橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

端田晶「もっと美味しくビールが飲みたい!」

著者は、恵比寿ガーデンプレイスにある恵比寿麦酒記念館の元館長で、現在はサッポロビールCSR部長。ビールに関する豊富なうんちくの持ち主で、以前、『小心者の小ジョッキ』という著書を紹介したことがある。もともとは三井グループのグループ内広報誌である「三友新聞」に連載されたものというが、一年分の記事をまとめて一冊にしたのが、この本。酒飲みの感覚だと、酒の本にビールの大ジョッキ以上の金額の払うのは惜しい。その点、これは文庫オリジナルで五三三円だから、気楽に手に取ることができる。
前著同様、飾りのない軽妙な文章で、ビールのうんちくが語られていく。落語や文学の話題は、とくに私の不得意分野だけに興味をひかれる。時代の流れということで発泡酒についてもいろいろ書かれている。著者はドイツのビール純粋令を尊重しながらも、発泡酒については「日本のビール税が高いことがそもそもの発端」と正直だ。サッポロビールが募集している川柳のネタになることも多く、「空き缶に格差社会があるビール」「ビール飲む牛を見ながら発泡酒」とは笑える。ビールカクテルの話題もあり、著者のお薦めはクランベリージュースをビールで割った「クランベリービール」だとか。今度やってみよう。
一年前に買った本だが、ようやく読むことができた。すでに続編も出ているらしい。

もっと美味しくビールが飲みたい! 酒と酒場の耳学問 (講談社文庫)

もっと美味しくビールが飲みたい! 酒と酒場の耳学問 (講談社文庫)