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街森研究所 RSSフィード

街や森で思うことがある。心に残ることがある。訴えたいことがある。
日本各地の樹木や自然、風景を見て回りつつ、この記録をつけている。

2010-01-04 無農薬・有機田んぼレポート<秋編>

[]充実の収穫! 自然の恵みと営みを実感した秋

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 2009年、初めて挑戦した完全無農薬・有機栽培の米づくりを、<春編><夏編>に続いて<秋編>にまとめました。

 例年になく涼しかった8月が過ぎ、出穂から43日が経過した9月23日。重たく熟した稲穂の頭(こうべ)がたれ、いよいよ稲刈りの時期を迎えました。ふつうの稲の場合、稲穂も葉も黄金色を帯びて大変美しいのですが、黒米(朝紫)の場合はちょっと様相が違い、褐色の強い穂(病気で枯れた穂の色に似ています...)と、濃い緑色の葉のコントラストが印象的です。そのため、稲刈りの適期の見極めがしにくいのですが、出穂からの日数と米粒の堅さなどから判断しました。

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 これが稲刈り直前の株の様子です。分けつは約25本、株の丈は80cmほどで、隣のヒノヒカリ系品種と比べると10cmぐらい低いです。稲穂が熟した後も、次々と株の中心から新たな若い穂が出てくるので、これまた稲刈りのタイミングを迷うのですが、生育旺盛な黒米の性質らしいです。

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 こちらは不耕起ゾーンの様子です。かなり放置したせいでヒエやカヤツリグサもかなり生えており、分けつは通常の半分程度です。でも、しっかりと実っています。稲刈り用ののこぎり刃の鎌を持って、さっそく稲刈り開始・・・

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 ザクッ、ザクッと力強く稲を刈る音、感触。手のひらいっぱいにはち切れんばかりの稲の束。稲刈り体験で2,3度やったことありましたが、一から田んぼをつくって収穫するこの充実感は人生初めての感覚です。上写真は、刈り取った稲の束をワラで結んでいるところです(写っているオッサンは僕です...)。農家のおじさんに去年のワラをもらい、その場でなった縄でワラを腰にぶら下げ、手際よく稲を結んでいきます。お手本を見せてもらったのですが、慣れると感動的な早さで結べるようです。

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 それと稲刈りをして初めて知ったのですが、黒米の茎の断面は、このように鮮やかな青紫色をしています。自然の色とは思えない美しさでちょっと感動しました。これが黒米の栄養素と言われるアントシアニンの色なのでしょうね。

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 刈り終えた稲は、モウソウチク(孟宗竹)とハチク(淡竹)で作った稲架木(はざき)にかけて干します。このあたりでは稲架木を「なる」と呼び、稲を干す作業を「はぜ架け」と呼んでいるようです。竹は、田んぼのすぐ横にある竹やぶから切らせてもらいました。最近は西日本を中心に竹林の拡大が問題となっていますが、昔から農具に使われてきた竹を最大限に活用したいものです。晴天のもとで丸一日も干せば稲はすぐ茶色くなり、ぷ〜んと甘い米の香りを漂わせます。この香ばしさも初めての体験でした。

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 さて、次は脱穀の時期を見極めないといけません。晴天続きなら1週間も干せば十分と言いますが、稲刈りが完了した9月27日(3回に分けて稲刈りしました)以降は雨も結構降りました。8日目の10月5日に農家のおじさんに言われて水分計で玄米の水分を計ってみると18.5%。これが15%台ぐらいにならないといけないらしいです。その後、23日目の10月20日に計ってみると13.6%。ちょっと乾きすぎた? 米粒を食べてみるとカリカリでした。

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 ともあれ、十分乾いた方が籾(もみ)が外れやすく、脱穀や籾すりがスムーズにいくそうです。今回は初めての田んぼなので、昔ながらの手作業で脱穀をやりたいと思い、自然農の先駆けである知人(自然菓子工房・欧舌さん)から足踏み脱穀機と唐箕(とうみ:風で籾とゴミを分別する装置)を借りてきました。足踏み脱穀機は小学校の実習田で使ったとき以来! 楽しい作業ですが、うまくやらないとなかなかきれいに脱穀できません。

