橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

「TOKYOどぶろくフェスタ2010」

classingkenji2010-02-19

今日は東京農大で開催の「TOKYOどぶろくフェスタ2010」に出席。現在、全国にあるどぶろく特区で、一三三の蔵がどぶろくを造っているらしいが、そのうち過半数にあたる七五の蔵から一点ずつ出品された。画期的なことである。年輩の参加者からは、「穂積先生に見せたかったねぇ」との声が聞こえる。穂積先生とは、酒評論家でどぶろく解禁運動にも関わり、笹野好太郎というペンネームで『趣味の酒つくり・どぶろくを作ろう実際編』という本を書いた、故・穂積忠彦のことだ。
参加者約一五〇人は五つのグループに分かれ、それぞれが決められたテーブルで一五種類のどぶろくを試飲し、採点する。その集計結果から一六点の入賞と七点の決勝進出が決められ、決勝では専門家を中心に審査、大賞に輝いたのは新潟の「どぶろく卓」だった。一次審査のあと、しばらくの間は他のテーブルのものを試飲する時間があり、このときに「どぶろく卓」も試飲できたのだが、しっかりした味にもかかわらず、アルコール度数がやや低めのためにすっきり飲みやすく、良くできた酒だった。
私がいちばん気に入ったのは、山形のこだま工房が作る「山形むらやまのどぶろく・もも色」。美しいピンク色で、ベリー系の香りがあり、まるでロゼワインの新酒のよう。この蔵の普通のどぶろくも以前試飲したことがあるが、吟醸酒のような香りの品のいいどぶろくだった。気に入ったので、あとで注文して入手した。
意外にも、参加者のかなりの部分が若者で、女性も多かった。主催者側も意識して、審査員に会場から若い女性を募っていた。今年、どぶろくがブレイクしそうな予感がする。居酒屋の皆さん、店にどぶろくを置きましょう。(2010.1.30)

趣味の酒つくり―ドブロクをつくろう実際編

趣味の酒つくり―ドブロクをつくろう実際編