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著作権保護期間の70年延長に反対
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2007-09-05

文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会傍聴記

半日休暇を取って、一昨日開催された文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第7回)を傍聴してきました。

一昨日の小委員会については、ITProとINTERNET Watch毎日新聞ユニバーサルサロンに記事が掲載されています。

一昨日の小委員会の内容は、ほぼ記事の通りだったと思いますので、是非ご一読下さい。

著作権の保護期間延長問題、権利者側への反論相次ぐ――文化審:ITpro

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070903/281069/

著作権保護期間の延長を巡る本格的な議論が開始、文化審議会小委

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/09/04/16786.html

ユニバーサロンリポート

著作権》議論空転、問われる審議会のあり方--文化庁過去の著作物等の保護と利用小委(第7回)

http://www.mainichi.co.jp/universalon/report/2007/0902.html

なお、ITProの記事は、都倉委員の発言を常世田委員の発言と間違って書かれていましたが、現在では都倉委員の発言であったとの訂正がなされています。訂正がされる前に読まれた方は、その点にはご留意いただきたいと思います。


先日のthik Cの公開トークイベントviol.4が開催されたときに、文化庁著作権課前課長の甲野氏が会場に来ていて、質疑の際に、「延長の議論は審議会でも民間でも行われているが、一般に低調である」という様な発言をされた。非常に官僚的な官尊民卑の発言ではあるが、残念ながら一昨日の小委員会での議論は「低調」と言わざるを得ないものだった。


その原因の大半は延長を唱える委員の側にあると思う。

一昨日の委員会で延長の立場から発言したのは、都倉俊一委員(作曲家社団法人日本音楽著作権協会理事)、三田誠広委員(社団法人日本文芸家協会常務理事・知的所有権委員会委員長)、瀬尾委員(有限責任中間法人日本写真著作権協会常務理事)、里中満智子員(漫画家)の4名。*1

一方、慎重・反対の立場で発言されたのは、中山信弘委員(東京大学教授)、津田大介委員(IT・音楽ジャーナリスト)、金正勲委員(慶應義塾大学准教授)、平田オリザ委員(劇作家・演出家)、上野達弘委員(立教大学准教授)。*2

現行の制度を変えようという時には、制度を変えたいと主張する側が、なぜ制度を変えなければならないのか、その必要性を説明する義務がある。現行の制度にどのような問題点があるのか、それはどの程度重要な問題なのか、それを解決するにはどのように制度を変える必要があるのか、制度を変えたらどのようなメリットがあるのか、同時にどのようなデメリットがあるのか、そしてそのデメリットを減少させるためにこういうことを行う必要がある、こういったことを、きちんと説明して、慎重派・反対派を説得する必要がある。

しかし、延長派の委員はこれらのことをやっているとは言い難い。

国際標準だとか、創作者へのリスペクトだとか、遺族だとか、理由にならないことを繰り返すばかり。

唯一、現行制度のままで行った場合の問題点としては、瀬尾委員が述べた「他国で保護期間が存続しているが日本では切れた著作物を、インターネットで配信した場合、問題になる」というのは、検討すべきものだと思うが、それ以外は理由にならない。

理由にならないことを主張するから、慎重派・反対派の委員からは疑問・反論が出されるが、それらに対する明解な答えを出さない。

それでは建設的な議論になるはずはない。

三田委員は、ITProやINTERNET Watchの記事でも紹介されているように、谷崎の著作権が切れる、横山大観著作権が切れる、配偶者が生存中に著作権が切れる、そういう個別の特殊例を繰り返すだけ。最後は、「延長に反対する人たちは、なんで延長してはいけないのか、そのことを説明して欲しい。」と延長を主張する側にある説明責任を、慎重・反対の側に転嫁する始末。

