じじぃの「ナノテク革命・微小な世界を映し出す巨大な目・スプリング8・XFEL!科学の扉をノックする」

SPring-8でのナノテクノロジー研究 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=tu9ht1MP9L8
見えなかった世界が見える (SPring-8) - 研究成果編 - 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=yYZzu4eHcPQ
SLAC National Accelerator Laboratory from Zeppelin Airship 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=xNJbc6FtEEg&feature=related
The future's bright for DESY 動画 YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=pdNTEX78gzk&feature=related
SACLA SPring-8 Google 検索
http://www.google.co.jp/images?hl=ja&rlz=1T4GZAZ_jaJP276JP276&tbm=isch&oq=SACLA+SPring-8++%E7%94%BB%E5%83%8F&aq=f&aqi=&gs_l=img.3...44289.45833.0.46364.3.2.0.1.0.0.93.171.2.2.0...0.0.ENXZxJXBjbU&q=SACLA%20SPring-8%20%E7%94%BB%E5%83%8F
研究成果をやさしく解説 2012-03-14 SPring-8 Web Site
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/
SPring-8の技術で実現するX線自由電子レーザー SPring-8 Web Site
先陣を争っているのは、米国スタンフォード大学線形加速器研究センター(SLAC)とドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)ですが、これら2つに比べて日本の計画では、全長もコストもとてもコンパクト。SPring-8で培った技術ゆえだそうです。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_29/
理研、幹細胞を含むヒト白血病細胞をほぼ死滅させられる低分子化合物を同定 2013/4/19 マイナビニュース
理化学研究所(理研)は4月18日、ヒトの白血病状態を再現した「白血病ヒト化マウス」を用いて、従来の抗がん剤が効きにくい「白血病幹細胞」を含め、ヒト白血病細胞をほぼ死滅させることができる低分子化合物を同定したと発表した。
研究チームが着目したのは、2010年に同定した25種の分子標的の中の1つで、多数の患者の白血病幹細胞に共通して発現し、特に細胞の生存や増殖に関係すると考えられるリン酸化酵素「HCK」だ。リン酸化酵素とはリン酸基をほかのシグナル伝達分子に付加する酵素のことで、一般にシグナル伝達系において、リン酸基の付加はシグナルの伝達を意味している。
そして数万の化合物ライブラリの中から、HCKの酵素活性を最も強く阻害する低分子化合物「RK-20449」を選び、理研が所有する大型放射光施設「SPring-8」などでX線構造解析を行ったところ、HCKとRK-20449が強く結合していることが確認された。
http://news.mynavi.jp/news/2013/04/19/071/index.html
お知らせ - がん遺伝子産物Rasの機能を阻害する新規分子標的がん治療薬開発につながる論文を米科学アカデミー紀要に掲載へ 2013年4月30日 神戸大学
我々は、高輝度光科学研究所および理化学研究所 (SPring-8) 所属の熊坂崇先生 (同席) の協力のもと、Rasの分子表面上に世界で初めてとなるポケット構造を発見し、このポケット構造情報に基づき、コンピュータシミュレーションを駆使して、ポケットに特異的に結合することにより、Rasとその標的たんぱく質 (Rafたんぱく質など) との結合を阻害することで、Rasが引き起こす細胞がん化シグナルの伝達を遮断する3種類の物質 (低分子化合物) を、コンピュータシミュレーションと試験管内及び細胞レベルでの活性検定を組み合わせた独自の手法を用いることで発見した。これらの物質 (論文中で「Kobeファミリー化合物」と命名) は共通の基本構造を持ち、マウスに移植したヒト大腸がん細胞の腫瘍形成を抑制する顕著な抗がん作用を示した。
http://www.kobe-u.ac.jp/topics/top/t2013_04_30_01.html
