デジタル複製と著作権

昨日と今日の朝日新聞に「デジタル複製と著作権 衝突する利益」という記事が掲載されています。

ファイル交換 自由と保護 揺れる着地点(デジタル複製と著作権 衝突する利益 上)
朝日新聞. 2005年7月20日(水)33面(文化総合)


補償金制度 矛盾浮き彫り 批判の声(デジタル複製と著作権 衝突する利益 下)
朝日新聞. 2005年7月21日(木)24面(文化総合)

「ファイル交換」の回では、WinMXの状況を紹介した後で慶應義塾大学の田中辰雄助教授のファイル交換はCDの売り上げに影響を与えないとの見解を紹介し、最後は北海道大学田村善之教授の

「デジタル社会の恩恵を享受することの足かせに、著作権法がなってはいけない」

との発言で終わっています。
「補償金制度」の回では、全体的に、権利強化の主張に対して批判的なスタンスで記事が書かれています。
7月16日付けのbe REPORTに続いて、良い記事が続きます。

なお、Library & Copyrightで「補償金制度」の回で取り上げている民主党大谷議員の質疑の内容を紹介しています

揺らぐ知力の基盤

Open Access Japanで紹介されていましたが、読売新聞の連載「揺らぐ知力の基盤」で学術雑誌の問題が取り上げられています。

Open Access Japan: 揺らぐ知力の基盤(読売新聞)
http://www.openaccessjapan.com/archives/2005/07/post_20.html

国際競争力欠く学術誌.( 揺らぐ知力の基盤13 国家戦略を考える)
読売新聞. 2005年7月20日(水)4面.

海外投稿“あおる”風潮. ( 揺らぐ知力の基盤14 国家戦略を考える)
読売新聞. 2005年7月21日(木)4面.

できれば海外の学術雑誌の価格高騰についても触れて欲しかったと思いますが、学術情報流通の問題点を指摘した、なかなか良い記事です。
ただ、読売だけでなく他の新聞もそうですが、ネイチャーやサイエンスに掲載された文献でないと、ほとんど取り上げられないという状況も、海外投稿をあおっているのではないでしょうか。

文字・活字文化振興法案と学術出版支援

読売新聞の「揺らぐ知力の基盤」を読んで、改めて思ったのですが、「文字・活字文化振興法案」に「学術出版支援」が盛り込まれているのに違和感を感じています。
「学術出版支援」は「文字・活字文化」というくくりの中で語るよりも、「学術情報発信」「学術情報流通」という中で語るべきだと思います。
「文字・活字文化振興法案」における「学術出版支援」はあくまでも「書籍」という形を前提にしているように思います。
しかし、学術情報というくくりの中で考えれば、「書籍」という形で発信される学術情報は「従」に過ぎず、「学術雑誌」が「主流」ではないかと思います。少なくともSTM(科学・技術・医学)の分野ではそうです。
しかし「文字・活字文化振興法案」の具体的な施策案の中で、学術雑誌への支援は考えられているのでしょうか。
学術情報発信・学術情報流通の推進という観点で考えれば、出版社への支援よりも学協会への支援を優先すべきだと思いますし、J-STAGEのような事業への投資も重要です。NII国際学術情報流通基盤整備事業も推進すべきです。また、学会事務センターの破綻によって被害を受けた学協会が、学術情報を継続して発信できるような支援策も必要だと思います。
「文字・活字文化」といった観点では、こういった発想は出て来にくいのではないでしょうか。
私は「文字・活字文化振興法案」から「学術出版支援」を削除して、別途「学術情報発信支援」「学術情報流通支援」という観点で新たな法律を作るべきだと思います。