|2012-01-01
WHITE ALBUM2-closing chapter-
冷たい風を震わせて、歌が聴こえてきた――夕暮れのキャンパスに、誰もいない学食に、寂しげな校舎の窓辺に。三年前に凍らせたはずのあの歌が。情熱に突き動かされ、純粋な想いを綴った、欺瞞の歌が溶けてゆく。あの、三人だった冬も今は遠く、一人と一人の季節を何度も繰り返し。続きは、そんな晩秋。あの時 引きちぎろうとした絆の、醜い傷痕が乾くこともなく、けれど、何かが変わる予感とともに始まっていく。寂しい二つの旋律は、互いを惹きつけ傷つけて、そしてまた、新たな旋律を呼び寄せる。もうすぐ、新しい冬が来る。あのひとといられない、そしてあいつのいない冬が。ホワイトアルバムなんて知らない。だって、もう何も歌えない。届かない恋なんてしない。だって、もう人を愛せない。
【音楽について】
届かない恋。作中で使われる楽曲として、これほど印象に残るものが今まであっただろうか。随所に挿入されるピアノ中心なBGMもホワイトアルバムという世界観を演出するのに一役買っています。
その統一感は無音さえも生かし、ゲーム最初から最後まで一続きの曲であるかのようです。
【システム・グラフィックについて】
システムはicより改善され環境によりプレイヤーの手を煩わせる事は無いと思います。基本的なものは揃っており、シーンのみ春希の声を消せるのも、男の喘ぎ声とかm__
……ごほんごほん、冬をイメージした美しいグラフィック。雪が舞い降る、上を見上げたシーン。手元のみ映しだしたCG。回想として一瞬挿入される背景画像。近年の動きまわる作品が多い中では見劣りするかもしれません。しかし、心理描写に趣を置くとこちらの方が印象に残ります。動きの必要なシーンはアニメーションで補い、必要部分のみ切り出す。多くを語らずプレイヤーの想像に委ねるやり方ですね。CG、立ち絵一つ一つが自己主張してきます。
【シナリオについて】
彼女たちを裏切ったのは僕達ではなく、むしろ自分自身の祈りだよ。どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかのゆがみを生み出すことになる。やがてそこから災厄が生じるのは当然の摂理だ。そんな当たり前の結末を裏切りだと言うなら、そもそも、願い事なんてすること自体が間違いなのさ。でも、愚かとは言わないよ。彼女たちの犠牲によって、人の歴史が紡がれてきたこともまた事実だし。*1
両者とも大切な友人と認め合う。善意での結びつきだからこそ、三角関係がもたらす結末がほろ苦い。丸戸先生の優しい世界がここにありました。思いだけでは誰も守れない、誰が一番愛しているかではなく、妥協しながらも三人が一番幸せになる方法を模索します。
ここまで”恋愛シミュレーションをしている”と実感させれくれるエロゲは最近では殆どありませんでした。ただ甘い部分のみ楽しむキャラゲ、他のジャンルを取り込んだもの。裾野は広がっていても根本である恋人との『関係』を深く追求する姿勢に強い衝撃を受けました。
視点、時間の経過によって見方が変わるのも見所の1つです。通常は春希視点ですが、雪菜視点、かずさ視点、三人称視点とめまぐるしく変化。それでいて三者、シーン1つ取っても捕らえ方が違い、ボタンの掛け違いが誤解を生む様子に何度悶えた事か。プレイヤーの忍耐力も試されますが、それを乗り越えた末のカタルシスは格別です。
学生時代の思い出がその都度変化するのも。学生時代、社会人。過去を振り返った時の受け方が変わるのは当たり前で、奇跡など起きない順当に手順を踏んだリアルさ、生な感情のぶつかり合いがこのWHITE ALBUM2の魅力でもあります。
あくまで普通を願いながらその実、周りの幸せを優先させ自身の希望を疎かにする主人公・春希の言動にも目が離せません。元々コントロールの効かない『好き』という感情を理屈で捉え抑えつける、衛宮士郎ばりに破綻した構造がもたらす結末は__ヘタレ主人公の新たな伝説がここに生まれました。*2
全ての歯車が噛み合って高水準で纏められた一作。複数ライターの弊害とも言えるシーン毎のちぐはぐさもなく、ショートストーリー1つ取ってもオチがきっちり付いて読み応えあり。丸戸先生の描いた世界観をここまで忠実に再現したleafには賞賛を送らざるを得ません。
icで散々延期したのも許せてしまう、その時の代表の言葉の意味ようやく分かりました。この作品大好きです。
*1:魔法少女まどか☆マギカ11話
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