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ボカロとヒトのあいだ このページをアンテナに追加 Twitter

20130831 マジカルミライレポ「もはやサイリウム振ってる場合じゃない」 このエントリーを含むブックマーク

8月30日に開催されたマジカルミライのマジライブ夜の部レポートです。


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総評は「もはやサイリウム振ってる場合じゃない」です。



僕の席は西スタンド9列目でした。最後方よりひとつ前の席です。でもはっきりいって当たりでした。遠いのでミクは豆粒サイズですけど、ステージ上方の3つのモニターと2つのサイドモニター、そしてライティングをはじめとする数々のステージ演出すべてがバッチシ見渡せるという、ある意味最上級のポジション。

横に拡張したディラッドボードの中をミクが右へ左へと走り回り、ジャンプしてマイク位置に戻るパフォーマンスなどなど、小さいながらもしっかりと目で追えました。その度に「うおーミクさん走った」「うおーミクさん飛んだ」「ミクリンレンの3人が広がって踊っとる」と脳内大絶叫で大興奮。

時々サイドのモニターで表情を確認し、上方に映し出されるムービーと歌声が一体となって迫ってくる演出に陶酔したり(特にLNGN)で、「これは二コ生やLVでは絶対に伝わらない感動だろうなあ」と広い広い横浜アリーナならではのライブステージを存分に堪能したのでした。

センターやアリーナ席では「まぶしくて見えねー」とか「ミクさん薄い」とか不平不満があったようですが、ライブは出たとこ勝負だから諦めろ、割り切って楽しめとしか言いようがないです。僕は最高でした、はい。


注目のバンドアレンジは、最初の「sweet devil」聴いて「あ、今回はこういう感じで攻めるのね」と抵抗なしに受け入れ完了。ヘヴィでラウドで少々インダストリアルも入って、2000年以降のロックのトレンド(KORNとかリンキンとかNINとかマンソンとかそんなん)をふまえたサウンドは正直いうと好んで聴く種類の音楽ではないのですが、今回のライブに限ってはおいしく頂けました。

とにかくアリーナライブに相応しいズシンとくる音圧は迫力満点で、特に最初の3曲はそのままソニマニのステージに持っていきたかったです。フェスに向くのはこういう圧倒感ですよ。これならパヒュームと勝負できたかもしれない。移動を遅らせることができたかも知れない。

なので、流行りのボカロ曲や軽めのJ-POPや縦ノリのアニソンを好んで聴いていそうな今回の客には案の定ウケがいまいちでしたね。なぜそれが分かるかというと、スタンドから見ていてサイリウムの振りが鈍かったから。そりゃ振れないよね。振りやすい前拍のアレンジではないもの。

でも何度も言うようにライブは出たこと勝負であり、次に何が来るか分からないからこそワクワクドキドキするんであって、デビュー6年目の初音ミクが、客の望むことをワンパターンに繰り返して満足させる演歌歌手やベンチャーズみたいになってはいかんでしょう。

だから客側もいい加減、直立不動の態勢でサイリウム振るのをやめて、もっと身体と精神をゆるくして、適当に楽しんだほうがいいと思います。他人と協調して一体感を得たいのも分かるけど、今回のバンドアレンジはそういうのに向かないものだから、そこは臨機応変に自分を変えていったほうが何かとお得です。「もはやサイリウム振ってる場合じゃない」と割り切って、未知の興奮と感動を貪欲に求めるべきです。


ところでライブ中に思わず苦笑してしまったのは、ハネる系の楽曲をバンドが演奏した時です。「なるほどロック畑の人がシンコペーションさせるとこうなるのか」と色々な意味で感心しました。この時ばかりはさすがに「THE 39sだったら」という幻影がちらついて仕方なかったです。懐古厨ですみません。

なぜ選曲されたのかは不明ですが、バンドに向き不向きがあるのは当然で、今回のバンドメンバーなら「恋は戦争」や「死にたがり」や「骸ATTACK」などが超絶マッチングでしょう。グラインドコアなアレンジでやわな客を暗黒世界に引きずり込んで欲しかったところです。なにより僕自身が無性に聴きたい。そして暴れたい。「もはやサイリウムを振ってる場合じゃない」。


閑話休題


初音ミクのライブは、シーン外側の一般音楽ファンに向けて積極的にアピールできる要素が増えてしかるべきだと個人的には考えています。タコ壺化は先細りするだけだし、同じ「お客様」を満足させ続けても未来がない。だから今回のライブがそのままロックフェスに出せるクオリティであったことが素直に嬉しいです。ボカロの文化や文脈を理解していない人が見ても、何かしらの感動を与えられるはずです。