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 足踏み脱穀機で脱穀しただけだと、巻き込まれたワラや穂がたくさん紛れ込んでいるので、まずは目の粗いザルでこれらのゴミを取り除きます。これは結構面倒な作業です。それにワラが肌に当たると、とってもかゆくなる場合があるので注意です。次に唐箕にかけて、さらに細かいゴミを風で吹き飛ばします。

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 後ろに移っている青いのが唐箕です。昔ながらの木製の唐箕ではなく、金属製の唐箕を使いました。手前のワラは何をしているか分かりますか? 冬の間に使うワラを束ねて保管する藁塚(わらづか:地元では「のうぐろ」と呼んでいる)を作っているのです。

 

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 完成するとこうなります。地方によって藁塚の形はいろいろありますが、僕の地元ではこの形をよく見ます。子供の頃は「あの小屋には誰が住んでいるのだろう?」と不思議に思っていましたが、大人になってようやく藁塚の役割、作り方を知りました。自分で作り上げるとかなり感激です。必要に応じてワラを引っこ抜き、畑や花壇のマルチ(防寒・雑草対策)に使っています。

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 そして収穫した籾はこの2袋。1.1畝(せ)=1.1a=110平方mで合計50kg。持ち上げるとズシリと重く、充実の収穫と言いたいのですが、半年間の苦労がこの2袋だとすると、決して多くない気がします・・・

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 脱穀が完了した10月22日の風景です。一番左下の僕の田んぼは、収穫後の藁塚が残るだけとなりました。隣の友人の田んぼはちょうど稲刈りの時期で、黄金色の稲が美しく、まさに収穫の秋を感じる里山の風景です。

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 これは籾すりをする前の籾です。黒米の籾はこのようにやや黒ずんだ褐色の強い色です。次は籾摺り(もみすり)です。籾殻を取り除いて玄米にする作業で、土臼(どうす)があればこれも手作業でできるのですが、今回はあてがなかったので、知人の小型籾摺り機を使わせてもらうことにしました。

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 電源を入れると大きな音を発するこのマシンに、上から籾を投入すると、右の青い筒から籾殻が噴射され、左後方のちびっ子がのぞき込んでいる袋に玄米が出てきます。籾すり機って初めて見たのですが、文明の力はすごいですね。

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 そしてこれが玄米が出てきたところ。ここで初めて黒米の黒色が現れます。いやぁ、感激ですね。やっと食べられる状態になりました。玄米の重量を測定すると、籾の状態から20%(10kg)ほど減って合計40kg。1.1畝で40kgだと、1反(たん)=1ha=1000平方mあたり364kg=約6俵。これは有機栽培の黒米(朝紫)としては十分な豊作だそうで、そう知って安心しました。

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 藁塚に使わなかったワラは、押し切りという刃物で10cm程度に刻んで田んぼにまきます。このワラが土に返り、翌年のお米の栄養になるのです。地元の有機農家さんは、冬の間に海岸に流れ着いた海藻やヒトデも肥料としてまくそうです。僕の田んぼでは稲刈り直後にレンゲの種をまきました。レンゲの根には根粒菌が共生するため、空気中の窒素を養分として土中に蓄える効果があります。写真は11月21日の田んぼです。稲の切り株からは二番穂がたくさん生え、ワラの隙間からはレンゲの芽が生えていました。

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 さて、黒米をはじめ最近ブームの古代米といえば、ふつうの米に5〜10%程度混ぜて炊き、色づいたご飯を楽しむのが通常ですが、黒米はもち米なので、僕は餅を作りたいと思っていました。ただし、黒米が黒いのは玄米の時だけで、精米すると普通の白いもち米になってしまいます。なので、黒い餅をつくるには玄米のままつきます。写真は、ゴマすりで少し傷つけた黒米を4日間ほど水に浸けたものです。やや発芽しているものもあります。こうすることで、水を十分に吸い込んで柔らかい餅ができます。

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 12月12日と31日に、無農薬米を作っている近所の知人宅で餅つきをしました。いやぁ、臼と杵を使った昔ながらの餅つきなんて、小学校の時に親戚の家でやったの以来でワクワクです。写真は、蒸篭(せいろ)で普通のもち米と黒米を2:1で蒸したものです。これをみんなでペッタン、ペッタンとつきました。

