「初」は「ころもへん」ではない、という無粋なツッコミ

 まず、誤解がないようにはっきりさせておきたいのは、我が首相の字は下手だということです。それを述べた上で、こういう指摘はどうなの、と思う点を一つ。

 これに対し首相は「初心を貫く 平成二十二年九月二日 菅直人」と記した。
 もっとも首相は「初心」の「ころもへん」の点を入れ忘れ、「しめすへん」になってしまった。

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100903/plc1009030137001-n1.htm

 「初」の字は、『康煕字典』は言うまでもなく、『説文解字』の時代から「ころもへん」ではなく、「りっとう」(かたな)扱いなのですが。
 ついでですけど、楷書でなければ(楷書のなかにも「しめすへん」のようなものはありますが)「初」にもいろいろなかたちがあるということを架蔵の『書道大字典』(角川書店)は教えてくれます。

 だからといって、首相の字を擁護するというわけではないということは念を押しておきます。
 参照:活字体のように書く必要はあるのか――「結」の場合 - Cask Strength