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2014-05-16 金

自殺予防のために表現の自由を制限することについて

はてなブログで自殺についてのエントリーが相次いでいる。
代表的なものは以下のようなエントリーがある。(日付順)

最高の死に方は自殺だと思う - HYLEにっき
自殺という選択肢はアリ?ナシ?〜週末シンポジウム第3回〜 - 心がよろけそうなときに読むポンコツ日記
「自殺」に関して〈個人〉と〈社会〉の両側面から考えたい - ぐるりみち。
自殺する人は弱い - grshbの日記
自殺についてつらつらと - はてなブログを毎日書いていたら10Kg痩せました!
先日の記事「自殺する人は弱い」が炎上した件について - grshbの日記
自殺をテーマに記事を書くということの難しさと注意点の話 - ネットの海の渚にて


自殺報道に影響されて、自殺が増えるウェルテル効果というものがある。
だから自殺を話題にすることは、望ましくないと考えている人たちがいる。
上記の最後のドボン会会長(dobonkai)氏のエントリーはその趣旨で書かれたものだ。
WHOの自殺報道ガイドラインに従い、個人ブログでは自殺に関することを書くべきではないという意見だ。

決して自殺のボーダーラインにいる人の背中を押してしまうような記事だけは書いてもらいたくない。
すべてのブロガーさんにお願いしたいのは慎重に配慮した記事を書くか、もしくはこのテーマに触れないかだ。


自殺をテーマに記事を書くということの難しさと注意点の話 - ネットの海の渚にて


当ブログで今年2月にネットユーザーの自殺について取り上げた際も同じような指摘があった。
話題になった自殺を取り上げる際に読んでおきたいWHOの手引き - 斗比主閲子の姑日記
[NS] あなたの言葉が、人を殺す。WHOの自殺報道ガイドラインを読もう

もともとこのガイドラインは、「自殺予防 メディア関係者のための手引き」として、テレビや新聞などのマスコミ関係者を対象に作られたもので、ブログやSNSなどのネットユーザーを対象に書かれたものではない。
しかし、こうした取り組みはマスコミなどの大手メディアだけではなく、ブログやSNSにおいても効果があるという話がある。
先月、ネット上の自殺に関するコミュニケーションは、自殺予防において逆効果だという論文が発表された。

死にたい気持ちを匿名の他者に対して打ち明けることや自殺方法を閲覧することは自殺念慮の悪化につながっていました。
匿名の他者にメンタルヘルスの相談をすることは、自殺念慮を悪化させはしませんでしたが、抑うつ・不安感の悪化につながっていました。


論文・研究が出ました:インターネット利用の自殺への影響 - 自殺サイト:自殺・臨床心理学 (和光大末木研ブログ)


このブログを書いている研究者は、ネットが自殺に与える影響について予防効果よりも自殺が増えるウェルテル効果のほうが大きいのではないかと書いている。

ネット上では自殺方法を説明しているサイトから、困った時にアドバイスをくれたり話を聞いてくれたりする人まで色々いるわけですが、このウェルテル効果を突き崩すほどネットが自殺予防効果を発揮しうるのかと言われると、なかなか難しいなと調査をするごとに思うようになっていきました。


本が出ます!―そしてインターネットと自殺の関係の展望 - 自殺サイト:自殺・臨床心理学 (和光大末木研ブログ)



毎日のように自殺が話題になるはてな村

さらに研究が進むと、将来的には自殺に関する書き込みが制限される可能性もある。
例えば、はてな界隈は自殺に関する話題が活発なコミュニティだ。
とくに増田(はてな匿名ダイアリー)はその最たるもので、この数か月分をちょっと検索しただけでも、すぐにこうした投稿が見つかる。
ほかにも短いものや注目されなかったものはたくさんある。

中高とずっとイジメられていて、殴り殺されたら楽になるのにとずっと考えていた。

当然友達なんて一人もいなかった。

その頃は毎日毎日死ぬことばかり考えていた。


自殺を考えてる


よし、死のう。と思ったのは二・三週間前。ホームセンターでロープを買い、酒を買い、じいちゃんのオムツを拝借し、睡眠薬を少しずつ貯めた。ロープ以外は脇役にすぎない。中々タイミングがとれずにいたが、精神的に限界を超えた。実行あるのみ。そこで、貯めておいた睡眠薬をベッドの上にザラザラとひろげ、赤ワインで飲み下していった。


自殺しようとしてオカンに見つかって失敗したこと


八方塞がりで死ぬしか無いと分かってるのに、身体は死を本能的に拒否する。

電車に飛び込む足は震えて動かないし、ODする喉はクスリを吐き出す。

勢いを付ける方法を模索しなければならなかった。


http://anond.hatelabo.jp/20140316020335


これ書いた増田だが、俺も8年ぐらい前に鬱病で退職してからは、ずっと自殺考えてた。

3年ぐらい何もできずニートしてたよ。


自殺すんな


こうした内容の投稿を放置することは自殺を引き起こす可能性がある。
だからネットで自殺が話題になることを望まない人は、個人を批判するだけでなく、こうしたサービスの運営に対しても抗議すべきだろう。
増田に「自殺を考えてる」と詳細に書くことは、自殺に関する持論をブログに書いて炎上するよりも、悩んでいる人の背中を押してしまう危険性がある。

