柚子の葉食ふ芋虫幸福な蛾となれよ 最終回


柚子の葉食ふ芋虫幸福な蛾となれよ
「ほぼ日」の、映画「ノルウェーの森」についてのトークを読みまして、糸井さんの「当時、すべてが恋愛だった」とかいう発言が、心に響いたのであります。あぁ、そういえる人でありたかった。
と思い、「ほぼ日で〜ほぼ日で〜」と周囲に感想を漏らしていたら、「え!でもさ、すべてが恋愛だったでしょ?」と。いた! ここにも「すべてが恋愛」の人! 「結局なんでもさ、気に入られたいとかもてたいとか。ミュージシャンもよく『ギター始めたのはもてたかったから』って言ってるじゃない」と。
あぁ、まぁそうか。この間、NHKの番組で角田光代さんも、偏食を、好きな人の影響でなおした、って言ってた。
しかしやっぱり、私は「すべてが恋愛だった」とは、いえない、残念ながら。でも恋愛しちゃったときには恋愛がほぼ「すべて」になる(矛盾してる?)。結構辛い。それまでの自分を覆されるし、自分を変えようとして、それでも変えられない自分もあるし。理解できないながら受けとめたく思い、受けとめられなくもあるし。実際、恋愛してない方が、頭も心も軽く、本がいっぱい読める。
「すべてが恋愛だった」といえる人は、きっとそんな風にして、新しく、不確かで確かな自分を、構築した人、なんだろうと思う。だから、いいなぁ。私も「すべてが恋愛だった」といえる人になりたい。(すなみ・のりこ=出版社勤務)(完)