これが大事な意味を持ってくるのは、いまや外側から新たなクリエイターを呼び込むことが、ボカロムーブメントの生命線になっているからです。マジカルミライがシーン内外のクリエイターやクリエイター予備軍の創作意欲を刺激したのならば、イベントは成功したといえるでしょう。クリプトンの伊藤社長も「創作のムーブメントに参加するための何かを持って帰ってもらえるような機会にしたい」とパンフレットに綴っています。

ただし複雑なのは現状、頼りの初音ミクがクリエイターの味方から徐々に離れて、完全に企業の商材になりつつあることです。個人が独力で作品を発信してムーブメントを起こすことは稀になり、大きく取り上げられるトピックは企業主導のものばかり。凝ったPV仕様のヒット曲もニコ動にアップする時点で商業コンピの収録が決まっていたりと「何だかなあ」な気持ちにさせられています。

クリエイトしてみるけど、かつてほど目立てない。成功パターンが出来上がっていて、上級者しか割り込んでいけない。ライブが新たなクリエイターの発奮材料になったとしても、先行者の壁は厚く、高い。

マジカルミライは華やかでしたが、源流たるボカロシーンの硬直化は進んでいくばかりで、融解させる方策は現在これといってありません。けっこう危機的な状況です。伊藤社長の開演前の挨拶は危機感の表明なんだと思います。でもその当のクリプトン自体がライセンス料で稼ぐ営利企業なのでやっかいです。


とりあえずの希望は9月にリリースされるV3初音ミクでしょう。今まで指をくわえていたMACユーザーを筆頭に、新たなクリエイターの乱入で、シーンにかつてのカオス的エネルギーが戻ってくるかも知れません。というかそうならないとヤバイです。「安心して満足したい人」より「不安定を面白がれる人」が戻ってこないとおそらくボカロシーンは見かけの華やかさの裏で、ゆっくりと終わりに向かって衰退していくのではないでしょうか。

だから色々な意味で「もはやサイリウム振ってる場合じゃない」のです。






最後に公演中、泣きっぱなしだったことを、ここに告白しておきます

広小路広小路 2013/08/31 16:13 初めまして。
いつも読ませて貰ってます。
横位置は判りませんが、私も昨日は西スタンドの9列目に居ました。
但し残念ながら私の位置からは丁度1台のプロジェクターの光軸とピッタリ合って、キャラたちがセンターに立つとハロッて映像が消えていました。
舞台上と両サイドのスクリーンでカバーしてくれる様な演出が合ったので救われましたが、二階席のバンドも見難くあのままでは、音だけを聞く大昔のレコード演奏会になってしまう所でした。
会場の規模からするとディラッドボード+背面投射、投射光量の限界でしょうか。
「初音鑑」も観ましたが、仰る通りの音楽的な中身の変革とともに、見せ方(演出)も変わって行く所なのでしょうか。

ほあんほあん 2013/08/31 17:09 はじめまして。
僕は英語DBに期待してます。海外経由でボカロシーンに異質なものが混入されて、何か爆発が起きれば良いなと。

>だから客側もいい加減、直立不動の態勢でサイリウム振るのをや
>めて、もっと身体と精神をゆるくして、適当に楽しんだほうがい
>いと思います。
ここ、すごく賛成です。Jazzyな曲でも頑張って手を振ってハイハイ言ってる周りに「そんな努力をしないで、適当に身体を振ってればいいのに」と現場で思ってました。もしかしたら、その適当に体を動かすというのが彼らはすごく苦手なのかもしれませんが。

cobachicancobachican 2013/09/01 00:16 >広小路さん、コメントあざす
僕の位置からは消えることはあんまりなかったですね。
でもどのみち小さすぎて見えないのですから、
「あそこにいるのだ」という雰囲気が味わえれば僕はOKなのでございます。


>ほあんさん コメントあざす
英語DB期待大っすね。
問題はアメリカンがちまちました打ち込み作業に耐えられるかどうかでしょうか。
BECKやスフィアン・スティーヴンスみたいな人が
ボカロPになってくれると盛り上がりそうです。

mokemoke 2013/09/01 02:42 はじめまして。
当日現地東側Dエリアで参加していました。
自分の隣の方が終始全身をくねらせながら
リズムにノリノリだったのは正しい作法だったのですね…。

終わった直後は「何が起こっていたのか把握できない不完全燃焼感」がくすぶっていたのですが、自宅でニコ動TSを視聴することに
よって安堵し可能性の幅が広がったことを理解しました。

cobachicancobachican 2013/09/01 10:22 mokeさん コメントあざす
ライブは自分の身体感覚に合わせて我儘に楽しむのが一番っす。

solidmilk39solidmilk39 2013/09/01 15:57 はじめまして。
僕はセンター44列目でしたがほとんど目視できなかったですね。
でも左右のスクリーン映像がかなり良く映っていたのと、
1万人以上の規模のライブじゃ当たり前なのでむしろそこまで
「初音ミク」が成長したことが嬉しくてすぐに気にならなくなりました。

