『トト・ザ・ヒーロー』 ジャコ・ヴァン・ドルマル監督 (1991年)

cinema-chouchou2007-04-22


トト・ザ・ヒーローTOTO LE HEROS
監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル 出演:ミシェル・ブーケ、トマ・ゴデ、サンドリーヌ・ブランク、ミレーユ・ペリエ、ジョー・ドゥ・バケール
(1991年・ベルギー映画

とっても大好きで思い入れのある映画のひとつ。なので、何から書いて良いのやらよく分からないけれど、いつものように思いつくままに。何が好きかというとずっと老人になった主人公トマ(トト)は子供の世界を持ったまま、夢と妄想に生きているけれど、最後は苛酷な現在の人生を受け入れることができ笑いながら死んで行った...上手く言えないけれど。

この映画は監督の長編デビュー作で、その後『八日目』を撮ったベルギーのジャコ・ヴァン・ドルマル監督。この2つの作品に共通する優しい眼差しも好き。そして、両作品共に出演しているパスカル・デュケンヌ。この『トト・ザ・ヒーロー』の中では末っ子セレスタン(青年時代)役で、精神的な障害を持つ子供。でも、青年になって彼は養護施設で暮らしているのだけれど、兄のトマが恋人エヴリーヌ(ミレーユ・ペリエ)を紹介する為に会いに行く。「気づいた?アリスに似てるだろう!」とトマは嬉しそうに訊くと、セレスタンは間髪入れずに「似てない。」という。このシーンもとても好きで、見た目はトマの方が大人(社会人)なのだけれど、セレスタンの方が現実を見ている。トマは老人ホーム暮らしになった今もまだ大好きな姉アリスのこと、そして火事の中で同じ日に生まれた近所の裕福なアルフレッドは宿敵。名探偵トト・ザ・ヒーローの妄想と現実、現在と過去、未来という時間軸が交錯する描き方ながら、小難しくもなくちょっと切なく、でも楽しい。最後まで、劇中幾度も流れるシャルル・トレネシャンソン『ブン』の軽やかさもとっても効果的で重要に響いている。

色々思う事があるのだけれど、この映画は少年トマと姉アリスの近親相姦的なニュアンスも十分入っている。少女アリスはトマへの愛の証のために、アルフレッドの家に火を付け死んでしまう。トマもアルフレッドも愛するアリスの幻影から抜け出せずに大人になっている。・・・こういう辺りの感覚ってとても好きだし分かり易いのは、どこか私にもそういう部分があるからなのだろうか?とも思う。お家の花壇のチューリップ、アリスのお腹のほくろを唾で消そうとするトマ、お母さんが留守の間に2人で暮らすシーンで、アリスが階段を上り二階でお母さんは寝ているのだと疑うアルフレッドに告げるところ...『ブルー・ベルベット』だったり『ブリキの太鼓』だったり『白い家の少女』だったりと私の好きな映画のあるシーンが重なるのも楽しい♪さらに、姉と弟のこの辺りの描写はジャン・コクトーの『恐るべき子供達』を想起させるものだし、好きな要素がいっぱい!さて?カテゴリーって難しい。姉と弟、家族を通して生と死を描いているとも思うけれど、”ファンタジー”に入れておきます。とにかく、死んでしまうけれどアリス役のサンドリーヌ・ブランクがとっても可愛くって大好き☆

青年トマの声と老人トマを演じるのはフランスの名優ミシェル・ブーケ!また愚痴ってしまうけれど、このお方は70代というお年になられてからも、セザール賞の主演男優賞(フランスのアカデミー賞のような)を2000年代になって2度も受賞されている。でも、どちらも日本公開はされていないので観ることができない...やっぱり残念かな。

関連:サンドリーヌ・ブランク:SANDRINE BLANCKE 『トト・ザ・ヒーロー』の少女アリス♪ : クララの森・少女愛惜

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