し合っているアートディレクターとコピーライターを一室に入れ、調査部門やクライアント、資料室などからあらんかぎりの資料を提供するならば、彼らを別々に働かせた時よりも、ずっとよい広告を手に入れることができることは、請合いです。
いつもそうでしょうか?いいえ、いつもそうだというわけではありません。
常に正しいなどということはありえないものです。
しかし、これだけは確かです。私たちのやり方でやれば、より早く悪いアイデアを避けることができるということです。
あなたは、他人をペテンにかけるよりも、もっと簡単にあなた自身をペテンにかけることができるのです。
1人で仕事をすれば、間違った道に踏み込んで、間違ったことをし、多くの時間をむだにします。
自分のしたことを、ずいぶんいいことのように思い込んでしまったりすることもあります。
ほかに人がいなければ、いきおいそうなるのです。
おまけに、永久にそれに気づかないかもしれないのです。もう一人いれば、その人がすばらしい考えを思いつくこともあるのです。
だれのものにしろ、アイデアが出てくる時というのは、すばらしいものです。
それがだれのアイデアかわからない時は、なおさら楽しいものです。
そして、なんといってもいちばん楽しいのは、二人が同時に同じアイデアを思いついた時です」(同)
DDBのやり方が、ペア・チームによる異種情報の交換と相互啓発であることはわかっていただけたと思います。
次章では、DDBの創造的環境についてお話ししましょう。(第2章 了)