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街森研究所 RSSフィード

街や森で思うことがある。心に残ることがある。訴えたいことがある。
日本各地の樹木や自然、風景を見て回りつつ、この記録をつけている。

2011-11-18 連載エッセイ9・最終回

[][] 私は潰瘍性大腸炎

 4年前に青森を旅した時、旅館に着くや否やトイレに駆け込んだ。昼食の貝が当たったのか? 帰宅後も下痢は断続的に続き、お腹はギュルギュル鳴り続け、ひどい日は10回以上もトイレに駆け込んだ。やがて、排便時にドロッとした半透明の粘液が出るようになり、血も混じり始めた。食中毒に痔を併発したのか?

 10ヶ月後、お酒を飲んだ翌日に高熱が出て、ようやく病院に行った。内視鏡検査の結果は、潰瘍(かいよう)性大腸炎。若者を中心に急増中の難病で、原因は不明だがストレスや食の欧米化が一因ともいわれ、悪化すると大腸ガンを招く。看護士さんに「一生付き合う病気ですよ」と言われ、目の前が暗くなった。

 以降私は、野菜と魚中心で低脂肪の食生活を心掛けている。考えてみれば、幼少期から胃腸が弱く、牛乳や油物でお腹を下すのは日常茶飯事だったが、それでも「好きだから」と、肉料理やジャンクフード、洋菓子などを食べ続けたのがたたったのだろう。

 最近は、食生活だけでは症状が改善しないことに気づき、パソコン漬けの過労を避け、早寝早起きを心掛けると、調子はよくなった。身の回りで獲れる自然な食物を食べ、太陽のリズムで暮らす。私は病気になることで、自然と共に生きることの大切さに気づかされ、むしろ健康になった気さえしている。


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※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。

宇宙太宇宙太 2012/02/18 23:15 初めましてコメントします。

「自休自足のバックナンバー」を読んでいたらたまたま林さんの記事に出くわしました。
樹皮の図鑑があるなんて!と、建築関係の仕事をしているのでとても助かります。
是非購入したいと思っています。

ところで表題にある潰瘍性大腸炎のことですが、私も一昨年この病気を発症しまして現在治療をしています。
年齢も林さんと同年生まれ、食生活やパソコンを使った仕事などの共通点もあり、親近感が湧いてきました。

私は現在広島市にある、とある病院から漢方薬を送って頂いて治療をしています。
(結構有名な病院なので知ってらっしゃるかも…。)
2年ほどの治療でこの病気を克服できるようです。
今では食事制限もなく楽しい食生活を送っています。

ただ私もこの病気になったことで、食生活や仕事の仕方など様々面でよい変化がおきてきました。
私も自然と共に生きる大切さをヒシヒシと感じています。

conokixconokix 2012/02/19 12:37 宇宙太さん、コメントありがとうございます。「自休自足」で知ってくれて嬉しいです。樹皮図鑑は日本初の試みでしたが、お陰様でかなりご好評いただいています。
さて、宇宙太さんも同い年で潰瘍性大腸炎なのですね! しかも広島漢方を取り入れているとはいいですね。僕はかなりの軽症ですが、悪化する前に広島漢方に切り替えようと思ったまま、放置していたところです。これを機に切り替えたいです。お互い、この病気を前向きに活かしたいですね。

2011-11-16 連載エッセイ8

[][] 原発タブーの崩壊

 福島原発の事故以来、日本の報道が大きく変わったことがある。「原発タブー」の崩壊だ。

 2年前、私が取材していた上関原発問題を、ある週刊誌の編集部に持ち込んだ時の話。若い担当編集者は「ぜひ記事にしましょう!」と意気込んでくれたが、数日後、「ボツになりました。上司から出版社全体の広告主に悪影響があると言われました」と力なく電話してきた。これが事故前の現実で、全国規模のテレビや新聞、雑誌ほど、原発に批判的な報道はタブーだった。日本最大級の企業である電力会社(と原発関連産業)は、マスコミ最大のスポンサーでもあるからだ。

 一方で国は、原発を推進する活動には莫大な予算をつけ、批判する動きは厳しく監視してきた。「原発は絶対安全」「原発は環境にいい」と、広報や教育にも力を注ぎ、世論さえ操作しようとしてきた。しかし、その原発は爆発し、国は放射能汚染の実態を隠し続け、マスコミも原発を懐疑的に報道せざるを得なくなった。

 「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」とは、歴史学者アクトンの名言だ。残念ながら、現代の先進国家や巨大マスコミも例外ではない。インターネットは多くの真実が得られるメディアだが、全くのウソもある。今後の放射線被害を最小限にするためにも、私たちの情報を選ぶ力が問われている。


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事故前の福島第一原発(2009年8月 筆者撮影)

※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。

tssune3tssune3 2011/11/17 21:04 言われるとおりです。(思いっきり善意に解釈し)NHKは人々を不安にしないように情報操作したのでしょうが、そのほとんどがウソでした。政府の下にあるNHKですから、どうしようもありませんが。情報を正しく判断する力量が問われる時代に入りました。同時に、正論を言った知人は上からの不当な扱いで、自ら退職を選びました。コマく、当たり障りがないように生きる人間が多い世の中。太っ腹で「確かにそんな考えもあるな」ですむべきでしたが、違いました。タブーが崩壊しかけていることは事実です。しかし、まだまだ「崩壊しかけている」段階です。本当に大切なことを今こそ考え実践していかないと、このピンチをチャンスに変えていかないと、……とんでもない国になってしまうと恐れる私です。

conokixconokix 2011/11/18 22:02 tssune3さんがおっしゃる通りと思います。「崩壊しかけ」ですね。国もマスコミも、真実を伝えることよりパニック回避を最優先しましたが、その狙いは成功したと言えるでしょう。NHKはスポンサーのない貴重なメディアですが、国から許可を得て行う事業である以上、一定の規制が働きますね。業界や政界にもまだまだ根強いタブーが存在すると思いますが、世間や個人レベルでは真実にきづき始めている人が多勢と感じます。辞職されたお知り合いの新聞記事、見ています。すごいなあと思いました。正論が通らない不当な世の中を変えるために、私たちは何ができるのか考えさせられます。

