踏みにじられた附帯決議

13日付けのエントリ(id:copyright:20041013#p2)で貸与権の交渉決裂について取り上げたが、これは非常に重大な事態である。
著作権改正法案の可決の際に、衆参両議院において附帯決議がなされている。その中で、貸与権に関する決議に次のものがある。

参議院附帯決議

七、書籍・雑誌に貸与権を付与するに当たっては、その趣旨にかんがみ、公正な使用料と適正な貸与禁止期間の設定によって許諾し円滑な利用秩序の形成を図るとともに、貸与権を管理する新たな機関が、権利者の保護と書籍等の円滑な利用の促進という要請にこたえることができるよう体制を整備すること。

衆議院附帯決議

 十一 書籍・雑誌の貸与権の行使に当たっては、公正な使用料と適正な貸与禁止期間の設定によって許諾し、円満な利用秩序の形成を図るよう配慮すること。また、権利者の利益の保護を図るとともに書籍・雑誌の円滑な利用の促進に資するため、書籍・雑誌の貸与権を管理する新たな機関の適切な運営及び環境の整備に努めること。

交渉決裂はこの附帯決議を踏みにじる行為だ。
著作権法改正案の審議課程において、附帯決議の持つ意味が問われたが、やはり附帯決議はこれほどまでに軽んじられている。
国会は国権の最高機関であるのだから、附帯決議の持つ意味は非常に大きいはずではないのか。
国会はこの附帯決議を踏みにじる行為に対して、もっともっと目を光らせるべきである。

出版界は民主主義を否定している

貸与権の交渉決裂で責められるべきは誰なのか。
もちろん文化庁は責められるべきであろうが、それ以上に責められるべきは権利者側だ。
具体的に言うと、貸与権連絡協議会を構成する次の団体とその会員である。

21世紀のコミック作家の著作権を考える会
社団法人 日本雑誌協会
日本児童出版美術家連盟
社団法人 日本児童文学者協会
社団法人 日本児童文芸家協会
有限責任中間法人 日本写真著作権協会
社団法人 日本出版取次協会
社団法人 日本書籍出版協会
日本書店商業組合連合会
社団法人 日本推理作家協会
日本美術著作権連合
社団法人 日本文芸家協会
社団法人 日本ペンクラブ

社団法人 日本漫画家協会
マンガジャパン

書籍・雑誌に貸与権を適用する際の条件として附帯決議がなされたのだから、貸与権を要求した側が附帯決議を守るべきなのだ。
しかし、貸与権の協議は決裂した。
附帯決議を守らなかったのは、いや踏みにじったのは権利者側なのだ。
上記の各団体は国権の最高機関である国会の決議を踏みにじったのだ。
上記の貸与権連絡協議会の構成団体およびその会員は、自分達が国権の最高機関である国会の決議を踏みにじっていること、民主主義を否定していることを自覚すべきだ。