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 できあがった餅です! ずいぶんカラフルで賑やかしょう。奥の黒いのは黒米100%で作った餅、手前の茶色いのは兄が作った緑米100%の餅(ついた直後は淡い緑色でしたが1時間もすると茶色くなりました)、左の緑色のは普通のもち米で作ったヨモギ餅です。黒豆入り、あんこ入り、赤米の餅も作りました。黒米100%の餅はあんこより黒い黒色で、かなり斬新です。なお、黒米は普通のもち米より風味が劣るようで、玄米には正露丸に似たような特有の弱い匂いがあり、精米すると逆に何も匂わなくなり、もち米特有の香りもほとんどしません。でも、餅にしたら色以外は違和感なく美味しくいただけます。

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 肌寒い冬を迎えた12月24日の田んぼの風景です。手前の田んぼや畦(あぜ)がボコボコに掘り返されているのが分かりますか? 今年最後にやってくれました。イノシシです。この田んぼは周囲の森林から数十m離れているため、夏の間はイノシシの被害に遭うことは全くなかったのですが、冬になって周囲の電気柵が外されたせいか、食べ物が減ったせいか、イノシシがやってきて畦を派手に破壊してくれました。おまけに不耕起ゾーンもきれいに耕してくれています。来春はイノシシ君も田起こしを手伝ってくれるって?

hanatorihanatori 2010/01/06 11:17 無事収穫を終えられたこと、安心しました。
いろいろ懐かしい道具が見えて、まだ現役なのですね。竹を使った「はざかけ」など当地でも生家の地域でもすっかりみられなくなりました。藁塚も地方によって本当にいろんなかたちと呼び方で、旅先などではその違いを見るのも楽しみです。
今は人様の労働の成果を精米というかたちで頂くだけですが、いささかでもその労働の中身を知っているかどうかで食べるという姿勢にひびくと思っています。

夏編のコナギやアゼムシロなど、普段は目に留めない小さい草たちも、若かりしころ野草の写真やスケッチをしていた当時の大好きな花たちです。雑草と言ってしまうにはあまりにかわいらしいそれぞれ精一杯の生命ですね。耕地整理された田んぼには見られなくなりましたが久しぶりに探したくなりました。

conokixconokix 2010/01/06 17:22 hanatoriさん、このようなコメントいただき嬉しいです。稲を干す光景はこのあたりではまだちらほら見られるのですが、収穫と同時に脱穀するコンバインの普及で急激に減っているみたいですね。作業効率化の必要性は分かりますが、自給用の米なのでなるべく手作業でと思っています。野草のスケッチもされていたのですね! 僕もコナギやアゼムシロは美しい植物だと思います。ここでは紹介しませんでしたが、同じく水田雑草であるオモダカも葉っぱの形が格好良くて大好きです。

fumfumfumfum 2010/01/08 17:52 松が明けてしまいましたが・・今年もご活躍お祈りいたします。
見事な収穫、田圃にも感謝ですね
私がいつも目にしている田は近くの農家が自宅用に作っている小さい田なので収穫後は一段の稲架に干されていました。雨にぬれているさまは見ていても気になりましたが・・
黒米はもち米だったのですね、袋入りの雑穀を普通の白米に混ぜて炊きこむとおこわ風味が出るのはそのためですね。
今刈り取られた後の近所の田は冬の陽を浴びてゆっくりと体を休めているようです。そんな中でも、また曇天の冬ざれた中でも小鳥たちは糧を田に求め田もやさしく見守っているようにみえます。

conokixconokix 2010/01/09 12:31 fumfumさん、今年もよろしくお願いします(^^) コメントありがとうございます。稲干しもそうですが、米作りは野菜作り以上に季節や天候との関係を感じることができ勉強になります。黒米はうるち米の品種もありますが、多く出回っているのはもち米の品種のようです。僕の田んぼ周辺では鳥の姿はあまり見ないのですが、タゲリが来る場所もあると聞いています。

アザミの歌アザミの歌 2010/01/10 19:23 昨年は楽しませていただき有難うございました。本年もよろしくお願いいたします。
お米作りが成功されおめでとうございます。ご自分での労力で実ったお米を頂くのは格別でしょうね。
モミを取り除いた直後の玄米なら油脂分も酸化していないので胃もたれもなくとても贅沢なお餅がいただけたことでしょう。羨ましいです。(^^)

