創造と環境

コピーライター西尾忠久による1960年〜70年代アメリカ広告のアーカイブ

(829)VWオールド・ビートル、拾遺(67)

 

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今の★数累計です。 

"New Yorker"誌1959年8月1日号("LIFE"誌は8月3日号)から始まり16年間つづいたVWオールド・ビートルのシリーズは、いまなお、世界中の志の高い広告クリエイターたちは、笑いながら厳粛に受けとめています。


キャンペーンの丹念な跡づけはの『ニューヨーカー・アーカイブ』によって行なったが、"LIFE"誌他からも拾ってみました。
[ニョーヨーカー・アーカイブ]によるVWビートル・シリーズ (総索引) ←クリック


【意訳】
レディの遇し方が、ようやく分かりました。

いつだったか、あるご婦人が、こう、おっしゃいました---VWを運転する
くらいなら、山のような洗たくものを洗うほうがまし---って。
ほかにも、ここに書くのをはばかるようなお言葉も。
で、私たちも申しあげます。
オートマチック・スティック・シフトのフォルクスワーゲンをお求めいただ
けるようになりました。
クラッチ・ペダルがありませんから、片足が解放されたことになります。
並速の運転では、発進時以外にはシフトを変える必要がないのです。
それと、滅多にはないことです
が、時速90km以上を出すとき。
燃費は1リッターあたり10.5km強です。
さらにすてきなことに、運転がうんとラクになりました。
もし、あなたが怖がらなければ、どこへだってお行きになれます。


C/W 不明
A/D 不明
『マコール』誌 1969年8月号





It finally knows how to treat a lady.


A woman once said she'd prefer doing 10 loads wash to driving a Volkswagen round the block.
What a few others said is unprintable.
We got the message.
That's why you can now get a Volkswagen with something called an automatic stick shift.
It does away with a clutch pedal. (So your left foot is free do in car.)
And it does away with shifting every other mile. (You merely shift once when you start out.
Then once again when you go over 55 mph.)
And do matter where you go, you'll get about 25 miles to a gallon of gas.
After all, what good is a car that's easy to drive.
If you can't afford to go any place


C/W Unknoe\wn
A/D Unknoe\wn
"McCall's" August 1969


1970年3月20日フォルクスワーゲン・ビートルに関する2冊目の編著書の
新書版『かぶと虫の図版100選』
ブレーン・ブックスから上梓しました。
そのテキスト部分の転載です。

オートマチック・ギア・チェンジになって女性誌にも---


まあ、いってみればソフィストケイトされたVWビートルの
広告について、いささかの危惧の念がないわけでもなかった。
「DDBがVWの広告を引き受けた時、米国中を走っていた
VWビートルの総台数は20万台ぐらいだったと思います。
だから、非常に少ない人に対して気の利いた広告表現をやって
もよかったと思うのです。
でも、現在はもう2000万台以上のVWが米国にあると推定
できます。
そうなるとVWの広告表現はより多くの人に読まれることを
想定しなければなりませんからね。
そういう観点からいって、VWの広告は、10年昔と今とで
は、気の利かせ方に変化が出ましたか?」
ファイン氏「かぶと虫の3分の2は、セカンド・カーとして買われて
います。
米国では、セカンドカーの市場が非常に大きくなってきています(注:38年前の会話です)。
オーナーを学歴別に見ると、教育のある人ほどVWを買うという
統計が出ています。
合理的に考えて行くとわかるのですね。
経済的であり、おまけにモデル・チェンジをしませんからね。
しかし、この市場はますます大きくり、最近では労働大衆にまで
オーナーの層が広がっています。
かぶと虫以外の型もこの趨勢にあります。
さらに、今度はオートマチックが加われば、これはさらに大きく
ひろがるでしょう。
1969年は、初めて婦人を対象にした広告をつくろうと考えています。
というのは、女性はオートマチックでないと運転を嫌がるものですから---。
そうなのです。DDBの基本的な考え方は、だれにもわかりやすいこと---
というのがその一つです。
ですから、オーナーの種類が教育程度の高い人から、必ずしもそうで
ない人へ変わってきたといっても、別に広告のつくり方を変える必要は
ありません。
しかし、どちらかといえば、逆に、だんだん、ソフィストケイトされて、
気の利いた広告が伸びるんじゃないでしょうか」

米国における美術館の入場者は、この10年間で2倍に増えたそうである。
ニューヨークのメトロポリタン美術館に日曜日に行ってみると、子ども連れや
夫婦や恋人同士などがたくさんいて、古典絵画を鑑賞している。
この一事を見ても、米国の消費者の好みがソフィストケイトされていると
いっていいのでは?
したがって、VWの広告は、販売台数の飛躍的な伸び、オーナーの階層的な
広がりにもかかわらず、広告を変えない。