橋本健二の居酒屋考現学

居酒屋めぐりは私の趣味だが、同時にフィールドワークでもある。格差が拡大し、階級社会としての性格を強める日本社会の現状を、居酒屋に視座を据えて考えていきたい。日々の読書・音楽鑑賞の記録は、「橋本健二の読書&音楽日記」で公開中。社会学専攻、早稲田大学人間科学学術院教授。

浦和「おがわ」

classingkenji2012-04-03

太田和彦居酒屋紀行をプロデューサーとして担当していた小川洋一さんが、昨年一一月に開いた店。もうあちこちで話題になっているが、私は初めての訪問。
名店となるべくして生まれた店といっていい。何しろ、全国の名店を知り尽くした人が満を持して開いた店なのだから。L字型カウンターとテーブル二卓、小さな小上がり席がひとつ。窓からは、小さいながら美しい庭が見える。日本酒も料理も、厳選されている。旭正宗、花陽浴、神亀など埼玉の地酒を筆頭に、東北泉、麓井、満寿泉、初亀、獺祭、石鎚など、全国の名酒が揃う。料理も、日本酒に合うものが揃っている。中でも驚嘆したのは、全国の名居酒屋から取り寄せた珍味で、宇都宮「庄助」のゆず味噌、白浜「長久酒場」のウツボの一夜干しなど。全国の名居酒屋のエッセンスが、この店に集められているわけである。
まだまだ白木が眼にまぶしいが、これから年輪を重ねるごとに、さらに魅力を増して行くに違いない。常盤公園という大きな公園に面していて、もうすぐ花見酒が出来そうだ。近くに住む人が、うらやましい。とはいえ、私も年に何回かは通うに違いない。(2012.3.17)

さいたま市浦和区常盤4-3-15
17:00〜22:00 火休