私は稲刈りの後の田んぼでキクモやミズネコノオ、シソクサなど雑草との出会いが大好きで毎年楽しんでいます。
今年も是非是非頑張って下さいね。ご活躍をお祈りいたします。

conokixconokix 2010/01/11 13:20 アザミの歌さん、今年もよろしくお願いします。玄米の油脂分が酸化・・・そんなこと全く知りませんでしたが、新米にはそういう良さもあるのですね。本当、玄米もちなのに柔らかくて美味です。ミズネコノオやシソクサは知りませんでした。この田んぼは冬は水を抜いているので、湿地の雑草は少ないと思いますが、探してみたいと思います。先日の七草の日にはダイコン、カブをのぞいて田んぼで全種採取できましたよ。

2009-12-24 無農薬・有機田んぼレポート<夏編>

[]黒米育つ! 無農薬田んぼに現れた生き物たち

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 8月末からブログが止まったままでしたが、久しぶりに復活です。この間ももちろん田んぼ作業は続いてたわけで、試行錯誤しながらも無事豊作を迎えることができました。その過程の記録として、遅ればせながら<春編>に続いて<夏編>をレポートします。

 上写真は、田植えから1週間が経過した6月23日の風景です。初夏のさわやかな若草色がまぶしいです。僕が黒米(品種名:朝紫:もち)を育てている田んぼは、一番左下の細長い町(まち:一区切りの田んぼ)と、手前の不耕起ゾーンです。友人が作る一段上の町は、雑草対策で糠(ぬか)を入れているので色が違います。僕は試しに糠を入れなかったのですが、はじめの1ヶ月間で比較しても、糠を入れた田んぼは目に見えて雑草の発生が少なかったです。

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 7月初旬になると、稲も一回り大きく成長してきました。根元が黒紫色なのが分かるでしょうか。これは黒米の特徴で、葉にも所々黒紫色の模様(斑:ふ)が入ります。この頃、田んぼの手前半分に藻(も)が大量に発生し始めました。手に取ってみると、スポンジを荒くしたような網目状になっていて、どうやらアオミドロによく似た「アミミドロ」という藻のようです。藻が発生すると水温が下がり、稲の成長が遅くなるとも言われるようですが、一方で日光を遮ることで雑草の発生を抑える効果もあり、水を抜いて枯らせば肥料にもなるとのことで、何も手を加えず見守ることにしました。

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 さて、そんな藻の合間からも様々な水田雑草が生えてきます。無農薬・有機栽培の稲作をする上では、雑草の管理は最も大事な要素。しかも、花が咲いてから草の名前が分かったのでは遅く、芽生えの頃から雑草の種類を特定することが大切です。そこで、花が咲く前の姿を見ながら、定番の雑草を覚えていきたいと思います。

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 まずはコナギ(小菜葱:ミズアオイ科)です。観賞用水草で知られるホテイアオイを小型にしたような形で、晩夏に紫色の花を咲かせます。水田雑草の定番中の定番ですが、見た目は結構美しくて、手で簡単に引っこ抜けるので、そんなに悪いヤツという気はしません。生え始めの葉は細いので別種のように見えます。地元の農家さんは「いもがら」という方言で呼んでました。

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 続いてヒエ(稗:イネ科)です。ヒエにはいくつかのタイプ(変種)があり、写真の個体は穂に毛(芒:のぎ)が多い「ケイヌビエ(毛犬稗)」のようです。僕の田んぼにもタイヌビエ、イヌビエなど3タイプぐらい見られるようです。水田の強害草として最も恐れられているだけあって、太い茎や葉をぐんぐん伸ばして力強く成長し、稲より大きな1m前後の丈になります。稲が小さな頃は大きなヒエはよく目立つので、見つけては取るのですが、バリバリっと根っこから引き抜く作業は結構気持ちいいです。

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 次はカヤツリグサ(蚊帳吊草:カヤツリグサ科)です。この仲間もたくさんの種類があるのですが、僕の田んぼに多いのはやや小型の「コゴメガヤツリ(小米蚊帳吊)」のようです。カヤツリグサ類は茎の根元の断面が三角形をしていることが特徴で、陸地に生えたものは根が張ってなかなか抜けないのですが、水田内に生えたものは簡単に抜けてしまいます。以上のコナギ・ヒエ・カヤツリグサが、指導を受けた地元の有機農家さんに「これだけは絶対に増やすな」と言われた強雑草3種です。

