じじぃの「中国で加速する研究・人の受精卵ゲノム編集は福音か厄災か?クリスパー(CRISPR)」

人間の 受精卵の 遺伝子 編集に 成功! アメリカ初! 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wKs_WAApqMA

ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」を用いて中国ではすでに86人の遺伝子改変が行われたことが判明 2018年01月23日 GIGAZINE
人間の遺伝子を改変する技術に対しては倫理面での問題が指摘されており、アメリカでは2017年にゲノム編集によるヒト受精卵の遺伝子改変がようやく実施されたのに対して、中国ではすでに3例の前例が報告されていました。しかし、実際には中国はもっと先を行っていて、2015年以降、86名に対してゲノム編集が施されていたことが明らかになりました。
他国では倫理的問題などによってヒトに対するゲノム編集には厳しい制限があるのですが、中国では当局による規制が行われていないどころか、2016年からは国の五ヵ年計画の中に「ゲノム編集」が組み込まれており、むしろ推進する方向にあるようです。実際、この五ヵ年計画が打ち出されて以降に実施例が急増しています。
有効な治療法の見つかっていない疾病に対して、ゲノム編集による打開が期待される一方で、大きな不利益を被る可能性も考えられるため、科学者たちは懸念を示しているとのことです。
https://gigazine.net/news/20180123-china-gene-edit-crispr/
『CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』 ジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スターンバーグ/著, 櫻井祐子/訳 文藝春秋 2017年発行
福音か厄災か? より
私が臨床目的でヒト生殖細胞系の遺伝子実験を自粛するよう呼びかけることを思い立ったのは、まさにこうした安全上のリスクを懸念してのことだった。たしかに中国広州にある中山大学の黄軍就のチームもこの技術が完璧にはほど遠いことを認め、臨床応用がなされる前に「CRISPR-Cas9プラットフォームの信頼性と特異性をいっそう高めることが急務」だとしている。とはいえ、この研究によって私たちが一線をまたいでしまったことは、紛れもない事実だった。実験室でヒト生殖細胞系の遺伝子編集がなされた今、臨床の場で使われるのは時間の問題だろうと私は考えた。
少なくともこのケースでは、黄のチームは実験によってCRISPRベビーが生まれることがないよう、三倍体のヒト胚をあえて使用した。染色体が通常の2セット(23本の染色体が2セットずつの計46本)でなく3セット(計69本)ある、生存能力のない胚で、体外受精では三倍体の胚は見分けやすいため移植前に廃棄される。
黄のチームは、こうした生存能力のない胚を、CRISPRの有効性をテストするのにうってつけのモデルと考えた。実験の目的からすれば、三倍体の胚は生存能力を有する通常の胚と何ら変わりはない。もともと廃棄されるはずの三倍体の胚を用いることで、人の命をないがしろにしているという批判をあらかじめ巧妙に回避できるというわけだ。また研究チームは胚の提供者の明確な同意を得、所属機関の倫理委員会から実験の承認を取りつけ、中国の既存の規制を完全に遵守したうえで実験を行っていた。そしてこのような実験は、アメリカで行われたとしても合法と認められることを、私は知っていた。
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生殖細胞系の遺伝子編集を、各界の指導者が危機かんをもって受けとめていることを知って胸をなで下ろす一方で、WTA(Whole Transcriptome Analysis)の脅威評価の警告には衝撃を受けた。私自身がCRISPRを悪用する可能性や、ならず者の科学者が行いそうなことを考え、ヒトラーが技術を手にいれようとしているという悪夢さえ見た。だが、もしも今生きている独裁者やテロリストが邪悪な目的のためにCRISPRの悪用を試みたらどうなるのだろう? 彼らを阻止する手立てはあるだろうか? それに、自然界をよりよく理解し人間の生活を豊かにしたいという願いから生まれた自分自身の研究が、逆に人間を傷つけるために使われたことを知りながら生きていくのはどんなにつらいことだろうと考えた。
私はまた、CRISPRを使った初のヒト胚の遺伝子編集への反応が、一概に否定的でなかったことにも驚いていた。2015年6月に、著名な哲学者で生命倫理学者のジュリアン・サバレスキュらが、数ヵ月前に黄の研究を掲載したのと同じ学術誌に論説を寄せ、このような実験を積極的に推進し続けることが道義的に求められると述べた。彼らは遺伝子編集が「遺伝性の出生異常を事実上根絶」し、慢性病の悪影響を大幅に軽減できることを(過度に単純化して)指摘した上で、次のように主張する。「命を救うための研究を故意に自粛するする人たちは、研究の恩恵を受けられたはずの人たちの予測可能な死に大して、道義的責任を問われる。遺伝子編集の研究を行わないという選択肢はありえない。それは道義的必要である」。そのひと月後、ハーバードの著名な研究者スティーブン・ビンカーが「ボストン・グローブ」紙に寄せた意見論文で、CRISPRなどの最新のバイオテクノロジー技術への慎重すぎる反応に不満を表明した。そして融通の利かない手続きや厳格な規制を導入するのではなく、「今日の生命倫理学が果たすべき最も重要な道義的目標は、このひと言に尽きる。『邪魔をするな』」と述べている。

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どうでもいい、じじぃの日記。
『CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』の著者ジェニファー・ダウドさんは2017年の化学賞、または生理学・医学賞のノーベル受賞候補に挙がった女性だ。
それだけ、「ゲノムを編集する技術 CRISPR/Cas9(クリスパー・キャス・ナイン)」の衝撃は大きかった。
中国では生物を対象にする専門家、学生の間で、このCRISPR/Cas9は必須科目になっているのだそうだ。
「今日の生命倫理学が果たすべき最も重要な道義的目標は、このひと言に尽きる。『邪魔をするな』」と述べている。
「受精卵のゲノム編集」について、生命倫理学上問題があるのは分かるが、それを待ち望んでいる難病の患者がいることも事実だ。