創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

03-33 アカウント部もDDBで働いている

もちろん、DDBでも問題が起こります。そこのところを、パーカー夫人は、電通でこう話しました。
「それでは、アカウント・エグゼキュティブの発言権はどの程度のものか、お知りになりたいでしょう。アカウント・エグゼキュティブはキャンペーンを却下できるのでしょうか?


もちろん、できます。もし、キャンペーンが、商品のマーケティング上の目的に合致しないならばです。しかし『僕の考えに一致しないから』という理由では、却下することはできません」
ディロン氏もいっていたように、広告の表現面の好き嫌いの問題ではなく、商品のマーケティング目的、条件に合致しない時に却下されるわけです。しかし、次のレブンソン氏の言葉は、DDBにおけるアカウント部をよくいい表していると思います。


「もちろん、私たちには協力者がいます。私たちはDDBの空気を吸っています。そしてそれは、大変体にいい空気です。私たちは、この業界で最もすばらしいアカウント部を持っています。私たちのところのアカウント部はいいます。『引き受けた。でも見込みはゼロだぜ』
そして彼はおかしそうに笑いながら帰ってきていうのです。『なぜだかわからないけど、ともかく買ってくれたよ』本当は、彼が虎のように戦ったからなのです。そしてなぜ彼が虎のように戦ったかというと、彼もまたDDBで働いているからなのです。彼は私たちの味方です。彼は私たちと同じ信念を持っています。いつ、いかなる場合にも」(注:前出1963年の講演)。


全社あげて一つの理念──彼ら流にいえば、フィロソフィー(哲学)を持っているといえばそれまでですが、そう単純でもないようです。
アカウント部の幹部の一人であるコップルマン氏が、こう話してくれたことからも推測できます。
「問題の所在は、クリエイティブ部門の人たちがよい広告をつくるということだけにあるのではなくて、価格の点、流通段階といった、クリエイティブ以外の分野にもあるわけです。ですから、その解決は、そんなに簡単ではありません。
クリエイティブ部門の人間は、自分たちの力で問題を解決できると思いがちですが…。
ですから、彼らに、他の分野もいろいろ研究して、それからやっと問題が把握できるのだということを理解させなければいけません。そのためにも、彼らが、私を個人として尊敬してくれなければなりません」