FUTBOL MUNDIAL #716●特集3:シェルボーン

●特集3:シェルボーン
失敗から学び、再起を誓うシェルボーン。

今年8月アイルランド王者のシェルボーン(Shelbourne F.C.)でオーナー兼チーフ・エグゼクティブだったオリー・バーン(Ollie Byrne)が亡くなりました


昨年11月には13度目の優勝を飾ったシェルボーンですがそこから急降下
選手への賃金が払えずにトップリーグから降格
今シーズンからは2部相当のカテゴリーで戦っています



andrew byrne
「昨シーズンは選手への賃金だけで4万ユーロ近かったんです。今はその20%以下ですが予算内に収めなければいけません。ホームゲームの入場者数は毎試合900人から1000人ですから他の収入源を探す必要があります。でもお金をかければ良い訳ではないんです。そんな事を続けたら2,3年でまた同じ状況になってしまいます。1895年にスタートしたクラブですから、100年先も存続して欲しいんですよ」



オリー・バーンの甥にあたるアンドリューがクラブの事務局長を務めています
彼の仕事はクラブの財政面を正常な状態に戻す事



andrew byrne
「ここ数年はチャンピオンズリーグでグループリーグに進もうと大きな賭けをしていて、実際デポルティーボ戦では残り30分まで狙い通りでした。でも今はその挑戦に負けたらクラブが消滅の恐れがあると気づいたんです。資金援助は必要ですがアイルランドリーグはイングランドスコットランドとは違います。だからリスクを覚悟でクラブの為に毎年数百万ユーロを喜んで出してくれる人を探さなければいけません」



バーンの指摘通り熱狂的なサポーター以外はマンチェスター・ユナイテッドやリヴァプ−ル、セルティックの応援に出かけます
入場料収入は微々たるもので、シェルボーンの様な名門でも時には苦しい状況に陥ります


チームに残った優勝メンバーは二人
その一人がジム・クロフォードです



jim crawford
「正直これまではそれなりの金額を貰っていましたから、堅実にやっていた選手はちゃんとセーフティネットを張っていたんです。でもそれをしていなかった選手の場合、今は大変だと言っていましたね。ローンを組んだりもしているらしくって、色々と苦労しているみたいですよ。だけど僕らは作シーズン問題を抱えながらも、チーム一丸となってリーグ制覇を達成しました。それ自体は立派な事だと思うんです」



降格に伴い3月に始まった新シーズンからはクロフォードを含め全員がプロでは無くなりました
選手やスタッフは昼間働き、夕方練習する日々を送っています
監督は2度めの就任となるデルモット・キーリー
2000年の2冠達成を含め、2度のリーグ優勝を遂げた前回とは勝手が違います



dermot keely
「以前とは違って悲観的なムードでしたよ。移籍マーケットが閉まる3日前にようやくリーグへの参加を認められたので、その3日間で20人の選手を集めたんです。サッカー界の色々な人が救いの手を差し伸べてくれましたし、友達とは思っていなかった人からも助けてもらいました。でも現実的には他が取らなかった選手と契約するしかなかったので、移籍マーケットが再開するまで持ち応えられなくてねぇ。若いメンバ−は才能があって必死で頑張ってくれているんですが、経験不足で一流とはいえませんからねぇ」



昼間はダブリンの学校で数学の教師をしているキーリー
選手だった70年代から続けている仕事です
クラブの財政難に直面するのもはじめてではありません
ダブリン・シティ(Dublin City F.C.)を率いていた昨年7月にはクラブの消滅を経験
それでも現場への復帰を喜んでいて、パートタイムなのも好都合だと言います



dermot keely
「フルタイムの時はやる事が無くて退屈だったんです。午前中の練習はコーチが仕切ってくれて、私はオフィスで電話をかけたり、新聞を読んだりしていれば午後は暇ですからねぇ。そんな生活を持て余していました。選手は練習の後、家に帰って休めるのはありがたいんでしょうが、私は事務ばかりでねぇ。だから教師をしながらの方が良いんです。30年以上教えていますが段々難しくはなっています。その原因が生徒にあるのか、私の年のせいなのかは分かりません。でも楽しくやっていますよ」



開幕から16試合で僅か2勝と出遅れたシェルボーン
しかしその後は持ち直し、13試合で8勝をあげて全10チーム中5位までは順位を上げてきました
しかし降格によってチャンピオンズリーグ予選への出場権も失い、欲しかった収入は得られず


1シーズンでのトップリーグ復帰も絶望的です
序盤の躓きが響きトップのコーブ・ランブラーズ(Cobh Ramblers F.C.)とは20ポイント差
残りは7試合しかありません


ドロヘダ・ユナイテッド(Drogheda United F.C.)からローン移籍中のマークリーチ(Mark Leech)が2ゴールをあげました
そのドロヘダはトップリーグでの初優勝が近づいていますが、シェルボーンの復活には時間が必要です



dermot keely
トップリーグに戻るのはエベレストに登る位大変ですよ。一番下からスタートしてロープや装備も持たないまま半分まで登ってきました。後は這い上がっていくだけです。再開した移籍マーケットで補強をして、ある程度戦力は整いましたがまだ十分ではありません。頂上まで達するのは来年でしょうねぇ。それが私の目標ですし、クラブの全員が同じ所を目指しています」



逆境の中彼らは懸命に戦っています
サポーターとしてはクラブが存続しているだけでも幸せです





シェルボーン
http://www.shelbournefc.ie/
http://en.wikipedia.org/wiki/Shelbourne_F.C.




Dermot Keely
http://en.wikipedia.org/wiki/Dermot_Keely



Jim Crawford
http://en.wikipedia.org/wiki/Jim_Crawford_%28footballer%29



Mark Leech
http://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Leech




Dublin City F.C.
http://en.wikipedia.org/wiki/Dublin_City_F.C.


Cobh Ramblers F.C.
http://www.cobhramblers.com/
http://en.wikipedia.org/wiki/Cobh_Ramblers_F.C.


Drogheda United F.C.
http://www.droghedaunited.ie/
http://en.wikipedia.org/wiki/Drogheda_United_F.C.




Soccer says goodbye to Ollie Byrne
http://www.independent.ie/national-news/soccer-says-goodbye-to-ollie-byrne-1068298.html


Shelbourne Chief Executive Ollie Byrne dies
http://www.independent.ie/breaking-news/sport/soccer/shelbourne-chief-executive-ollie-byrne-dies-1066470.html





FUTBOL MUNDIAL #593●特集3:ニック・リーソン
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050530



FUTBOL MUNDIAL #603●特集4:シェルボーン対グレントラン
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20050806



FUTBOL MUNDIAL #655●特集4:シャムロック・ローヴァーズ
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20060805



FUTBOL MUNDIAL #657●特集2:ジェイソン・バーン
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20060820



FUTBOL MUNDIAL #660●特集3:デリー・シティ
http://d.hatena.ne.jp/condeuma/20060906





Jスポーツ
http://www.jsports.co.jp/program/info/20736.html