2011-11-11 連載エッセイ7

[][] 原発と私

 拙宅は、山口県の上関原子力発電所予定地から13kmの距離にある。窓からは、美しい上関町の島々が見渡せる。福島原発でいえば、強制避難区域の円の中だ。

 私が5歳の時、上関原発計画は浮上した。子どもながら直感的に不安を感じていたが、大学進学で関東に移り住んでからは、原発のニュースは全く耳に入らなくなった。30歳になり、山口県へのUターンを考え始めた08年、ふと思い出した。「上関はどうなった? 原発ができるならUターンしたくない」

 実際に予定地を訪れると、既に準備工事が進んでいた。原発問題の歴史を綴った本(※1※2)を読み、衝撃が走った。大都会の電力を賄うために、地方に深刻な問題が負わされている。この問題を学び、伝えねば。私は一ジャーナリストとしてこの思いを記事に書き、あるアウトドア雑誌の読者投票では1位にも選ばれた。全国の原発を取材して回り、その実態を各地で講演もした。けれども、難解な原発のリスクを広く伝えるのは難しく、様々な利害も絡む原発問題に、私は神経をすり減らした。

 原発取材から身を引いていた3月11日、福島原発事故は起き、リスクは現実となった。3カ月後、私は出張で東京を訪れたのだが、久しぶりに連絡を取った関東の知人には「上関原発が止まってよかったですね」と、ことごとく逆に励まされた。今まで原発問題にほとんど関心のなかった彼らの言葉に、私は驚いた。日本は変わっている。


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平生風力発電所より原発計画のある上関町長島方面を眺める。

※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。

2011-10-23 連載エッセイ5

[][] クマは絶滅するのか

 薄暗い山奥の森を歩くのは、あるリスクが伴う。クマ(ツキノワグマ)との遭遇だ。彼らが人を攻撃するのは、彼らも人を恐れている時で、本来は人を襲う動物ではない。鈴やラジオをつけ常に音を発することで、クマの方から遭遇を避けてくれる。

 生態系の頂点に立つクマは、他の獣に比べ個体数はずっと少ない。生き物好きの私からすれば、出会えるとむしろラッキーだ。私は過去に2度、野生のクマに遭遇しているが、いずれも安全な距離があった(写真=尾瀬ヶ原で筆者撮影)。怖いのは至近距離での遭遇。クマから視線をそらさず、ゆっくり後ずさりすることが大切で、決して背中を見せ走ってはいけないといわれる。

 そのツキノワグマが絶滅の危機にある。日本には1万2千頭が棲むともいわれるが、近年は人里での出没が増え、06年に4千頭余り、10年にも3千頭が殺処分された。既に絶滅したとされる九州、残り数十頭といわれる四国に続き、このままでは本州での地域的な絶滅も近い。農林業が廃れ、人が山に入らなくなったことで、クマやイノシシが頻繁に人里に下りるようになったといわれる。

 かつて日本人は、家畜の害獣オオカミを駆除し続け絶滅させたが、その後シカが増え、シカが畑の作物や貴重植物まで食べ荒らすようになった。クマ問題もダム問題も原発問題も同じ。目の前のリスクを取り除く対処療法だけでは、問題は解決しない。


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※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。

fumfumfumfum 2011/10/25 18:57 ブータンの子供たちや生活の写真展を「ぎゃらりーぜん」で見ました。自然のなかの一部分としての人のあり方に考えさせられました。 日本ももっとゆっくりと進めば良かったのかと・・でもそれはそれでまた・・・・
ブータンの人たちの(特に子供たちの)笑顔は青空と一体化していました。

conokixconokix 2011/10/25 21:09 日本は何を最優先に文明を発達させてきたのか、これからは何を優先すべきなのか、日本だけでなく地球全体で考え直す時期に来ていますね。

2011-10-15 連載エッセイ4

[][] 木材自給率26%

 日本の食料自給率40%、エネルギー自給率4%が危惧されているが、木材自給率を知る人は少ない。26%を高いとみるか、低いとみるか。

 本、書類、新聞、ティッシ、木のテーブル、合板の本棚、木造住宅……私たちは木や紙の製品を大量に使っているのに、野山を見渡しても、伐採された林が少ないことを「おかしい」と思う必要がある。日本は国土の68%を森林に覆われ、世界平均の30%をはるかに上回る森の国だ。なのに、木材輸入量はアメリカ、中国に次いで3位の輸入大国。自国の林が青々としているのは喜ばしいことだが、見えない海外では、今でも北海道に近い面積の森林が毎年減少し続け、温暖化の一因にもなっている。途上国では不法伐採、すなわち自然林の違法な伐採や、植林を伴わない無計画な伐採が横行し、その木材を我が日本も無差別に買い上げているのが現実だ。

 一方、国内のスギ・ヒノキ林は使われぬまま放棄され、生物多様性の低下や、保水力の低下が深刻化している。自国の木が使われない理由は簡単、海外の木のほうが安いからだ。ただし、輸入材でも「FSC」などの森林認証マークがついていれば、不法伐採材ではないことが保証される。あらゆる物事を市場原理に委ねるのではなく、社会全体を見据えて、皆でルールを考え直す時代に来ている。


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※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。