知識の継承 最終回

私が通っていた大学院には、メディアアートの展示会を、企画、作品制作、開催まですべて学生主体でするという授業がある。総合大学の授業としては、珍しいもので、年に夏・冬の2回開催される。本コラムのオーガナイザJ氏ともその授業で知り合った仲だ。この…

柚子の葉食ふ芋虫幸福な蛾となれよ 最終回

柚子の葉食ふ芋虫幸福な蛾となれよ 「ほぼ日」の、映画「ノルウェーの森」についてのトークを読みまして、糸井さんの「当時、すべてが恋愛だった」とかいう発言が、心に響いたのであります。あぁ、そういえる人でありたかった。 と思い、「ほぼ日で〜ほぼ日…

バッグを開けて 最終回

衣替えをしていたら、出所不明のバッグが出てきた。タイシルクのような布地に、ビーズで花の模様が刺繍してある。見覚えはあるのだが自分の趣味ではないし、昔買ったんだっったっけ?と思って、でも使わないから捨てようとゴミ袋に入れた。そのゴミ袋を玄関…

阿波の狸の話(5) 最終回

(シゲシホ=妖怪漫画家)(完)>>>▽参考文献笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

島の人間、島の私。 最終回

上京してもうすぐ10年になる。 私は小さな南の離島で生まれ、高校卒業までそこで過ごした。 高校時代の私にとって、島は早く離れたい場所だった。何もない小さな島で、何もない日常が、地縁と血縁とうわさ話だけの社会で終わっていく。高校時代の私は、島を…

天才ニート

器用貧乏という言葉がある。なんでも「大概のことを並かそれ以上でこなせる反面、突出して優れた分野も持ち合わせていない人、又はその状態」という事を指すらしい。(はてなキーワードより引用)あまり器用に様々な物事をこなす事ができない私にとっては、…

秋灯下中国御籤引き直す

秋灯下中国御籤引き直す 中華街の媽祖廟で御籤を引いた。面白いのは、籤を引いた後に、「○○番の籤でいいですか?」と神さまに尋ねること。尋ねた後、大きい柿の種みたいな木片を二つ投げて、裏と表が出たらOK。裏裏、表表と出てしまったら、籤を引き直す。日…

人は大事なことも忘れてしまうから

GK部発足から約2年が流れた。デートをしたり、晴れて付き合ったり、上手くいかなくて別れたり。4人から始まったGK活動も賛同者が次々と表れ、声をかければいくらでもGK参加者は集めることができる。2010年10月現在、彼氏がいて恋愛を楽しんでいる人は…

阿波の狸の話(4)

(シゲシホ=妖怪漫画家)>>>▽参考文献笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

謝罪の理由

父方の祖母が今年94歳になる。 少し体調が悪そうだが、それでも元気に過ごしている。そんな祖母が90歳を越えたあたりから、私を見ると「ごめんね」と謝罪の言葉をかけるようになった。その謝罪の理由は、私に父親がいないのは祖母自身のせいだというのである…

人生の転機

今、人生において大きな転機を迎えつつある。一人暮らしを始めようというのだ。既に一人暮らしをしている人、経験した人にはハナで笑われるかもしれないが、生まれてこの方(25年間)実家住まいの自分には大きな転機である。そもそも、なぜ今一人暮らしを始…

行く秋や休日名残る白風船

行く秋や休日名残る白風船 休日出勤した。思いの外帰宅が遅くなり、空腹なのに、鞄にガム以外食べ物がないという夜半。キヨスクも閉まっていて、仕方なしに、自販機でコーラを買う。人の少ない車内に、休日の名残の白い風船が、ゆらゆら、風船の下の座席に、…

What is your hobby?

どうも〜なんて入っていって、席について何となく目があった人とにっこり。飲み物を頼んですぐ自己紹介もフライングだから、店の場所が分からなかったとか仕事は近くかなどと雑談し、ハイお待たせしました〜と飲み物が来たので乾杯、順々に自己紹介、そして…

阿波の狸の話(4)

(シゲシホ=妖怪漫画家)>>>▽参考文献笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

「書くこと」の快楽

スポーツも音楽も勉強も不得意で、そのうえ人見知りで友だちもほとんどいなかった小学生の私のとって、一番好きだったことが担任の先生との日記だった。どんなことにも丁寧に赤ペンでコメントをもらえることがうれしくて、私は日々、今日はなにを書こうかと…

