あたまのなか研究室

ピクルス(2代目)とぶらいあん(初代)の研究室です。

地域単館系映画館の無料巡回上映『愛のあしあと』

 第七藝術劇場で『愛のあしあと』というフランス映画が無料上映(9、16日)されるということで、今夜(9日)観てきました。

 別に無料でなくても面白そうな映画なので会員料金ぐらいは払ってもいいと思っていたのですが、計2回しか上映がないということ、そして、初日の9日は小山薫堂安西水丸両氏によるトークショーがあるということでいそいそと出かけました。
 また、イラストレーターで小説家(珍しくこの寡読家の私が何冊か著書を読んでいる)でもある「ワタナベノボル」でおなじみの安西水丸さんを一度みてみたかったということもあります。

 この企画はそもそもWOWOWの番組「W座への招待状」という映画番組のナビゲーターのお二方が、近年状況が厳しい単館系の映画館を盛り上げようということで「旅するW座」と銘打ち、海外の名作映画を無料で全国の単館系映画館をまわっていく(毎週金曜日らしいです)とのこと。
 その(たぶん)第一回目の作品が『愛のあしあと』であり、その最初の上映館が第七藝術劇場だそうです。

 映画そのものは、ちょっと変わったテイストではありますが、1964年から2007年までのフランス人の(母そして娘の)愛を描いた面白い作品でした。ミュージカル要素はありますが、歌ってはいるけど踊ってはないなのでミュージカルとは言えないような気がします。主演にカトリーヌ・ドヌーブと娘のキアラ・マストロヤンニが母娘役で出ています。あと『引き裂かれた女』のリュヴィディーヌ・サヴィエやミロス・フォアマンが重要な役どころで出演していました。

 この映画、母と娘のそれぞれの愛について描いていて、漫然と観ているとちょっとわかりにくいところもあるのですが、原題が『最愛の人』だと知って、「ああ、そういうことか」と気づきました。母も娘も「最愛の人」とはうまくいかない(逆に母の二番目の夫や娘の元カレも「最愛の人」である母と娘にとってはそうではない)という話なんですね。

 この邦題については、いつも番組でふたりが「洋画の邦題が良くない!」と文句ばかり言うので「それならこの邦題をつけてみて下さい」と言われ、小山氏が必死になってつけたというもの。確かに悪くはないのですが、原題のニュアンスが崩れたのは残念なところ。あと、この邦題は何だか最近の日本映画のタイトルっぽい感じがします。(最初タイトルをみて邦画だと思っていました)

 映画は18:50−21:10に、おそらく「W座への招待状」と同じスタイルの導入と解説を入れた映像もあわせて上映。(本編は美しいフィルム上映です)
 上映終了後、10分ほど休憩のちにトークショーが始まる予定でしたが、ゲストのお二方がなかなか到着せず、結局10分近く遅れてはじまりました。

 安西水丸氏と小山薫堂が登場したのはいいのですが、小山さんが最初に言い訳。「これ(解説映像)を撮ったのが映画を観た一ヶ月後だったので、映画の内容を全然覚えてないんですよ。だからものすごくうすい話しかしていないでしょう」
 このトークはそれより更に時間が経過しているので、解説映像以上に映画の話は深まらず、なんだかグダグダな感じに。

 結局、「旅するW座」の趣旨を説明するのがメインのような感じになりました。あと単館系の状況について松村支配人がフォロー説明するような形に。トータル20分ほどで終了。

 地域の単館系を盛り上げて行こうという趣旨は多いに賛同できますし、劇場内には初めてこの劇場に来た人も多かったようなので、新しい層の掘り起こしの一助にはなるだろうと思うし、今後も期待しています。

 ただ、今回盛況ではありましたが、名作新作映画(昨年のカンヌ映画祭クロージング上映作品)の無料上映(さらにトークショー付き)でも「満席にはならなかった」というのは、今のこの厳しい現実を示しているように思えてなりません。

 これからも厳しい現状は続くという認識を持ちながらも、希望は持っていたい。今はそう考えています。


 <お知らせ>

 11月16日(金)の夜も無料上映があります(18:20ー20:45)ので、トークはありませんが、面白い作品なので、興味のある方、フランス映画が好きな方、映画が好きでお金はないが時間のある方に、ぜひおすすめ致します。

 第七藝術劇場公式サイト『愛のあしあと』
 http://www.nanagei.com/movie/data/671.html


 (2012年11月9日)