メタルギア ソリッド サブスタンス1 シャドー・モセス


ここのところメタルギアばっかりですが、まだまだ続きます。ゲーム「メタルギアリソッド」のノベライズ。作者は「メタルギアソリッド ピースウォーカー」の野島一人さん。前作に続き、シリーズのノベライズを手がけています。


まず今回も驚いたのが読みやすさ。えーっと、リーダビリティっていうのかもしれないけどそういう言い方すきじゃないわ。まあこういうのは個人差があると思うのですが、文章がすらすらと入ってくる感じ。私はゲームもやっているので文章からどういうイメージが立ち上がるかは当然知っているのですが、ゲームを知らない人でもそのイメージを構築しやすいものになっていると思うんですよね。というのも「メタルギアソリッド」で検索してもらうと分かるとおり、キャラクターはみんな顔のディテールがないのです。のっぺらぼう、というほどではないけど目鼻立ちはうっすらとそれらしい影があるだけで抽象的なんですよね。でもね、このノベライズも最初はこのお面ぽいイメージで読んでいたんですが、ふとした瞬間に見えるんです(笑)ちゃんとスネークさんの顔が。それはゲームをしていた時に私が「お面」の上に想像していた顔とは違うんだけど、確かにそのフィクションの中を全力で生き延びようと戦う、ソリッド・スネークの顔だった。それにスネークだけじゃなく、キャンベル大佐、メリル、オタコン、メイリンやナオミの仲間たち、敵の怪人たちもちゃんと顔があってゲームのように活き活きとそこで活躍しているのが読み取れるんですよね。


それと構成力の高さもすごい。あまり書くとネタバレなってしまうんだけど、ゲームの方ではびっくりするようなゲーム的な「トリック」が仕掛けられていて、それが人気の一つでもあるんですが。ちゃんと小説でも汲んでますよ。えーあれとかこれとかどうなるの?と思ったけど、ちゃんと盛り込んでいます。それがゲームファン向けのサービスだけでなく、きちんとストーリーの根幹に根ざしているんですよね。なんなんだろうこの人、SFとか書いてた人なのかなあ。あ、ちなみに野島さんは巳年だそうですが、実は私もなんだよね。まあ1回り違いそうだけど(笑)
それと後半かなり重要なシーンで、オリジナルのシナリオからの多少の改変もあるんですがこの展開も良かった。ちゃんとテーマとストーリーとが連携していて、そのシーンが他の既存のシナリオを壊すことなくうまくはまっている。とても細かいところまで設計の目が行き届いているんですよね。


ただ一つだけ欠点があるとすれば…もうちょっとギャグ要素があっても良かったかなあ。この頃のメタルギアってまだ「お遊び」がけっこう入っていて、全体的に「反戦反核」という重いテーマを扱っていながら、要所要所で息抜きのようにギャグがあってそのバランスがすごく好きだったのです。この小説はゲームの細かいところまで拾い上げてきっちりと一つの作品として仕上がっている素晴らしい作品なんだけど、なかなかに長いお話なので途中できっちりしすぎかなあ、という印象がありました。いやほんとね、脱獄シーンとかね、段ボールにおしっことかね、私は大好きだったんだよ…。


キャラクターは知ってるけどゲームはやったことないなあという人にも是非読んでほしいし、この読後感は普段から本を読んでいる人も満足できるものじゃないかなと思います。
さて次はMGS2のお話のようです。もう買ってあるんだけどついつい読みふけってしまうから危険なんだよね。あーでも読みたい!