じじぃの「科学・芸術_389_ヒトの秘密・夫婦の起源と性の不思議」

Are any Animals Truly Monogamous? 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bxQdLhOQf5c

 愛

ダイアモンド博士の“ヒトの秘密 「5 夫婦の起源 性の不思議」 2018年2月2日 NHK Eテレ
第5回のテーマは夫婦関係について。
ヒトや動物は、パートナーを見つけ、出来るだけ多くの子孫を残そうと手をつくす。中でもヒトは、ほかの動物とは大きく異なる夫婦関係を築いてきた。果たしてその関係は、ヒトの発展にどのように貢献したのか。ダイアモンド博士が夫婦関係をめぐる進化の謎を解き明かす。
さて、モラルについて話しましょう。
これは進化を強く意識する生物学者をいらつかせる問題です。
進化は物事がなぜそうなったのかを、結果から教えてくれます。進化の道理は生き延びて子孫を残すことを最優先してしまう。
そこには、目的とか選択という概念がありません。
例えば、男性はより多くの遺伝子を残すために浮気をしたりします。ただし、捕まって死んだら遺伝子どころじゃないので気をつけて行ないます。
そして、進化の理屈に従えば女性も金持ちで権力のある男性と浮気して暮らしを安定させるべきとなる。
さらには、相手の資源を奪いとるため、ヒトを殺すべき、という具合に。
でも、私たちヒトは必ずしも進化の理屈につき従う必要はありません。倫理的な行動をすることができる。
私たちは遺伝子の奴隷ではないのです。
進化の論理だけに従って浮気や殺人をしたら、「ひとでなし」と言われるでしょう。
それこそが、人間と動物が大きく違うところです。
私たちは倫理に基づいた選択をすることができます。道徳的な判断は進化の利益を超えることができるのです。
http://www4.nhk.or.jp/diamond-hakushi/x/2018-02-02/31/17900/2753025/
『若い読者のための第3のチンパンジー ジャレド・ダイアモンド/著、秋山勝/訳 草思社文庫 2017年発行
食性と家族生活 より
ヒトの子どもの場合、狩猟採集民として独り立ちするには、何年もかけて必要な情報や経験を学ばなくてはならなかった。現代でも、農業を営んだり、コンピューター・プログラマーになろうとしたりするのであれば、何年もかけていろいろなことを学ぶのとまったく変わらない。離乳(母親の母乳を飲むのをやめて、食べ物を口にしはじめる)を終えたあとも、ヒトの子どもはまったくなにも知らない無力な存在で、自分自身の面倒をみることさえできない。食事も親がもってくる食べ物にたよっている。だが、私たちにはごく自然に思えても、これは霊長類の世界では例外的で、類人猿の子どもは離乳と同時に自分のエサは、一人で集めるようになる。
食べ物を集めることに関してヒトの子どもはまったく無力だが、それには理由が2つある。ひとつは、身体の機能的な問題だ。食べ物を集めるために必要な道具を作ったり、使いこなせるようになるには手先の器用さが欠かせず、そうなるにしても何年もの時間がかかるからである。私の息子は4歳まで一人で靴ひもを結べなかったが、それとまったく同じように、4歳の狩猟採集民には、石斧の刃を研いたり、漁に必要な丸木舟をくり抜いたりするなどできない相談である。
2つ目はの理由は知的な面に関連している。食べ物を探す場合、ヒトはほかのどのような動物にもまして頭脳にたよっているが、それは人間がどの動物よりもはるかに多彩なものを口にして、食べ物の獲得の点においても、より複雑な方法を使っているからである。私が一緒に働いたニューギニアの人たちは、自分の周囲に存在する約1000種もの動植物のそれぞれに名前をつけているのが普通だった。いずれの動植物についても、どこにいけば見つかり、それが食べられるのかどうか、あるいは別の用途があるのか、その捕獲法、採集法をめぐるなにがしかのことに通じていた。
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狩猟採集民のヒトの父親の場合、さらにこれ以上の世話を焼き、食べ物をもってきてやったり、たくさんのことを子どもに教える。ヒトの食物獲得の方法は複雑で、実行するには社会的な組織が欠かせず、そうした組織では、ヒトの男性は一人の女性と長期にわたる関係を続けていけるので、男性も2人の子どもの世話を手助けすることができるのだ。そうでなくては、子どもが生存する可能性は損なわれ、父親も自分の遺伝子を残すことが難しくなるおそれがある。
浮気の科学 より
ヒトが配偶者を選ぶシステムは、子どもをともに育て、永続する絆を結ぶ男性と女性の2人に基礎が置かれている。霊長類としてもう一種、一夫一妻の絆を維持しているのがテナガザルだ。しかし、その配偶者システムは人間とは異なっている。テナガザルの夫婦は仲間とは別に単独で生活を送り、集団や社会のなかでは生きていないからである。夫婦の絆を結んだテナガザルは、その相手以外のテナガザルと交尾することはない。
人間の場合、夫婦は社会的な集団のなかで生活をしていて集団から孤立はしていない。そして、配偶者以外の人間との性交渉をもつ場合も少なくない。結婚をしている者が配偶者以外の相手と性交渉をもつのが浮気で、婚外セックス(EMS)と呼ばれ、”正常”なパターンである夫婦間の性交渉からすれば例外的な存在である。
浮気は、悲痛な出来事で生活をだいなしにするような問題だ。それにもかかわらず、ヒトはなぜそんな行為に走るのだろう。そして、ほかの行動様式のように、浮気もまた進化の点から検討してみることが可能だ。進化生物学の考えに基づいて、動物全体に通じるパターンで持たときのことを思い返してほしい。進化もまた人間を行動へと駆り立てる力のひとつにすぎなかった。
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こうした生物学的な違いが意味するのは、婚外セックスを繰り返すことで、男性は女性よりも多くの利益を潜在的に得ることができるという点だ。もっとも、残した子どもの数が成功を計る唯一の基準であるとすればの話である。しかし、このことは、男性が婚外セックスを求めるひとつの理由にはなりそうだ。女性の場合はどうしてこうした行動におよぶのだろう。世界の各地で調査した結果、女性が婚外セックスを求める理由には、結婚した相手に対する不満や、永続的な新たな関係を見つけたいと願っているという理由が少なくなかった。
とはいえ、だからといって婚外セックスが”きわめて自然”だとして認められるべきものだろうか。もちろん、そんなことはない。ある行動様式を理解したり、解き明かしたりすることは、その行動を擁護したり、認めたりすることを意味しない。人類の全行動の、進化の勢いに駆られてのものだと要約することはできない。私たち人間はほかの目的も選びとることができるのである。