ろんぐらいだぁす! 第12話

 雨でも走るのか。
 自分は割と雨だと意欲は無くなる。とはいえ、旅の途中なら「せっかく」来たんだからというのも大いにわかるところ。荷物も絞れというのも注意しないんだな。というか、失敗させてなぜダメなのかを説明する手法なんだろう。亜美が初心者だとわかっていてこれは無いだろうとは思うのだが、いちおう物語上の都合ということで。
 今回はちょっと駆け足気味で、とはいえさすがに今更観光地説明もないだろうというわけで、泊まり輪行のざっとした説明回としてはよくまとまっていたとはいえる。雨の日の注意が丁寧でこれも失敗させて対処方法を説明するという手法。本当の景色のほうがよいのだろうけど、走行風景もそれなりにきれいな描写。


 さて、こうやって終わってみるとちょっと自分的に鼻につくのは集団で走ることの持ち上げっぷりと、自転車による自己実現の強調っぷり。集団で走ることについてはもうこの作品の主張なんだと割り切るしかないかな。別にそういう主張がダメというわけでもなく、物語上一人で楽しむという筋立てにするわけにはいかないからお話としては順当。一人のみだと、なにかあったときの対応は全部ひとりでやらねばならず、長距離走行なら複数人数のほうが安全ってのも間違いない。特に初心者だと熟練者と一緒に走るほうが断然安心。一人で走るのなら、情報は十分に仕入れて徐々に距離を稼いでゆっくり熟練したらよいだけの話だからこれはこれでよいとは思う。
 自転車に乗ることにより、できない自分ができるようになるってのもちょっと言いすぎかなという気はする。弱ペでも運動神経が良くなくても自転車で輝くって感じのキャラがそれなりにいたが、なんというか自転車はよっぽどでない限り誰でも乗れる乗り物であって、なんか大げさなといった感じ。たしかに手軽だから運動が苦手な人でも楽しめますよ=ダメ人間御用達というのもあまりに消極的で、かといってやはり自転車で人間性が変わるってのもやり過ぎとは感じる。自転車はやはり道具なのであって、仮にできない自分ができるようになるってのもそれはそのキャラ自身による自己変革の結果であって自転車は単なる媒介でしかないという在り方のほうがバランスは良いという気がした。
 さて、自分が高校生の頃は友人が一週間ぐらいかけて自転車で一人旅をしてたというぐらいで個人的には通学に使う程度であったのだが、大学に入って俄然長距離乗りたいと思い、その方向性で乗ってきた。別に昔のことに詳しいわけでもないのだが、その頃はロードレースよりは、自転車をスポーツとして捉えている層は競輪方面に、楽しむ道具としては旅行に振れていたと思う。雑誌のサイクルスポーツでもロードレースの記事は自分が大学生の頃から増えてきた印象で、それまでは旅行記が主であったと思う。大学の自転車部はほとんどがランドナーというツーリング車主体の旅行って感じで、この作品はその流れに連なるのだと思う。が、やはり最近でこそ大学生も生活が苦しくてという流れになっているが、バブル直後からしばらくは贅沢な暮らしが続いており、大学生なのに自動車を持っていたりしてわざわざ自分の体を動かして旅行するってのは下火になっていたのだと思う。
 そういうわけで、サイクルスポーツ誌でも旅行記が減り、自分の中で自転車熱が再燃してしばらく立って出会ったのが同人誌のロングライダースだった。数冊買ってその後忘れてしまっていたのだが、おそらく原作漫画はそのへんの流れに沿って出てきたんだと思う。前にも述べたが、環境が変化してランドナーにサイドバッグを取り付けるというスタイルからロードレーサーで荷物はそれほど持たずにツーリングというスタイルが主流になって今一度整理したという形になるのかな。そういう視点で見たらこの作品の持つ意義はかなりあったのではないかと思う。ドラマとして面白いというものでもないが、とはいってもそれなりにまとまっているのでそのへん初心者向けの紹介モノとしてはよくできているというか。まぁテキストの出来は自分の予想の範疇を出ることはなかったのだが、意外にも個人的には楽しめてしまった。もしフレシュに出るまで話が進んだら続編は期待したい。
 あ、ちなみに亜美のロードはORBEAでなくてFOCUSが元ネタらしい。