じじぃの「科学・芸術_436_等価原理・E=mc2」

NHK 100分de名著 アインシュタイン相対性理論』 第3回 動画 Dailymotion
http://www.dailymotion.com/video/x2clcii_nhk-100%E5%88%86-de-%E5%90%8D%E8%91%97-%E7%89%B9%E6%AE%8A-%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E6%80%A7-%E7%90%86%E8%AB%96-1-6-%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%81%AF-%E4%BD%95%E8%80%85_school

電車の中で落下するボール A FALLLING BALL IN A TRAIN
http://matseye.blogspot.jp/2013/01/a-fallling-ball-in-train.html
時空 コトバンク より
縦、横、高さの3次元をもつ空間に、時間も加えた4次元の座標で表される広義の空間。
特殊相対論では、時間と空間は不可分、同格で、この時空をミンコフスキー空間と呼ぶ。光はこの空間の光円錐に沿ってまっすぐ進み、物体はこの円錐の内側を動く。その道筋が世界線

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『なぜE=mc2なのか?』 ブライアン・コックス、ジェフ・フォーショー/著、柴田裕之/訳 紀伊国屋書店 2011年発行
等価原理 より
特殊相対性理論(E=mc2)へと向かうアインシュタインの旅は1つの単純な疑問から始まった。光の速さがすべての観察者にとって同じだとしたら、それは何を意味するのだろうか? 一般相対性理論へと向かう、さらに紆余曲折の多い旅も、やはり単純な観察から始まった。彼はその観察結果に心から感動し、その真の意義に気づくまで研究の手を休められなかった。その観察結果とは、あらゆるものは同じ加速度で地面に落ちるという、ただそれだけのものだ……が、これにアインシュタインは胸を躍らせたのだ! アインシュタインのような頭脳がなければ、このような、一見どうということもない事実が、じつに深遠な意味合いを持ちうるのに気づかないだろう。
実際、これは物理学では有名な事実で、アインシュタインが現れるずっと前から知られていた。最初にそれに気づいたのはガリレオだということになっている。言い伝えによると、彼はピサの斜塔に登り、重さの違う2つの球を塔のてっぺんから落とし、それらが同時に地面に落ちるのを観察した。彼が実際にその実験を行ったかどうかは、本当はどうでもいい。肝心なのは、彼がどのような結果になるかを正しく認識していたことだ。
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あなたが静止しているエレベーターの中に立っているとしよう。足はエレベーター床にしっかりと体重を伝え、頭の重みは肩にかかっている。胃は体の中の定位置にある。今、不運にも、ケーブルが切られて、エレベーターが一直線に落ちているところを想像してほしい。すべてのものが同じ速度で落ちるので、もはや足からエレベーターの床へは体重はかからないし、頭も肩に重みを伝えない。そして胃は体の中で浮かんでいる。ようするに、あなたは体重がなくなる。これは大変なことだ。まさに誰かが重力を止めたようなものだからだ。
宇宙空間で浮かんでいる宇宙飛行士もちょうどこれと同じように感じるだろう。もう少し正確に言うと、エレベーターが落ちているときに、その中で行える実験で、あなたが地球の中心に向かって真っ直ぐに落ちているのか、宇宙空間に浮かんでいるのかを識別できるものはない。もちろん、エレベーターに乗り込んだのだから、あなたにはその答えはわかっているし、階数を表す数字は「1」に向かって恐ろしい勢いで変っているかもしれないけれど、それはどうでもいい。大事なのは、どちらの状況でも物理学の法則がまったく同じであることだ。その点にアインシュタインはとても深く感動した。この自由落下の普遍性には名前がつけられている。等価原理だ。
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ここで重力と時空の話に戻ろう。曲がった時空を通る直線という概念は、地表の直線という概念と完全に呼応している。厄介なのは、時空が4次元の「表面」であるのに対して、地表は2次元でしかない点だ。だが、ここでもまた、理解しにくいのは数学的に複雑だからではなく、私たちの想像力に限界がるからだ。実際、球体の表面における幾何学的計算は時空での幾何学的計算より難しいことはない。時空での直線という概念(その直線は「測地線」とも言われる)を使い、重力がどう働くは、思い切って説明を試みよう。
曲がった時空と引き換えに重力を消し去ることができ、時空は局所的にミンコフスキーの「平らな」時空となることはすでに見た。本書もここまでくれば、そのような状況でもものがどう動くかははっきりわかっている。たとえば、もし素粒子が静止していたら、(何かが現れて押したり引いたりしないかぎり)そのまま動かない。それは、時間軸にだけ沿って動く時空の軌跡をたどるということだ。同様に、一定の速さで動いているものは、(これもまた、何かがやってきて方向を逸らさないかぎり)同じ向きに同じ速さで動き続ける。この場合、それは時空図で時間軸から離れていく直線をたどる。だから、時空のそれぞれの小さな断片上では、外から影響を受けないかぎり、どんなものも一直線に動くはずだ。
小さな断片をすべてつなぎ合わせたときに重力の全貌が見えてくる。そのとき初めて、個々の線が結びついて、太陽の周りの惑星の軌道のように、もっと興味深いものになるからだ。時空の歪みを作るために断片をつなぎ合わせる方法は、まだ述べていない。私たちがそれをどのようにやるかを厳密に定めているのがアインシュタインの1915年の方程式(一般相対性理論)だ。だが、肝心の部分はこの上なく単純であり、重力は純粋に幾何学的な性質と引き換えに捨て去られたのだった。
だから、重力は幾何学的性質で、時空ではあらゆるものがコースから押し出されないかぎり直線に沿って動く。だが、時空のどの点をとっても、側地線が無限にある。地表の(あるいは、さらに言えば他のどんな表面でも)どの点にも、それを通る直線が無限にあるのとちょうど同じだ。すると、私たちはものが時空のどの軌道に沿って動くのかをどう突き止めればいいのか?
答えは単純そのもので、状況次第なのだ。たとえば、地球を1周しようという人は、どちらに向かって出発してもいい。本人が、どのルートをとるかを決める。同様に、静止状態から地球の近くで落とされたものは、ある時空の側地線に沿って動き出し、投げられたものは別の側地線に沿って動き出すだろう。特定に場所でものが時空を進む方向を指定すれば、私たちにはその全軌道がわかる。さらに、その方向に向かっているものはすべて、内部の特性(質量や電荷など)にかかわらず必ず同じ軌道をたどる。ただ真っ直ぐに進む。それだけのことだ。このように、曲がった時空という観点から重力を眺めると、アインシュタインをすっかり魅了した等価原理を見事に表せる。