リチウムイオン電池正極材料の非平衡な相変化挙動を世界で初めて観察 〜高速充放電可能な蓄電池の実現へ〜 2013年04月10日 SPring-8 Web Site
リチウムイオン電池の作動条件下における動的挙動の解析は、今まで計算や定常状態の測定からの推測でしか議論されてこなかった非平衡状態での相転移現象解析を可能にします。今回得られた、高速反応を実現させるメカニズムを新規活物質の設計に反映させ、さらなるリチウムイオン電池の高速反応化を目指します。開発された手法は2012年4月から運用を開始したSPring-8のRISINGビームライン BL28XUにて実用電池材料に対して広く適用されています。さらに、この知見を活かして、リチウムイオン電池に代わる高性能な革新型蓄電池の開発を進めて行きます。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2013/130410
世界初!有機半導体における電気伝導の圧力に対する全く新しい応答を発見! 2013年02月28日 SPring-8 Web Site
大阪大学産業科学研究所 酒井謙一研究員、竹谷純一教授および高輝度光科学研究センター 藤原明比古主席研究員の共同研究グループは、有機トランジスタの電気伝導特性における、巨大かつ符号が反転する異常な圧力効果を発見し、そのメカニズムの解明に成功しました。高圧下で動作する有機トランジスタ構造を開発し、精密な物性測定と大型放射光施設SPring-8の高輝度X線を活用した構造解析を組み合わせることにより、圧力印加による分子回転が電気伝導に及ぼす、有機半導体ならではの新しい物性を明確にとらえることが可能になりました。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2013/130228
分子の吸着状態を「記憶」し「消去」するナノ細孔物質を発見 -メゾ領域で多孔性構造体の柔剛を制御- 2013年01月11日 SPring-8 Web Site
京都大学(総長:松本紘)の北川進物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長・教授、古川修平iCeMS准教授、酒田陽子神戸大学助教(当時iCeMS研究員)らの研究グループは、多孔性構造体の結晶サイズをメゾスコピック領域まで小さくすることで、分子を取り込んだ状態の構造を「記憶」し、加熱により「消去」可能な、形状記憶ナノ細孔の合成に成功しました。物質のサイズによって細孔機能が変化することを、多孔性材料において示したのは世界で初めてです。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2013/130111
燃料電池の白金触媒の分布・化学状態を初めて4次元可視化 -膜・電極接合体の劣化メカニズム解明に道- 2012年9月14日 SPring-8 Web Site
当研究グループは、試料の構造を3次元空間的に解析可能なX線ラミノグラフィー法に、特定の元素の化学状態を捉えることのできるXAFS(X線吸収微細構造)法を組み合わせた新しい測定手法である“X線ラミノグラフィーXAFS法”を今回、世界に先駆けて開発しました。世界最先端の大型放射光施設SPring-8を利用して、燃料電池MEAのX線ラミノグラフィーXAFS測定に取り組み、カソード触媒層内の白金触媒の分布および化学状態の3次元空間的な可視化に初めて成功しました。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120914
燃料電池電極触媒活性15倍向上:金属ナノ粒子可溶化技術の開発に成功” 2012年4月23日 SPring-8 Web Site
本研究では、凝集した金属ナノ粒子を水溶液中に分散・溶解し、担持材料表面に再分散・固定する新しい技術を開発した。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120423
なんと世界最小径! ・ナノメートルサイズのX線ビーム誕生 〜奇跡の解像力を生み出す驚異の新ビーム〜 2012-03-14 SPring-8 Web Site
0.1ナノメートルの精度で形状を制御できる補正用の形状可変ミラーを開発、それを集光ミラーの前に設置して入射光の位相をあらかじめ補正するようにした結果、世界で初めて7ナノメートル径という回折限界(光を狭い領域に集める際の理論的限界)に近い高輝度X線ビームをつくることに成功したのです。XFELとこの集光技術とを組み合わせて超高輝度ビームをつくれば、ナノメートルレベルの分解能(識別能力)を持ち、分子 ・ 原子の立体構造を直接観察できるX線顕微鏡の開発も可能です。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_50/
