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街や森で思うことがある。心に残ることがある。訴えたいことがある。
日本各地の樹木や自然、風景を見て回りつつ、この記録をつけている。

2016-12-13

[]野生の観葉植物;クワズイモ

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クワズイモの葉をかつぐ息子。切り口の汁に触れるとかぶれるので注意


 僕が初めて沖縄へ訪れた約20年前のこと。郊外の細い道に入ると、雨傘になりそうな巨大な葉っぱが道端にわんさか茂っているではありませんか。艶やかでサトイモに似たハート形の葉っぱ。「これって観葉植物では!? 誰かが植えたの!?」と驚いたものです。

 図鑑で調べると、沖縄に広く自生するクワズイモ(食わず芋)と分かりました。サトイモ科の多年草で、成長が早いことから出世芋とも呼ばれ、就職・開店祝いなどに贈られる観葉植物が、ここ沖縄では雑草の如くヤブに生えているのです。

 考えてみると、沖縄にはいわゆる観葉植物が野外でたくさん育っています。森の中では、ゲッキツ、ガジュマル、シマトネリコモンステラに似たハブカズラ、野生化したポトス(オウゴンカズラ)などがあちこちに茂り、庭や公園では、カポック、パキラ、ベンジャミン、ゴムノキ、アレカヤシなどが大きく育っています。一般に観葉植物は、一年中緑色の葉をつけ、個性的な葉の外観が求められるという特性上、亜熱帯や熱帯性植物が大半なので、当然といえば当然ですが、鉢植えに見慣れた人間からすると、同じ植物が野外で元気に育っている沖縄の光景は驚きの連続です。


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ヤブで巨大化したポトス。葉は長さ60cmにも達する


 クワズイモは、四国・九州の南部から南西諸島、中国南部、東南アジアやインドまで分布し、沖縄では都市近郊から山奥まで、やや湿った林内や林縁によく群生しています。草丈は1〜2m、葉は葉身、葉柄とも大きなものでは1m以上になり、大人でもすっぽり雨宿りができるほどです。

 太い根茎がありますが、名の通り食べられない有毒植物で、汁が肌につくとかぶれるため、沖縄ではハゼノキ(ウルシ科)と同様に触ってはいけない危険な植物として、子どもの頃から教えられるそうです。

 これを知らなかった私は、沖縄に移住した当初、2歳の息子にクワズイモの葉を持たせて遊ばせてしまいました。すると数分後、息子が「手がかゆい」と言い出し、慌てて手を洗った苦い経験があります。クワズイモを含むサトイモ科の植物は、シュウ酸カルシウムを含むものが多く、その目に見えない針状の結晶が肌に刺さり、痛みやかゆみを生じるといいます。同じサトイモ科のコンニャクも、しっかりアク抜きをしないと口の中がピリピリするのはこのためです。


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クワズイモの花


 一方、尾瀬など北国の水辺で美しい白花をつけるミズバショウも同じサトイモ科です。クワズイモの花や実もミズバショウに似ており、5月前後に茎の頂部から蕾を出し、ミズバショウよりふた回りほど小さな白花をひっそり咲かせ、夏にオレンジ色の実をつけます。しかし、いかんせん葉が巨大で株元を隠してしまうため、花も実もあまり目につかないのは残念です。


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クワズイモの果実


 ところでこのクワズイモ、沖縄の民家でも観葉植物として利用されているかというと、ホテルや観光地の植栽以外ではまだ見た記憶がありません。身近に多い見慣れた雑草ですから、ざわざわ家の中や庭に植える人も少ないのでしょう。

 とはいえ、島ナイチャー(内地からの移住者)にとっては、やはりクワズイモは亜熱帯を象徴するワクワクする植物。我が家では、近所のゴミ捨て場に生えていたクワズイモを一株頂戴し、リビングで鉢植えにして育てています。最低気温5度以上で育てることが可能で、株分けで容易に増やすことができるようなので、お宅にも一株いかがでしょう。



※この文章は、いけばな小原流の会員誌『挿花』で2015年1〜12月に掲載した連載記事「亜熱帯の森から」を一部修正したものです。