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 これら以外にもよく目につく雑草はいろいろあります。水際の畦(あぜ)に多く生えてくるのが、ヒデリコ(日照子:カヤツリグサ科)です。軟弱そうな細い葉っぱですが、どんどん株が大きくなっていって、晩夏に丸い球状の小さな実を多数つけます。引っこ抜くのは簡単ですが、たくさん生えてくるので途中からほったらかしました。タネがたくさんこぼれただろうから、来年はもっとたくさん生えてくるかな。

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 続いて、左がタカサブロウ(キク科)で、手に取っている方はチョウジタデ(丁字蓼:アカバナ科)です。両者はよく似てますが、タカサブロウは葉が対生(たいせい:対につく)するのに対し、チョウジタデは互生(ごせい:互い違いにつく)です。両者ともさほど強い雑草ではありませんが、放っておくと50cm以上の丈になります。タカサブロウは水際の畦に生えることが多く、チョウジタデは水田内にも生え、両者とも簡単に引き抜けます。

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 これは不耕起水田ゾーンに繁茂したミゾソバ(溝蕎麦:タデ科)です。通常は水田内に生えることは少なく、畦や水路沿いに生えることが多いようです。引き抜くのは簡単ですが、茎に小さなトゲがあって、つる状にどんどん広がっていくので多少厄介です。こいつが不耕起田の約半分に繁茂し、ミゾソバに覆われた稲の分けつ(根元で茎が増えて分かれること)が止まってしまったので、少し駆除しました。自然農とはいえ、放置するだけでは稲は自然の草たちに負けてしまいます。人が力を貸してやるラインが見えた気がしました。

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 こちらはアゼムシロ(畦筵 別名ミゾカクシ/溝隠:キキョウ科)です。初夏から夏に可愛らしい薄ピンクの花をつけます。畦にむしろを広げたように群生することが名の由来らしく、別名にもある通り、水田内よりも溝や畦に生えることが多い雑草です。僕の田んぼでは、水路の整備以外では、アゼムシロに手を焼くことはありませんでした。なお、左上に見えるのはミゾソバの葉っぱです。

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 中にはこんな珍客も現れました。ハス(蓮:スイレン科)です。隣にハス田があるので、昔そこからこぼれたタネが、休耕田の土の中で何年間も眠っていたのでしょう。二千年前のタネから芽生えた「古代ハス」もあるぐらいですから、あるいはもっと昔のタネかもしれません。面白いのでこのまま残しておいたら、小ぶりながら結構成長しました。

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 8月初旬の田んぼの内部の様子はこんな感じです。大型の雑草は適度に駆除したので、小型のキカシグサ(ミソハギ科)やコケオトギリ(苔弟切:オトギリソウ科)が見られますが、雑草の密度は低くていい感じと思います。稲作1年目ということで、雑草の種類や成長速度を知るためにむやみに雑草取りを行わず、花や実がつくまで残しながら見守ってみました。去年まで休耕田で水が抜かれていたこの場所は、やや乾いた場所に生える「畑雑草」が主体だったわけですが、来年からは湿り気を好む「水田雑草」が増えるので、雑草取りは今年以上に苦労するでしょう。

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 植物ばかりではなく、もちろん動物も現れます。これはミズカマキリ(水蟷螂:タイコウチ科)の子供。たくさん見られたので、近くの田んぼから産卵しに来たみたいです。他にはマツモムシやコオイムシも確認できました。タイコウチの出現は期待したのですが見られませんでした。

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 これは何だろう? と思って、水にぷかぷか浮かんでいた物体を手に取ると、中に卵やイモ虫が! 調べて見るとコガムシ(小牙虫)の卵のうでした。今年、水田内に見られた甲虫は、ハイイロゲンゴウとコガムシが大半でした。もっと別のゲンゴロウ類や、でっかいガムシにも来てほしいものです。

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 こちらは害虫のセジロウンカ(背白雲霞:ウンカ科)です。7〜8月に中国から飛来してくるため「夏ウンカ」の通称で知られ、背中に白い筋があります。ウンカといえば大発生して稲の汁を吸う害虫ですが、大被害を受けるのは秋に発生するトビイロウンカ(秋ウンカ)の方で、夏ウンカは「肥料になるから放っておいていい」と農家のおじさんも言ってました。僕の田んぼで最初に発見したのは7月4日で、多いと1株に20匹ぐらいいたと思いますが、特に目立った害もありませんでした。夏ウンカが来ることで、害虫を食べる益虫も田んぼに集まってくるといいます。こうした自然の力を最大限活かしたいですね。