身近なSPring-8  「〜ダイハツ工業(株)・自動車触媒編〜」 SPring-8 大型放射光施設 光のひろば
インテリジェント触媒に新しく使われたのは『ぺロブスカイト型酸化物』というもの。この物質を使った触媒の、排気ガスをキレイにする機能が長持ちすることは、電子顕微鏡という装置で観察できていたんだけど、どうして長持ちするのかまでは判らなかった。
そこで、ダイハツ工業さんはSPring-8で実験をしてみたんだ。すると、『ぺロブスカイト型酸化物』に含まれる貴金属イオンが、繰り返し出入りする事によって、機能が長持ちしていることが判ったんだ。
http://commune.spring8.or.jp/finding/111107.html
インタビュー 沈建仁氏(岡山大学教授)、神谷信夫氏(大阪市立大学教授) 「光合成、残された最大のナゾを解明 -第2回 光合成と、その反応中心の解明」 2012年2月14日 SciencePortal
約200年にわたって世界の科学者が追い続けてきた植物の光合成研究で、最後に残された最大のナゾを、沈(しん)建仁岡山大学教授と神谷信夫・大阪市立大学教授のグループが突き止めた。太陽光と水から酸素を作り出すための要となるタンパク質「光化学系Ⅱ複合体」の結晶構造を解明したもので、米科学誌「サイエンス」は昨年の画期的な10大成果として、日本の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還などとともにこの成果を取り上げ、高く評価した。今後の人工光合成の実現にも大きな弾みがつくとみられる。この成果の意味や、研究の苦労、裏話などを2人に聞いた。
- 『SPring-8』による「光化学系Ⅱ複合体」の構造解析は順調に進んだのですか。
神谷 「光化学系Ⅱ複合体」のような疎水性と親水性物質が混じった複雑なものから純粋な結晶を取り出すのはとても難儀しました。私たちは20年もかかってしまいました。しかもいったん良い結晶ができたと思っても、環境による影響で構造がすぐに変わってしまうという繊細な物質だけに取り扱いが厄介でした。光合成の最初の過程の水分解、酸素発生反応に関わる「光化学系Ⅱ複合体」は、4個のマンガン原子と1個のカルシウム原子が、複数の酸素原子と結びついた「金属・酸素の集合体」とされていましたが、こうした難しさのために、正確な化学組成と詳細な原子配置はなかなか突き止められなかったのです。
沈先生が飛躍的に良質の結晶(分解能1・9オングストローム)を得ることに成功し、『SPring-8』のエックス線解析で調べました。これまで複数の原子が重なってボヤッとしか見えなかった原子構造が、ここで初めて明瞭に見えるようになったのです。原子間の距離や結びつきの強さなども正確に計算できるようになり、組成が「Mn4CaO5」と決まったのです。さらに全体として「歪んだイス」の形をしていたこと、1つのマンガンとカルシウムに2個の水分子が結合していることが明らかになりました。
http://scienceportal.jp/HotTopics/interview/interview72/03.html
『科学の扉をノックする』 小川洋子/著 集英社 2008年発行
微小な世界を映し出す巨大な目 (一部抜粋しています)
初めて「スプリングエイト」の名を耳にしたのは、和歌山カレー事件の時だった。現場の紙コップ、カレー、容疑者宅の樹脂容器に残った3種類の亜ヒ酸を分析し、それら3つが同じ工場で同時に製造されたものである、と証明したのがスプリングエイトだった。つまり、亜ヒ酸に不純物として含まれる重金属の種類と割合が、ぴったり一致することを、化学的に示したのである。
テレビニュースによれば、樹脂容器は既に洗われていたため、残っていた亜ヒ酸はほんのわずか、0.1グラムにも満たない量だったが、その分析を可能にしたのが、世界最高性能を誇るスプリングエイトであったらしい。と、そこで、テレビ画面に問題のスプリングエイトが映し出された。
瞬間、そのあまりにも意外な姿かたちに、思わず画面を凝視してしまった、ごく微量の物質を分析するのだから、さぞかし精巧で繊細で、秘密めいた機械に違いないと思い込んでいたところ、実際登場したのは、山の真ん中に不時着した宇宙船にしか見えない、銀色の施設だった。機械などという生易しいものではない、壮大な工場だった。
      ・
ああ、そうか。私は太陽そのものの1億倍と勘違いしていた。そんなとんでもない状態ならば、とっくにスプリングエイトは燃え尽きているわけで、太陽から届く光のほんの一部の1億倍という意味だった。
「では、車で敷地内をご案内いたしましょう」
坂尻さんは私の勘違いを、優しい笑顔で聞き流して下さった。
