じじぃの「ハシビロコウの巨大な足拓!動物園ではたらく」

掛川花鳥園ハシビロコウ 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=saaRyCB3U80
 ハシビロコウ

『動物園ではたらく』 小宮輝之/著 イースト新書Q 2017年発行
物足りなさから始めた糞と足拓あつめ より
糞のデータ収集を行っていたころ、野性動物を観察していて、さまざまな痕跡にも興味を持つようになりました。痕跡には、糞や食痕、骨や毛といった死体の一部、足跡、爪跡などがあります。クマの爪跡とかシカが樹皮を剥いで食べた痕などを見つけましたが、よく見つけたのは足跡でした。どこからどこへ行ったかとか、走っていたか歩いていたかとか、通ったばかりか、親子だったかなど足跡たちの動きを想像したものです。
野外で見つけてわからなかった足跡は写真に撮り、職場に持ち帰り、動物園で飼っている動物の足跡と比較して調べました。そのうち動物の「足拓(あしたく)」を採っておけば、野山での同定に役立つのではと気づきました。
多摩動物公園の飼育係になりたてのころ、担当になったヤクシカの足跡を探して園内を歩きまわったことを思いだします。広い園内に潜んだヤクシカを捕獲するための足跡探しが、飼育係としての最初の仕事のひとつだったのです。
ヤクシカの足跡を探していると、タヌキ、イタチ、アカネズミなどの足跡もあることがわかり、園内の野性動物の存在に気づきました。あのころのことを思いだしては、足跡の写真をもっと前からちゃんと撮っておけばよかったのにと後悔しました。
こうした経験から、糞撮影に続き、なにか直接動物と関わりあいたいと思って閃いたのが、足拓の採取でした。足拓という言葉も魚拓をもじって浮かんだ私の造語です。いま思えば、野外で見つけた足跡の正体を知りたいという好奇心と、野外で拾ったり、動物園で死んだりした死体から少しでも情報を残さねば、もったいないし、動物たちも浮かばれないと思う気持ちがあってはじめた気がします。
足拓を採るのは簡単で、足の裏に墨を塗るか、黒いスタンプ台に足の裏をすりつけて、紙に押しつけるだけです。大きな動物には墨を使い、小さな動物はスタンプ台で採ります。
墨のつけ方にはコツがあり、あまりたっぷりつけると足の裏の微妙な線やくぼみがうまく出ません。ウサギのように足の裏が毛で覆われている動物はなおさらで、墨をつけすぎると毛が墨を吸ってしまい、ただ紙の上に墨をこぼしたような足型しか採れないのです。
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鳥類で1番大きな足拓が採れたのは、ハシビロコウです。2002年にはじめてのハシビロコウ3羽をタンザニアから輸入し、じっとして動かない鳥として話題になりました。毎週のようにハシビロコウの撮影に訪ねる熱烈なハシビロコウファンのお客さんもでき、人気者になったのです。
ハシビロコウは湿原の水草の上にたたずみ、じっと動かずに水面を見ていて、ハイギョやナマズの魚影を見つけると大きなクチバシで一瞬にして捕らえます。水草の上に長い足指で立って獲物を待ち、水面を歩いているように水草の上を歩くこともできます。
ダチョウやヒクイドリでもA4の用紙で十分に足拓が採れますが、ハシビロコウは前の第3趾の爪先から、後ろの第1趾の爪先まで30cmもあり、B3用紙でないと入りきれないという唯一の鳥でした。
足拓も、ときどき役に立ちました。奈良文化財研究所の松井章先生からの要請でコウノトリ、タンチョウ、アオサギの足拓を送りました。大阪の池島・福万寺遺跡の弥生時代の水田跡から人と共に鳥の足跡が出土したので、種を特定する資料にしたいというのです。
洪水などで大量の土砂が堆積すると、きれいに動物や人の足跡が残るそうです。遺跡の足跡は足拓と照合されコウノトリとわかり、弥生時代からコウノトリは日本人と共生していたことが証明されました。

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どうでもいい、じじぃの日記。
ハシビロコウは湿原の水草の上にたたずみ、じっと動かずに水面を見ていて、ハイギョやナマズの魚影を見つけると大きなクチバシで一瞬にして捕らえます」
「進化」の本を見ていると、西洋人のなかには、人間が進化の頂点にいると考える学者がいるそうです。
ハシビロコウもまた、「じっとしている」という進化の頂点にいるんでしょうか。