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 8月9日、いよいよ出穂(しゅっすい)が始まりました! 感激の瞬間です。興味深いことに、出穂が一番早かったのは苗代に残したままの余った苗でした。続いて、不耕起水田の稲、最後に普通の水田の稲の順に穂が出ました。これらの時間差は数日でしたが、生育環境の良さの反対順であることから、株を大きくすることを断念した個体から出穂が始まったと推測できます。

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 出穂直後の風景です。青々と生い茂った田んぼはとても美しいです。黒米(品種名:朝紫:もち)は葉の緑色が濃く、隣の田んぼ(ヒノヒカリ系)と比べても色の違いがお分かりでしょう。分けつは1株25本前後で、茎も太くて丈夫な印象があります。農家のおばあちゃんからも「立派なええ稲に育ったねぇ」と褒められました。今年は山口県を集中豪雨が襲い、7月は記録的な降水量でしたが、この田んぼで心配なのはむしろ水不足で、豪雨の影響はほとんどありませんでした。元気に育った稲たちは、8月の日差しをいっぱいに浴びながら収穫の秋を待ちます。

fumfumfumfum 2009/12/28 23:49 いろいろな雑草が生えてくるのですね。アゼムシロなんてこの辺ではあまり見ないしヒデリコも久しく見ていません。やっぱり農薬のせいでしょうか?しかし農家の方たちは雑草や昆虫の形態を良く知っているのですね。実生活から得た知識には趣味で覚えたものは完敗です。  夏の大雨は心配しましたが返って潤ったようで安心しました。
稲の開花時間は数分から数十分と聞きましたが立秋の頃稲田を渡る風がご飯のようなおいしそうな香りを運ぶ時がありますがそれが稲の花の香りでしょうか・・ね?
今年もあと僅か、よいお年をお迎えください。
収穫のお話も待っています・・・

conokixconokix 2009/12/29 08:55 やっぱり農薬で減った動植物はいろいろあるみたいですね。ここで紹介した雑草も、図鑑には「農薬が普及する前は各地の水田にふつうに見られた」なんて書かれてたりします。そんな生き物が自分の田んぼにたくさん見られるのは嬉しいことです。まあ、商売でやってる訳じゃないから軽く言えるのだろうけど。
稲の開花ってそんなに短いのですか!? 香りは確かにいいですよね(^^) 来年は花も観察してみたいと思います。ありがとうございます、よいお年を。

2009-06-25 無農薬・有機田んぼレポート<春編>

[]田んぼを作る!休耕田が潤うまで

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 友人の紹介で4月に借りた田んぼ。農家の方に教えてもらったことに自分の考えを織り交ぜ、連日通いながら手を加えた休耕田は、見事に瑞々しい水田へと生まれ変わりました。5枚ある田んぼのうち、写真左側の田植えが完了している所が僕が担当する町(まち)です。面積1.2畝(120m2)、米1俵(60kg)も収穫できないぐらいの広さですが、田んぼ素人同然だった僕がこの3ヶ月間に学んだこと、試したこと、得た経験は大きいです。その軌跡を記録しておきます。

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 ここは、5年間眠り続けた休耕田でした。草刈りは毎年行われていたようで、カラスノエンドウやスギナ、オヘビイチゴ、コメツブツメクサ、オランダミミナグサ、スイバなどが茂る草原状態でした。もともと湧水が多くてじゅくじゅくした場所で、田んぼの地下1〜2mには竹を敷き詰めて排水パイプが設置されており、その栓を開けることでようやく人が歩ける状態になっているそうです。

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 4月16日、田起こしをしました。指導してくれる農家の方から耕耘機を借り、ロータリーをかけます。いきなり機械に頼ってしまいましたが、やっぱりエンジンの力はすごいです。畔(あぜ)の草刈りと田起こしをしただけで、田んぼの姿がはっきりと浮かび上がりました。

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 5月2日と7日、種降ろしをしました。知人にもらった黒米(朝紫)の籾(もみ)を、田んぼの脇に作った苗代に直に播きました。既に前処理された籾だったため、根が出始めています。休耕田の表面をクワで削り、土をむき出しにした上に籾を播き、ふるいにかけた田んぼの土で覆い、枯れ草をかぶせます。試しに枯れ草をかけないゾーンや、ヒモを張らないゾーンも作ってみました。僕の田んぼは手で植えるので、育苗箱を使う必要はありません。

