2010-07-20
■[今日の映画]インセプション・その2(完全ネタバレ注意)

先日「インセプション」についてかなり辛辣なエントリを書いたのですが、そのあとネット上でさまざまな感想や解釈を読むうちに、ふとある考えが浮かんだので、自分なりにまとめてみたいと思います。
(以下、結末まで完全にネタバレしていますので、ご注意ください!)
映画のラストシーン、危険な任務を成功させた主人公は無事に故国の土を踏み、ついに子供たちの暮らす家を訪ねます。いよいよ再会を果たす直前、彼がふと自分のトーテムである独楽を取り出して机の上で回してみると、なぜか現実世界では回らないはずの独楽が鮮やかに回り出します。
これは単純に解釈すると、主人公がまだ夢の世界にいることを暗示しているように思えますよね。自分もそうなのかと思っていました。
でも、こちらのまとめエントリで紹介されていた、2ちゃんねるでの“この映画は主人公の自己セラピー"説を読むうちに、ある考えが浮かんだのですよ。
インセプション感想・考察まとめ ネタバレ注意 - Live Free or Tianbale
つまり、もしあのラストが現実だとすれば、いままでは独楽に異常があって回らなかったのではなく、妻のいない現実世界を完全に受け入れられない主人公自身が無意識に失敗するように仕向けていた。しかし自身のトラウマから解放されたために、今度は回すことに成功したのでは…という解釈です。
そう考えると、前半でエレン・ペイジがジョゼフ・ゴードン=レヴィットのトーテムであるいかさまダイスに触れようとして拒否される場面も、主人公のトーテムに本人以外誰も触れていない=実は他の人間が回すとちゃんと回る、という伏線ではなかったかという気がします。
(追記:コメント欄で指摘いただいたのですが、あの独楽は「現実世界だと一旦回るけどすぐに止まって、夢の中では延々と回り続ける」んでしたっけ…そういえば主人公がそう説明してましたね。そこも含めて再度確認したいと思います)
さて、この“自己セラピー"説をさらに推し進めると、自分が不満に思えてきた点にも実はきちんとした理由があるのではないかと思えてきました。
凄腕のプロのはずの主人公がワガママすぎる、チームの人間がそれを許容し過ぎる以外にも、とにかく「インセプション」には悪人が出てこないんですよね。「ダークナイト」でジョーカーという素晴らしい悪役を登場させた監督の作品とは思えないくらい。
夢の中で襲ってくる武装集団は単なる意識の具現化で、ワルっぽいのはコボル社という顔のないよくわからない組織だけ。標的であるキリアン・マーフィは父との確執に悩む普通のビジネスマンだし、冒頭のミスディレクションからしてトリックスター然と描かれる渡辺謙もちゃんと約束を守る義理堅い男。結局一番悪いのは、自己中心的で周囲に迷惑をかけまくる主人公自身なんですよ。でも仲間の力を借りて任務をやり遂げる内に最後には自分の過去と決別し、はじめて自分から利他的な行為を行ない、幸せを手にする。
もしかして、主人公以外の全てのキャラクターは、誤った道を歩く主人公を正しい方向へと導くことを目的に最初から配置されているのではないのか? ちょっと強引ですが「クリスマス・キャロル」に例えると、「死んだ妻=夢」と「子供たち=現実」の両方を手にしようとする主人公は強欲な金貸しのスクルージで、他の登場人物は(標的の人物と父親のやりとりも含めて)すべて彼を改心させようとするクリスマスの幽霊たちではないのか?それならば、あまりに主人公に都合の良すぎる展開も納得が行きます。
すなわち、この「インセプション」という映画のストーリー全体が、何者かが主人公を救うために仕掛けた壮大なインセプションではないか? そして劇中で主人公が現実だと認識している世界はすべて夢の第一層に過ぎないのでは? …これが自分がたどり着いた結論です。
この結論は最初に述べた“ラストは現実"説と矛盾しているように思えますが、劇中の現実世界とはあくまで主人公から見た認識に過ぎず、そこにおいて独楽が回ることによって自分が解放されたことに気づく、という意味では同じだと考えます。
もちろんここまで述べたことは全て勝手な妄想に過ぎないのですが、おかげで自分の中ではこの映画に対する感情がずいぶんとすっきりしました。機会があればぜひ2回目も見てみようと思います。
しかし、まだ疑問がひとつだけ残ります。いったい主人公にインセプションを仕掛けたのはだれなのか?