海の上に立つということ

最近サーフィンを始めた。前から始めたいと思っていたが、ついに今年デビュー。6月に初めて行き、それから5回くらい行った。これまで本コラムにおいて、割と硬い内容ばかり扱っているような気がするが、今回は趣向を変えてサーフィンの魅力について考えて…

底紅や加賀屋敷今ホテル街

底紅や加賀屋敷今ホテル街 極楽鳥花の株分けの話題から「今年の春は寒かった」という話になった。そういえば! 夏が暑すぎて長すぎて、忘れていた。 作務衣の似合う佐藤さんは以前、「年が押詰まってきましたね。一年あっという間ですね」との挨拶に、「年の…

ポエム:GK部長のうた

私はGKに慣れてきています 一週間の疲れを背負った金曜日 見ず知らずの男性と酒を飲んで 手に入れたのは 次回のGK候補地と 社交辞令のメールだけ 私はGKに慣れてきています 聞こえはいいが 「肉食女子」なんて言葉 言われるたびに風が吹きます 相手を…

阿波の狸の話(3)

(シゲシホ=妖怪漫画家)>>>▽参考文献笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

上海

中国・上海へ行ってきた。 今回で4度目となる上海訪問の目的はもちろん上海世博(上海万博)なのだったのだが、最後に行った2年前とは大きくその姿を変えていた。外資系企業の看板が立ち並び、以前よりも「都市」として整備された街並みはひどく人工的であ…

パラダイムシフト

SEEDAというアーティストがいる。メジャーなメディアへの露出は無いので、あまり知られていないが、私が好きなアーティストだ。そんな彼が最新のインタビューでこんなことを言っていた。僕、地球が良くなってほしいんですよ。子供たちに未来があってほしい。…

胸中の疑問符鴉になりしこと

ボルネオに行ってから、トイレのことが気になるようになった。ボルネオのトイレ事情は悪くはない。大きな水桶から水を掬って便器に流す。水圧で便器の奥の弁を開き流す仕組みになっている。トイレットペーパーは、日本から用意していった。芯の部分に紐を通…

とろとろトロミー

久しぶりにGKに行ってきた。こじゃれたレストランでの、女子3人×男子3人飲み放題付き。やはり数を重ねてみると、このシンプルな形のGKが一番やり易い。 かつて、私たちは「つまらないGKに実りなし!」の旗のもと、色々なタイプのGKを実践してきた…

阿波の狸の話(2)

(シゲシホ=妖怪漫画家)▽参考文献笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

キリギリスの生き方

夏の間に必死に冬の為に食料を蓄えようと働くアリ。働かず、自らの好きな音楽だけに興じ、遊んでいたキリギリス。やがて冬が到来し、食料を蓄えたアリとは対照的に食べるものがないキリギリス。キリギリスはアリに食料を分けてもらうように頼み、アリはキリ…

ミテイルセカイヲシンジルナ#2

朝の通勤時、日本経済新聞(日経)を読んでいるビジネスマンが多いと感じる。これは、日経が一定の評価と信頼を受け、購読されているという証だ。しかし、ここには非常に単純な問題がある。日経がある事実を歪めて、もしくは隠して記載するという事があった…

コインロッカー開けて孤独を持ち帰る

女性にしか出来ないこと。女性専用車輌に乗ることもその一つ。私は、痴漢などの嫌な目にあったことがないので、切実感はなく、小ずるく利用している。他の車輌よりもすいているときには乗る、とか。 そこは、やっぱり何か奇妙な空間だと思う。女性しかいない…

さようなら私の本

部屋の荷物を整理する必要があって、本を売った。 ねかせること幾星霜、項を開くことのなさそうな見切り本を数十冊。大した金額にならなかった。署名をして店を出ようしたら、レジ台の本の山の隙間から、売り飛ばした本の表紙が見えた。あれを買ったのは、人…

阿波の狸の話(1)

(シゲシホ=妖怪漫画家)▽参考文献 笠井新也『阿波の狸の話』中央公論新社、2009年。

「セフレ」

来年アメリカで発表予定の論文の筆がなかなか進まない。あと数週間で提出しなければならないのに、気持ちだけが焦っている。 論文のテーマは快楽、とくに大衆文化と女性の快楽に関するものなのだが、最近ある女性の方と性的な快楽について話す機会があった。…