「放射光普及棟」を出て車で走ると、いっそうスプリングエイトの広大さが実感できる。マイクロバスで視察に来たらしい団体や、社会見学風のグループなども見受けられるが、圧倒的に面積が広いため、静かでのんびりした雰囲気に包まれている。空はどこまでも遠く拡がり、小鳥のさえずりが聞こえ、風は緑の匂いがする。世界最大規模の光が生に出されているような仰々しさは、少しも感じられない。
「側面に青いラインの入った蒲鉾のような屋根の建物が線型加速器棟で、その右手前に一段下がって見えるのが、シンクロトン棟です。今、このあたりがSSBT、シンクロトン、ストレージング・ビーム・トランスポート、という名前の地下トンネルになっていて、蓄積リング棟へとつながっています。あちらは食堂です。前に盛り土がしてあって、実験施設が目に入りにくいようになっています。食事中くらいは、仕事場を忘れようということです」
どの施設にも無駄がない。媚びたところがない。自分に与えられた役目をただ黙々と果たしているだけ、という潔さがある。
      ・
もう一度「放射光普及棟」へ戻り、今度は産業利用推進室長の古宮聡先生にお話を伺う。先生はスプリングエイトに提出される、さまざまな実験申請を審査したり、特に民間への利用を促進するためのお仕事をなさっていらっしゃる。
「ここは世界最先端の分析のツールです。今、48の実験施設が動いていますが、学術的な方面に限らず、ユーザーは実にいろいろな使い方を求めています。
ただスプリングエイトの一番の目的は、物質の構造を見ることです。光は波長が短いほど小さいものが見えます。放射光の中のX線は透過力があって、試料を破壊せず、更に波長が極めて短いため、物質を原子レベルで見ることができるんです」
光を生み出す電子のエネルギーが大きいほど、放射光の波長は短いものが多くなる。つまり原子を見ようと思ったら、8GeVのエネルギーが必要だった、ということだ。
「光は通常、反射、干渉します。湖に行くと、水面がキラキラして虹が見えることがありますが、あれは0.1とか0.01ミクロン(1ミクロンは1000分1ミリメートル)ほどの薄い油の被膜ができているんです。そして表面から反射した光と、油の下にある水から反射した光が、波で干渉して、虹のようにずれるんです。それが光の干渉と言われる現象です。 湖の虹は0.1、0.01ミクロンの話でしたが、原子と原子の間隔はどんな材料でも、0.2ナノメートル(1ナノメートルは100万分1ミリメートル)ぐらいです。これがX線の波長と同じなんです。非常に短い波長と原子の間隔が、ちょうど干渉に合うようなサイズになっている。だから、原子と原子の相関が見られるのです。まあそれを、原子が見られる、と粗く言ってしまっているわけです」
      ・
外観の簡潔さに比べ、当然ながら内部は複雑な機械が複雑に組み合わさり、精密な雰囲気に満ちあふれている。エネルギーやリングの大きさばかり目を奪われてきたが、やはり原子の世界への道を支えているのは、こうした精密さなのかもしれない。
私たちは1436メートルあるリングの中を、ただひたすらに歩く。コンテナのような実験ハッチが連なり、ポツポツと実験中の人たちの姿が見える。あちらこちらに自転車が止めてある。もう半分くらいは歩いたかなあと思っていると、古宮先生が私の心を鋭く見抜き、「まだ4分の1も来ていませんからね」と言って」微笑む。
「ここのビームラインでは……」
先生はとある実験ハッチの前で立ち止まる。
「民間の複数のメーカーが混成チームを組んでやっています。各社タイムシュアリングして自分たちの実験をするんです。アメリカでは日本と違って、メーカーが自分たちだけで研究、開発、商品化と運営していく例はありません。完全に産学共同です。大学と組んでものを作ってゆきます。当然、お金は民間が負担する。日本では産学共同はあまりうまく機能していなくて、スプリングエイトでも民間が直接使用に来ます。2004年、年間に民間の人が延べで2000人、ここを使いにいらっしゃいました。そのあたり国によってかなり違います。 いずれにしてもこうしたビームラインが48本、ずらーっとリング状に並んで、目的に合わせ、24時間稼働しているという状況です」
1つ意外に感じたのは、常に何か音が響いていて、結構うるさいことだった。光を相手にする実験なので、シーンとした場所をイメージしていたのだが。
「多くはモーターの音ですね。X線の密度が高いということは温度が上がることなので、それを冷やすため、液体窒素を循環させています。その循環系のポンプの音、あるいはパイプを真空にするためのポンプの音です。これがワンフロアでぶっ通しに鳴っています。うまくデータが出た時には気にならないんですが、うまくいかない時はやっぱりイライラしますね」
確かにそこにはあまりにも日常からかけ離れた場所である。とにかく窓がないので、外の世界から隔絶されている。データを分析しているらしい机にも、やたらとスイッチが並ぶいかめしい機械が置かれているだけで、花瓶に生けた一輪の花や、家族の写真や、食べかけのお菓子や、そんなちょっとした日常のかけらも見つけられない。