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 5月10日、播いて1週間もすると2cmほどの芽が次々と生えてきました。感激の瞬間です。枯れ草をかけずに土をむき出しにしたゾーンは、生育が多少遅いようです。恐らく夜間の低温が原因でしょう。なお、6月1日に播種したヒノヒカリの苗代では、両者の差はほとんど見られませんでした。気温が上がったためでしょう。

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 5月30日(28日目)には15cm近くに成長しました。水がたまりやすい場所(写真上側)は発芽・成長しなかった籾が多く、表面に水がたまならい程度の方が生育が良いことが分かりました。ひもは鳥よけが目的ですが、僕の田んぼではヒモを張らないゾーンも鳥の被害は皆無でした。ただ、籾の上に土をかぶせなかった場所は、スズメが食べてたみたいです。

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 6月5日、田んぼに水を引きました。水を入れる前に再度全面にロータリーをかけ、あぜ塗りに備えてあぜ沿いの土は4本グワでさらに細かくしておきました。けれども、いざ水を入れ始めても水が増えません。どこからか抜けているのです。水底の土を4本グワで練り、粘土状にしてを畔に寄りかけるようにします。すると、ようやく水が溜まり始めました。そうやって、畔に沿って土を丹念に練りながら水を引いていきます。これはすべて手作業でやったのですが、重労働です。昔の人って偉いですね。

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6月7日、粗掻(あらが)きをしました。前日にまとまった雨が降って一気に水がたまりました。水を溜めるだけでも3日間・・・ようやく水田らしくなり、嬉しくなります。粗掻きは、鉄車をつけた耕耘機で行いました。前日に人力で3時間かかった作業が、機械を使うと30分で済みます。いやぁ、機械って改めてすごいですが、いろいろ考えさせられます。

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 6月8日、畔塗りをしました。前日に土を練っておき、我流で一部畔を塗ってみたのですが、翌日に農家の方に教わると、自分のやり方が全然ダメなことに気付きました。塗る土の厚さが薄すぎたのです(本当は10cmぐらい厚さ)。それに、さほど丁寧にやらなくても、コツさえ覚えればスイスイ綺麗な畔が作れます。これは楽しい! 出来上がった畔の一部に、枝豆も少し播きました。本掻きに備え、4本グワで田んぼ全体の土の偏りをなくし、ならしておきました。

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 6月12日、本代掻(ほんじろか)きをしました。最後に古い戸板に石をのせて引っぱり、表面をならしました。田んぼで働かされる牛の気分がよく分かりました。こうやって土を水平にしておかないと、水につかる部分と島になってしまう部分ができ、水の管理や雑草対策が思うようにできなくなります。代掻きの意味ってこういう所にもあったのですね。自分でやってみて初めて実感です。

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 6月15日、いよいよ田植えです。40〜45日経過した苗の成長はすこぶる好調で、丈は20cm超。分けつはまだしていませんが、5枚目の葉も生えている状態です。ただ、田植え直前に少しトラブルがありました。上の田んぼから僕の田んぼに水を入れていたのですが、どこかで水漏れしたのでしょう、前日の快晴時に水が全く入らなくなって完全にひからびてしまい、畔と底にひび割れが入ってしまいました。田植えの日の朝に農家の方が気付いて水を入れてくれたのですが、見回りの大切さを改めて痛感する出来事でした。ひびから水漏れしないことを祈りましょう。

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 田植えは、30cm間隔で竹をつけた筋付け機を使い、その溝に沿って苗を植えていきます。雑草交じりの苗代から、クワで土ごと掘りとっては雑草と稲を取り分けて植えるのですが、これが結構時間かかります。箱苗の田植えに比べると、2倍近く時間がかかるかもしれません。その代わり、自然の土と風で育てた苗は、培養土と温室でぬくぬく育った苗よりもずっとたくましいと信じましょう。1本ずつ植えるゾーンと、2〜3本ずつ植えるゾーンを作り、両者の比較をしてみます。また、すじ間は30cmのゾーンと40cmのゾーンを作りました。今後の成長が楽しみです。

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 また、田んぼの端っこに不耕起のゾーンを設け、この町だけは耕さずに雑草に交じって稲を植えてみました。不耕起栽培、いわゆる自然農は水のコントロールで雑草を抑えることが大事だそうですが、果たしてうまく成長してくれるでしょうか?

