二郎さんの収支


下世話なお話で恐縮ですが、「二郎のは寿司の夢を見る」のすきや橋次郎さん。客単価が最低ひとり3万円。10席が昼夜一ヶ月先まで予約で満席と聞きます。


ってことはドタキャン、席の半端を考慮に入れても一日の売上が50-60万円。稼働日を年280日としても年間売上1億5000万近いのかぁ?と計算できます。


若いスタッフ、掃除の鬼といわれるおばちゃんも含めて6人前後で動かしていることを考えると、料理店としては驚異の数字です。


坪あたりの売上、従業員一人あたりの売上は破格中の破格、ありえません。


「いい仕事をしていればお客はついてくる」という職人とっての金科玉条も、近頃の景気では絵空事に思える昨今なのに、それを体現しているのは見事としかいいようがありません。しかも、そういう日本人が職人には求めない数字的な成功は、職人の腕と仕事の前に見事に消し去られているのです。


やり手の経営者であろうと、職人であろうと、店は収支が成り立って初めて店として存在します。経営者が金儲け、職人は仕事にだけ特化すればいいわけではありません。


コンサルタントがみても唸ってしまうようなビジネスモデルの成功例は二郎さんが意識して作り上げたものなのか、たまたまいい仕事を突き詰めていったらそうなったものなのか、私には全くわかりませんが、身をもって知っているのは、ああだ、こうだと考え、試行錯誤の末にできあがった経営のシミュレーションやマーケッティングの手法も、深く考えたら当たるのではなくて、当たるのは「たまたま」であることがほとんどなのです。100の失敗を重ねて5つの小さな成功が導かれる・・・くらいのものなのですね。


設備投資を最小限にし、従業員にかかるコストをおさえ、稼働率を上げる。ミシュランの星をとって、本や雑誌で取り上げられる。しかも、ほかにはまねのできない唯一無二の仕事でお客様を惹きつける。コンサルタントならだれでも飛びつきそうな経営事例ながら、コンサルティングしたら誰でも成功することはありえない事例がそこにあります。


そしてなにより、コンサルタントにお金を支払って経営状況を好転させようとする寿司屋さんがある一方で、お金持ちのコンサルタント経営者からお足を頂戴して(寿司屋さんの客としてってことね)商売をしているお寿司屋さんがいる(あくまで想像ですが) この差は歴然としています。どちらも田舎町の小さな料理屋には絵空事なんですが。