もしあの結末の後が続くとすれば、おそらくこうではないでしょうか。
念願かなって、ようやく子供たちをその腕に抱く主人公。幸せそうな表情。
と、次の瞬間、夢から目が覚める。
呆然として辺りを見回すと、眠っていた彼の周りをすべての登場人物たちが輪になって取り囲んでいる。そしてなぜかクリストファー・ノーランの姿も。
暖かい笑みを浮かべながら、拍手と共に祝福の言葉をかける人々。
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
呆気に取られていた主人公だが、ようやく晴れやかに笑う。
「ありがとう」
字幕「監督に、ありがとう」
「妻に、さようなら」
「そして、全ての子供達に」
「おめでとう」
ジ・エンド。
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今観てきました! “自己セラピー説”興味深いですね!
独楽が徐々にぶれ始めるの「転がって!転がって!」と祈りながら観ていたら、それをクスリと笑い飛ばすような暗転。 ノーラン監督が憎かったですw
色んな見方が出来て、何度でも楽しめる映画でしたね〜。
回転軸がブレ始めてすぐに暗転したのは「これは現実だよ」という監督のメッセージ。「インセプション」はハッピーエンド。
トーテムを他者に見せてはいけない理由は、その「トーテムを見た他者」が設計した夢に連れ込まれたときに、夢か現実か判断出来なくなる為。
「悪人は出て来ない」と言うが、そもそもエクストラクションもインセプションも違法行為。フィッシャーと父親の和解が描かれているが、巧妙に導かれた事のてん末を「純粋な領域に立ち入った」と捉えれば良い行いとはならない。違法行為にアリアドネを参加させることに難色を示したマイルズの反応が自然である(そのマイルズですら孫のかわいさに実利をとる)。
「主人公はわがまま」と言うが「それでもコブは優秀なのだ」と捉えるべき。違法行為とわかっていながらリスクを犯すのは報酬の為であり、それを得る為には「(コブが投影するモルを差し引いても)優秀なコブが必要である」とメンバーが認識していると考えるのがベター。
確かに自分も注文つけながら既に2度目を見るつもりになっているので、もう監督の術中に嵌りつつあるようです。
>ABCさん
丁寧な説明ありがとうございます。
主人公のキャラクターについては、もう少し離れた位置から見るべきだったかも知れません。
「インセプション」見ました。とても面白かったです。
私は、主人公が自由の身になる為に
サイトーを利用した(インセプションした)話だと
思いました。
話の冒頭でコブを試す為に、
サイトーの(ゆめの中の)金庫を開けるというシーンが
ありましたよね…
あの夢では最低でも2層目まで行ってる、、、ってことは
もしかしたら一番最初の
ジジイサイトーが出て来たシーンは
サイトーの3層目(深層意識を植え付ける)だったのかも、と。
なにしろ、冒頭の日本のシーンは
一番怪しい気がする。。。。
しかも、サイトーが
依頼者(…しかも大企業のトップ)なのに、
夢の世界から帰れなくなる事態に陥る危険を冒すか、、?
というのが腑に落ちない。
私も、もう一度見てみたいです。。。
スルメ映画ですね。。。。
次に、冒頭で老紳士となったサイトーが描かれているのは起承転結の「結」に近い所を先に見せ、時間を逆行させる演出手法でしょう。観客は物語の序盤に「?」を強制的に持たされ、良き所まで誘導されるのです。誘導された先の解答に感嘆するか、幻滅するかはそれぞれですね。
最後に、「サイトーが夢の世界から帰れなくなる危険を冒すか?」という疑問についてですが、フィッシャーにインセプションする仕事で死んでも目覚めない程強い調合薬が用いられることも、フィッシャーが潜在意識を守る訓練を受けていたことも、その訓練によって投影された組織の抵抗を受け、致命傷を負うことも想定外だったのです。その事は主に物語終盤、卓を挟んで向かう合うコブとサイトーの対話から読み取れます。
妻に、さようなら
そして、全ての子供達に
おめでとう
このエンディングどこかで見たような・・・
何かエヴァンゲリオンに出てきそう