ライブの楽しみ方はそれぞれ自由になんでしょうけどだからこそ
難しいところかと。色んな人がいますから。
経験的にはフェスとかだと全席自由席というか席がないので自然と
ステージまでの距離=個々人のテンション
ってなりますけど、今回のようなケースだとアリーナ席に希望の席が
外れた方とライブが初めての方や落ち着いて楽しみたい方などが
混ざってライブ慣れしている方以外はけっこう周りが気になってしまう
のではないかなと想像します。野外ステージと違って閉じた空間ですし。
まあ規模が大きくなれば当然というところで結局皆好きに楽しめって
ことなんでしょうけどもw

本題のほうですが僕はどちらかと言うと聞き手側のほうが一時的に
ヒロイズムとかスター性に傾いてるだけなのかなと考えてます。
ソニーをはじめとするコラボはむしろクリエイターにとっての成功例の
ひとつの指標としては捉えられないでしょうか?
ニコ動でいくら再生数を伸ばして目立ったとしてもその後それで食べて
行けなければ、そうしたクリエイターに憧れて創作を始めた人たちも
結局同じ道をたどることになり、結果それをみたクリエイターの卵たちは
これでは食べていけないと諦めてしまい、それこそ先細りかと。
ですから企業コラボは天井に穴を開けていく手段の一つかなと思います。

ただ初音ミクのミライが企業コラボっていうのはあくまで選択肢の1つ
でしかないと思うので、ミライブースがコラボだけだったのは
個人的にちょっと違うんじゃないの?って思います。
ミライという意味ではもっと子どもたちにフォーカスした内容にする
べきなんじゃないのと。

で聞き手側を具体的にどうすればという妙案はないのですが、ひとつ
アマチュアクリエイターの絶対数を増やすということが聞き手意識を
変えることに繋がらないかと期待しています。
一度でも作る側に立つと全く作品の見方が変わりますから。

最近はそういう風に考えるようなったので、マジカルミライの不満点で
言えば、先のミライブースの件とカルエリアの薄さですね。
イベントの目玉はライブなんでしょうけども、それはアウトプットで
あってミクにとって最も大切にしないといけない創作部分にフォーカス
したカルエリアこそ充実させないといけないと思うのです。
ま今後に期待ですね。

大変な長文駄文、失礼しました。

ひろ太たまおひろ太たまお 2013/09/01 15:58 はじめまして、自分も当日東側スタンドで参加させて頂きました。実はサイリュウム振るの苦手で、体で表現していました。(笑)本当、ラストナイトグットナイト最高でした。kzさん大好きです。時効?だから言うけど、当日kzさんのミクデータが消失。ミクデータ消失をテーマに歌詞を送りました。kzさんが読み取ってくれて、「ラストナイトグットナイトが誕生しました」。・・だったらいいな(笑)確認はしてませんので、勝手な想像です。そんな思い出もあって、ラストナイトグットナイトはヤバかったです。本当、ミクさん最高です。また、行きたいな。

cobachicancobachican 2013/09/02 14:32 >solidmilk39様 コメントあざす
企業コラボの件に関して言いたかったことはバランスっすね。企業発と個人発のバランスがイーブンくらいが調度いいかなと思っています。ただしマスメディアを通すことができる企業とブログやtwitterくらいしか情報の拡散手段がない個人とは発信力のケタが違いますので、価値あることをやっていても必然、埋もれてしまうのですよね。グーグルCM以前は、この発信力がイーブンくらいで、良いバランスだったなあと思っています。カルエリアの充実化は同意見です。あと金儲け大事です。ただしビジネスの世界ですから企業と組めば当然ながら「数字」が求められることになります。価値判断の基準を相手に握られてしまうので、クリエイター側にタフさと戦略がないと使い捨てられちゃうよね的な心配はあります。それでも覚悟があるなら「どうぞどうぞ金儲けしなはれ」です。批判や否定する意図も意思もまったくありません。僕も金儲け大好きです。



>>ひろ太たまお様 コメントあざす
低域轟音ギターサウンドを切り裂くようにハイトーンで熱唱するミクさんは、今年地球上で開催された全てのライブのベストアクト候補です。

ejiwarpejiwarp 2013/09/21 16:06 非常に充実な記事で見応え満点でありがたいです。
補足として佐々木渉氏のSIGMUSにおける講演をここで付けたい。

http://www.ustream.tv/recorded/38088131
音楽情報処理最前線!!! 招待講演2つづき

ここにおいて、企業コラボのバランスにおいて、クリプトンの数年間のバランス取り合いのプロセスの一端が見えます。非常に貴重だと自分が考えてます。