街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

Bonin Islands;小笠原の森

父島の山肌


移動だけで25時間という船旅は初めてだ。小笠原に行く人はみんなこれに乗っているわけだからすごいと思う。一日のほとんどを寝て過ごし、気が向けば本を読んだり、デッキに出て海を眺めたり・・・そんな船上生活を送りながら、よほどこだわりを持っている人か、よほど雑踏を避けたい人じゃないと来ない場所だと実感した。

今回の訪問では海と森の両方を見る。もちろん、東洋のガラパゴスと呼ばれる小笠原だから、生き物好きなら固有種にこだわって見るわけだ。沖縄との違いにも関心を持っていたが、船に近づいてきた父島の山肌に、移入種(外来種)のモクマオウとギンネムが生い茂っているのが見えて、なんだ沖縄と同じじゃん、と思った。上陸後にまず飛び込んで来る町の木々も沖縄とそう違いはない。ハイビスカス、ブーゲンビレア、クロトン、モモタマナにガジュマル、ヤシ類。その場で気付いた違いといえば、ナンヨウスギがほとんど見あたらないことぐらいか。

山に入ると、次々と固有種が現れる。とはいっても、本州や沖縄にその近縁種があるものが大半で、たまたま小笠原に渡った個体が、独自の進化をして少し形態が変わったという程度だ。それよりも現地に来て実感したのは、同じ種であっても、島内の生育環境などによって個体差が大きいこと。葉が丸かったり、細かったり、毛が多かったり、少なかったり。例えばアカテツやテンノウメの類などが象徴的だが、ムニンネズミモチだって個体差が多いように感じた。ただ、沖縄の森よりはずっと種数が少ないので、ある程度予習しておけば生き物の名前は比較的分かりやすい。

冬の亜熱帯を訪れるのは初めてだったから、それだけでも新鮮である。冬は那覇より暖かいというここ小笠原では、12月とはいえ晴れれば半袖でOK、夜はコオロギのような虫が茂みで鳴き、窓を開ければ気持ち涼しすぎる風が入る。私はもともと南の島に住みたい願望があったが、亜熱帯の冬を感じて、やっぱり南国はいいなぁと思った。

【今日見た注目種】
テリハボク、ハスノハギリ、イソフジベンガルボダイジュ、インドボダイジュ、アカテツ、シロテツ、コブガシ、キンショクダモ、ムニンヒメツバキ、テリハハマボウ、シマモクセイ、モクタチバナ、ハウチワノキ、タチテンノウメ、イワザンショウ、シマムロ、アカギ、キバンジロウ、タコノキ、オガサワラビロウ、ノヤシ、マルハチ(シダ)、メヘゴ(シダ)、セイロンベンケイソウ(草)、オオバナセンダングサ(草)、ホナガソウ(草)、オガサワラノスリ(鳥)、ハシナガウグイス(鳥)、ヤギ(獣)