les livres lus au clair de la lune

2006-10-31

[]新刊情報 ゴーチエ『モーパン嬢』

ゴーチエ『モーパン嬢』の新訳が岩波文庫から刊行された。ゴーチエ(Theophiloe Gautier, 1811-1972)はフランス詩人・小説家。岩波文庫で『死霊の恋/ポンペイ夜話』が読める(ヴェスヴィオ火山の噴火で亡くなり熔岩のなかで石化した古代の麗人がよみがえり、若き書生を冥界へと誘うという、どこか泉鏡花をおもわせる短編「ポンペイ夜話」は、私が死ぬほど好きな作品だ)。その序文がいわゆる l'art pour l'art(藝術のための藝術、藝術至上主義)の宣言として名高く(文学史的には、当初ロマン派であったゴーチエはこの宣言をもって高踏派に転じたとされる)、また19世紀に流行したレスビエンヌものの小説の典型としても著名である本書は、新潮社から出ていた田辺貞之助の訳が久しく品切で、古本でもまず手に入らない状態だった。今回も新訳、岩波文庫収録は快挙である。ただし、この新訳のために田辺訳が復刊・増刷される可能性はいっそう低くなった。田辺氏はゾラやユイスマンスの見事な訳業からすると、本書の翻訳(私は未読)も立派な仕事であっただろうと思われる。いつか読む機会を得たい。

[]新刊情報 バルト『ラシーヌ論』

ラシーヌ論

ラシーヌ論

バルトの『ラシーヌ論』がようやく邦訳刊行された。本書はバルトがいわゆるテーマ批評(バシュラールの「物質の詩学」の流れを汲む批評手法)の方法でラシーヌを論じた小著ながら重要な著作。もともと、ラシーヌの専門家の渡辺氏が訳する予定で、ずいぶん前から邦訳計画が進んでいたときいているが、いままでなぜ刊行されなかったのか不可解だ。また、訳書現物を手にとっていないので、詳しい造本仕様はわからないが、わずか377ページのこの本(原書はポワンのポケット版だと、ごくごく薄い書物だ)に、5670円という定価は、いくらなんでも高すぎる。