そこで黙々と仕事に没頭している人の姿がある。私は邪魔にならないよう、そっと後ろから様子をうかがう。その人が何をしているのか、内容について私は何も理解できない。けれどその人が、人類を世界の最小部分に導くため、懸命に目を凝らしているのだ、ということだけは分かる。世界の秘密を”見たい”と願う人間の健気さが、背中にあふれている。

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どうでもいい、じじぃの日記。
http://space.geocities.jp/hhiratsuka2005/
小川洋子著 『科学の扉をノックする』という本を見ていたら、「微小な世界を映し出す巨大な目」があった。
「原子と原子の間隔はどんな材料でも、0.2ナノメートル(1ナノメートルは100万分1ミリメートル)ぐらいです。これがX線の波長と同じなんです。非常に短い波長と原子の間隔が、ちょうど干渉に合うようなサイズになっている。だから、原子と原子の相関が見られるのです。まあそれを、原子が見られる、と粗く言ってしまっているわけです」
そうかあ。X線可視光線と同じ電磁波の一種だが、X線はその波長領域が約 0.1 ナノメートルとちょうど原子と原子の間隔と同じになるんだ。
兵庫県播磨に建設されたX線自由電子レーザー(XFEL)施設が今年3月に運用開始された。
SACLAはXFEL施設の名称で、実験設備の一部をスプリング8と共用している。これまで人間が造り出した光で最も明るい光はスプリング8の放射光といわれてきたが、XFELの光はスプリング8と比べて10億倍の明るさのX線レーザーが実現した。
XFEL、スプリング8で何ができるか?
去年12月に発行されたアメリカの科学雑誌『Science』に、2011年の大発見という特集が組まれた。その1つとして選ばれた発見は「Plant Life's Boxy Heart (植物を生かしているのは箱型の心臓)」だった。「箱型の心臓」とは光合成を起こすこの酵素のことだ。箱のような酵素の形をつきとめたのがスプリング8だった。
スプリング8では太陽光の1億倍明るい強力なX線を使って、これまで見ることができなかった電池内でのリチウムイオンの動きを観察したり、劣化する際の構造変化の様子を解析したりすることができる。電池の大幅な向上を目指すためには、電池の内部で何が行われているのか、正確に知る必要があるのだ。
XFEL施設は世界にどれだけあるのか?
「XFEL」をキーに検索してみた。
アメリカの「SLAC」 スラック国立加速器研究所(カリフォルニア州
 サンフランシスコから車で1時間に位置するスタンフォード大学が、「スタンフォード線形加速器センター」として設立した研究所だった。しかし、2008年からは国立研究所としてアメリカ国立エネルギー省(DOE)の所有となっている。全長3kmの線形加速器を使って素粒子物理学の研究が行われるとともに、放射光施設(Stanford Synchrotron Radiation Laboratory, SSRL)においては物質科学、生物学の研究も行われている。SLACにおける実験は物理学の発展に大きく寄与してきた。今までに、チャームクォークの発見、核子クォーク構造の発見、タウ粒子の発見の3つの業績に対し、それぞれ1973年、1990年、1995年にノーベル賞が与えられている。現在では、素粒子物理学の BaBar 実験、素粒子論的宇宙論の GLAST(Gamma Ray Large Area Space Telescope)計11画、線形加速器を利用して自由電子X 線レーザーを建設するLCLS(Linac Coherent Light Source)計画などの実験・計画が進められている。
・ドイツの「DESY」 ドイツ電子シンクロトロン研究所ハンブルク
 ドイツ北部、ハンブルクの住宅地の中にあるこの研究所では、電子・陽子衝突型加速器(HERA)によって素粒子物理の研究が行われている。超伝導試験施設(KEK)はHERAを使った国際共同実験ZEUSグループの中核として重要な役割を果たした。ここにある放射光施設(HASYLAB)で物質科学、生物学などの研究が行われている。
・その他(韓国・スイス)
 韓国、スイスが、日本のSACLAを参考に、XFEL施設を計画中。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/news/2012/may/fea_01.html
最大の敵はどいつだ? アメリカとドイツだ。
「そこで黙々と仕事に没頭している人の姿がある。私は邪魔にならないよう、そっと後ろから様子をうかがう。その人が何をしているのか、内容について私は何も理解できない。けれどその人が、人類を世界の最小部分に導くため、懸命に目を凝らしているのだ、ということだけは分かる。世界の秘密を”見たい”と願う人間の健気さが、背中にあふれている」
じじぃも、そっと、見守るだけだ。