WHOのガイドラインに従わない大手マスコミ

自殺予防に関するWHOのガイドラインが普及しづらいのは、マスコミがこのガイドラインを無視していることが原因の一つだ。
特にテレビと雑誌はまったく守っていないため、理想主義的なお題目に過ぎないと感じてしまう。
実際、過去の自殺報道を見ると、ガイドラインをまったく配慮していないニュース記事はいくらでも見つかる。
それはマスコミが営利企業なので仕方がないのだろうか?
それもあるが、読者がそういうプライバシーを含んだ報道を求めていることが背景にある。
最近、衝撃的なニュースとして、秋葉原通り魔事件の加害者家族が自殺したという記事があった。

加藤被告の起こした犯罪のために、被害者の遺族の人たちは塗炭の苦しみを味わっている。だが、加害者の家族も苦しみ、離散し、弟は兄の犯した罪に懊悩し、ついには自裁してしまったのだ。


(1/5) 『秋葉原事件』加藤智大の弟、自殺1週間前に語っていた「死ぬ理由に勝る、生きる理由がない」 : J-CASTテレビウォッチ


この週刊誌の記事はWHOのガイドラインを完全に無視した内容になっている。
事実報道を超えて、遺書のような形で手記を掲載しているし、センセーショナルな見出しを付けて、遺族に配慮した様子もない。
マスコミが加害者の家族や生い立ちを調べるのは、それを喜ぶ読者がいるからだ。
上記のリンク先のブックマークコメントを見ると、大衆がそれを求めた結果だという冷静な指摘が人気コメントになっている。
この件については凶悪犯罪における報道の自由とプライバシーの問題が絡んでくるので単純な問題ではない。
しかし、この記事はWHOのガイドラインをまったく守っていないし、自殺予防の観点からは個人ブログのエントリーよりもはるかに悪質だと感じられる。

自殺が話題にならざるを得ない環境

こうした悪質な自殺報道や、個人ブログの自殺に関するエントリーが止まらないのは、この社会にとって自殺が身近な話題としてあるからだ。
fujipon氏が昨日こう書いていたのがとても腑に落ちた。

「自殺」とか「死にたい気持ち」って、そんなに特別なものじゃない。

年間3万人が自殺している国、なのだから。

以前、周囲の人と、「精神的な不調を感じたことがあるか?」という話になったのですが、「実は私も……」と、ほとんどの人が手を挙げ、薬を飲んでいた(いる)こと、仕事を休んでいた時期があることなどを打ち明け合っていました。

人によって濃淡はあるのでしょうが、「自殺に無関係な人も、自殺に無関心な人もいない」というのが、僕の実感です。


それを「シンポジウム」と呼んではいけない。 - いつか電池がきれるまで


もしこれからも毎年3万人が自殺すると仮定すると、80歳まで生きていた場合、周囲にいる50人に1人が自殺する計算になる。
自殺未遂者がその数倍いると推測すると、この社会において自殺は生活に密着した話題である。
誰もが無縁ではいられない、生きていくうえで重要な問題だ。
根本的な問題として、違法な時間外労働を減らしたり、格差や差別を少なくして、生きやすい環境を目指すべきだ。
そのことに目を向けず、意識の高い人が自殺に関するエントリーを無自覚だと批判したところで、また何度でも同じようなエントリーが無自覚に公開され、そこに批判が集まって炎上するだろう。

もしはてな運営が規制をして、増田から自殺に関する投稿を消したとして、それで防げる自殺の数はどのくらいあるのだろうか。
調べていたら、こんなエントリーがあった。

問題はオーストリアの結果が日本で同様に起こるかどうかになります。つまり普遍性のあるものなのか、日本には当てはまらないかです。こればかりはやってみないと間違い無く効果があると「必ずしも断定」できません。

そうなると社会実験を行う是非と言うかデメリットがどの程度かになります。大きなデメリットを伴うものであれば実行には慎重さが求められますし、さほどのデメリットも生じないのなら自殺対策として試みてみる価値がある事になります。


釣りにマジレスしながらメディアの自殺報道を考える - 新小児科医のつぶやき


自殺予防のためなら、表現の自由などささいなデメリットでしかないという考え方もできる。
しかしマスコミやネット企業がウェルテル効果を無視している状態で、個人ユーザーが自殺について語るなというのは無理がある。
自殺に関する話題を、ネットから完全に消し去ることなどできないだろう。
本当の問題は、自殺が身近な問題になってしまっていることにあるのだから。

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