瀬尾委員は「個別のケースについて議論しても仕方がない、延長したほうが良いと思うから延長すべきだ」という理由にもならないことを述べる。

里中委員は「漫画家には退職金はない」「創作者の気持ち、人格権も大事にして欲しい」とこれまでの委員会で述べたことを繰り返し、中山委員が「延長問題は人格権ではなくて、財産権の問題、混同しないで欲しい」と前回と同じように注意する。

都倉委員は、「日本だけ保護期間が短いと、世界同時公開の時に日本だけ公開されなくなってしまう。」と述べ、それに対して平田委員から「そのようなケースは聞いたことがない、これまでにそのようなことがあったのか」と問われると、具体的な事例を紹介することなく「そういう可能性がある。」と述べるだけ。

これでは議論になるはずはない。


繰り返すが、建設的な議論を行うには、まず延長を主張する側が、

  • 現状の問題点
  • 延長しなければならない理由
  • 延長すると得られるメリット
  • 延長すると生じるデメリットとその解決策

を提示しなければならない。しかもこれらは思いこみでなくて、きちんとした根拠が必要だ。

そして、慎重・反対の側が、提示されたものに対する反論、疑問、対案などを提示する。

さらに延長派がそれに対して、きちんと答えていく。答えられないものに関しては取り下げる。

そういう議論を積み重ねていって、延長する必要があるのかどうかの結論が出てくると思う。

そうしない限り、ちゃんとした結論を出すことはできないだろう。

津田さんが委員になっている意義

一昨日の文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第7回)で、一番光っていたのは津田大介委員だと思う。延長を主張する側が色々なことを述べても、的確に、急所を突いて質問し、反論していた。津田委員と呼ぶとよそよそしいので、津田さんと呼ばせていただくが、傍聴していて、自分たちの代表がそこにいる、と実感した。

津田さんが的確な反論を即座にできたのは、津田さんがこの問題に対して非常に深い考察をされているからであるのは当然だが、津田さん個人の能力や努力だけでは無いと思う。ネット上には、著作権についての有意義な意見や発言がたくさんあふれている。著作権を扱うブロガーも少なくないし、そこで書かれていることは、きちんと考察された者も多い。津田さんの元にそれらの意見や発言が集まってきたり、津田さん自身が収集したりして、延長はの意見に対する的確な反論が既にストックされているのだと思う。だから、即座に反論できるのだと思う。

言い換えれば、ネットを津田さんのブレーンとしてフル活用されているのだと思う。

だから、自分たちの代表が発言しているんだ、と傍聴していて感じることができたのだと思う。

まさに、津田さんはエンドユーザーの代表なのだ。


思い起こせば、2004年の国会輸入権の議論がなされたとき、民主党城井崇議員(当時)が文部科学大臣に向かって「ブログって知ってますか」と質問をした。ブログを通じて輸入権反対運動が盛り上がっていると言うことが国会の審議の中で言及されたのだが、今国会議員を介さなくても、審議会の委員会の中に自分たちの代表がいて、自分達の声を代弁している。改正案が国会に出されてしまってはもう遅い、審議会の場でつぶしておかなければダメだ、と言うことを輸入権の時に思い知らされた。でも今は、津田さんを介して審議会の場に自分たちの意見が出される、反映される。これは本当に心強い。

津田さんが委員に入っている意義は本当に大きい。


そして、津田さんが委員に入っているのは、輸入権の時の反対運動があったからだ。あの反対運動が無ければ、ネット界隈の声を文化庁が聞こうとは思わなかったはずだ。

謎工さんを始め、多くの方の反対の声は決して無駄にはなっていない。

あの時蒔いた種がいま育ちつつあるのだと思う。

*1:ITProの記事を読み返したら、生野秀年委員(社団法人日本レコード協会専務理事)の発言も紹介されていた。自分の記憶には無いが、座席表を見ると、その席辺りの委員も発言していた記憶があるので、自分のメモのし忘れかもしれない。

*2:あと発言があったのは、大渕哲也主査(東京大学教授)、野村豊弘主査代理(学習院大学教授,学校法人学習院常務理事)、事務局。