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老兵は黙って去りゆくのみ

2018-11-09

じじぃの「科学・芸術_659_ミトコンドリア病・老化説」

06:10

アンチエイジングの鍵を握るミトコンドリア 動画 YouTube

http://www.youtube.com/watch?v=KQ-enWql0j0&feature=related

 哺乳類の体重と代謝量の関係

NHKドキュメンタリー 時空を超えて 「死からよみがえることはできるか?」 2015年7月2日

【語り】モーガン・フリーマン (2012年 アメリカ製作)

死者のよみがえりは出来るのか。

ペンシルベニア大 蘇生科学センター ランス・ベッカーは死のシグナルがどこから発せられるのかを解明しようとしました。

注目したのは細胞内の代謝経路です。

全ての経路は細胞の中にあるミトコンドリアにつながっています。ミトコンドリアは人体のほとんどの細胞に存在する小さな器官です。栄養や酸素を取り込み化学エネルギーに変えます。

1つのミトコンドリアが制御不能になると死のシグナルが発せられ連鎖反応的に広がります。

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ミトコンドリアが進化を決めた』 ニック・レーン/著、斉藤隆央/訳 みすす書房 2007年発行

ミトコンドリア老化説 より

デナム・ハーマンは、生物学におけるフリーラジカル研究の草分けであり、1972年ミトコンドリア老化説を初めて提唱した。ハーマンの主張の核心は、「ミトコンドリアは、生体内における酸素フリーラジカルの主な発生源である」という単純なものだ。そんなフリーラジカルは破壊的な力をもち、DNAタンパク質、脂質の膜、炭水化物など、細胞を構成するさまざまな要素を攻撃する。これによる損傷の多くは、細胞の構成要素の世代交代によって、普通に修復したり部品を取り換えたりできるが、損傷のとくに起きやすい場所、なかでもミトコンドリア自体は、食事によって抗酸化物質を摂取するだけでは保護しにくい。したがって、ハーマンいわく、老化の速さと変性疾患の発症は、ミトコンドリアからのフリーラジカルの漏出速度と、損傷に対する細胞本体の保護・修復能力との複合的な要因で決まるはずなのである。

ハーマンの主張は、哺乳類代謝率と寿命との相関にもとづいている。彼はミトコンドリアのことをはっきり「生体時計」と呼んでいる。要するに、ハーマンによれば、代謝率が高いほど酸素消費量が多く、そのためフリーラジカルの生成も増すのである。

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ミトコンドリア病の最初の症例報告は、1959年になされている。ミトコンドリアDNAが発見される数年前のことだ。患者は、27歳のスウェーデン人女性で、ホルモンのバランスにはまったく問題がなかったにもかかわらず、代謝率はそれまでのヒトの記録にはないほど高かった。問題は、ミトコンドリアの制御の欠陥にあることがわかった。ATPを必要としないときでも、彼女のミトコンドリアはフル稼働で呼吸をしていたのだ。その結果、この女性は大食いなのにいつも痩せていて、冬でもだらだら汗を流していた。かわいそうに、医者にもどうしようもなかった彼女は、10年後に自殺してしまった。

その後の20年で、ほかにも多くの患者がミトコンドリア病と診断され、たいていは臨床的なデータや種々の検査結果にもとづいていた。たとえば、ミトコンドリアが正常に機能しないと多くの場合、安静時にでも乳酸(無酸素呼吸の産物)が血中にたまる。筋肉の生体組織検査では、筋線維の一部――一般にすべてではない――にひどい損傷が見るかることがままある。この部分は、組織標本を作る際に赤く染まるので、「赤色ぼろ線維」という。生化学的検査をおこなうと、この線維内のミトコンドリアでは、呼吸鎖中の末端酵素であるシトクロム酸化酵素が失われており、呼吸ができなくなっていることがわかる。

臨床的な面では、こうした報告は、たまに見られる科学的興味の対象にすぎなかった。しかし1981年から流れが変わった。その年、2度のノーベル賞受賞歴をもつフレデリック・サンガーが、彼の率いるケンブリッジ大学のチームとともに、ヒトのミトコンドリアゲノムの全配列を報告したのである。1980年代から1990年代にかけて、配列決定技術が向上するにしたがい、ミトコンドリア病と疑われる多くの患者のミトコンドリア遺伝子配列が決定できるようになった。結果は驚くべきものだった。ミトコンドリア病がどれほど多いか――5000人に1人がミトコンドリア病をもって生まれている――だけでなく、どれほど奇妙かもわかったのだ。ミトコンドリア病は通常の遺伝法則を無視している。その遺伝のパターンは特異で、メンデルの法則に従わない場合も多い。発症の時期は人によって数十年単位で異なり、ときには、この病気を(理論上は)受け継いだ「はず」の人で、病気が完全に消えていることもある。一般に、ミトコンドリア病は年齢とともに進行するため、20歳でほとんど問題のない人が、40歳になるころにはすっかり衰弱していることも考えられる。しかしこれ以上、一般に言えることはほとんどない。同じ変異をもつ人でも、影響を受ける組織はいろいろありえ、そうかと思えば、異なる変異が同じ組織に影響を与える場合も十分ある。正気でいたければ、ミトコンドリア病の教科書は読まないほうがいい。

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