 5年間眠ってきた田んぼなのに、水を引くと沼ガエルたちがたくさん集まって来て、雨でも降れば喜びの大合唱です。田植えをする頃には灰色ゲンゴロウや貝ミジンコが水中を泳ぎ回り、田植え後はオタマジャクシ、姫ガムシ、ユスリカの幼虫なども次々姿を現しました。とにかくいろんな発見や変化が面白く、これからが楽しみです。田植え後の夕暮れの中でのワンショット。西日がまぶしく、充実感が漂います。

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ちほりちほり 2009/06/25 21:09 すーごい!農学系のくせにお米を作ったことはなかったので、勉強になりました!個人的には、研究室で、畑で不耕起栽培をやっていたのでその結果がすっごく気になります。
「田んぼに稲を植える」この言葉の裏にあんなに工程があるなんて。いつも見る田んぼは機械で、だーっと植えてるくらいしか見ないので、あぜを塗り固めたりとか土を練ったりとかそういうことまでするなんて知らなかったなぁ・・。

hanatorihanatori 2009/06/26 09:22 おくにへ帰ってこんな大変なことをされていたのですね。
米野菜農家に生まれ子どもの頃から手伝いは当たり前の世代、夫の母も未だに手植えで米を作っているという環境ながら、年とともにからだが言うことをきかなくなると農作業のきつさだけが先に見えてしまいます。荒れた土地を見ると戻すことの大変さも思います。
水田の国土にとっての重要さも大人になってから知識を得ました。
米の消費量の減少は毎日の生活で実感していますが、では自分たちがこれから何が出来るかというと難しいです。
生家でがんばっている兄が、健康でいてくれることを祈るくらいです。
良い実りがありますように。

conokixconokix 2009/06/26 22:15 >ちほりさん
そうそう、田植えイベントに参加するだけでは見えない過程や苦労がたくさん分かりますよ。田んぼは自然と里山社会の総合学習です(^^)
>hanatoriさん
都会にいると、田んぼやってると言うと「すごい!」と驚かれるのに、こちらでは「うちも田んぼあるよ」とか「昔からよく田んぼを手伝わされたよ」とか、普通に言われてしまいます。田舎だから田んぼあるのは当たり前なんですよね。でも僕ら、毎日米を主食に食べているのですから、田んぼやってて当たり前な社会が健全だと思います。パンや小麦を食べたいなら、もっと麦を作ればいいですよね。そうゆう当たり前の価値観を、少しでも多くの日本人に持って欲しいものです。

fumfumfumfum 2009/07/01 20:12 家なら新築祝いでしょうか・・開墾御祝申し上げます。
ご存知のように根っからのミミちゃん嫌いの私は小さい頃から家庭菜園や親戚の畑の手伝いでミミズの出現に肝を冷やし、それでも果敢に挑戦した結果熱を出して寝込んでしまったこと(高校時代)もあり、どうしても土いじりに尻込みしてしまいます。
自分で食べるものくらいは自分で作るという考えは全くそのとおりでそれを実行されている方々に対しては後ろめたさでいっぱいです・・が得手不得手はあるもの・・とお許しを頂きたいと思っています。
しかし、米作り、農作業はそういう観念だけでなく、ものを育てて収穫する喜びということの方が優るのでしょうね、hanatoriさんの挨拶言葉「良い実りがありますように」は素敵な言葉ですね。

みとうみとう 2009/07/03 12:53 こんにちはー(*^∇^*)
感化されたようで、昨日、友人の田んぼ見学に行ってきました。
とても広い田んぼで、まだ田植えが終わってない状態だったので
今度はわたしも手伝わせてもらうことに♪

頭でっかちにならないよう、体験することも大切ですよね。

conokixconokix 2009/07/06 14:39 >fumfumさん
ありがとうございます。餅まきでもすればよかったですね、というか餅米作ってます(^^) ここの田んぼはミミズは非常に多いですよ。(水生の)ヒルも増え始めています。ミミズや虫が嫌いなのは仕方ないかも知れませんが、かといって農薬や化学肥料づくめでミミズも虫もいない田畑の食べ物に慣れないで下さいね。僕の田んぼではセジロウンカが発生し始めている代わりに、ツバメやクモがたくさんウンカを食べに来ます。
>みとうさん
近くに田んぼを持つ友人がいてよかったですね。田植え体験だけでなく、その後の雑草取りや水管理の体験もぜひやってみて下さいね!