氷は水より大きい 〜札幌市水道記念館〜


藻岩浄水場の隣に、札幌市水道記念館という水について展示している博物館がある。現在は改修のため休館中であるが、2007年度に再オープンの予定になっている。この記事では、北海道での生活に大きく影響している”水”について取上げてみることにする。


北海道の特徴として、厳寒であることが上げられる。冬には平年で、51日も一日中0℃以下の“真冬日”になる。気温が低いと水道管が破裂することがあるため、水道はたいてい水を抜く事ができる構造になっている。それでは、なぜ水が凍ると水道管が破裂するのであろうか?


氷は、水の温度が下がって固体になったものである。よく知られているように、(地上の圧力では)水は100℃で気体になり、0℃で固体になる。ここで気体というものは、粒子が自由に動き回っている状態(下図左)、液体は粒子があるお互い引き合いながら動き回っている状態(下図中央)、固体は粒子が動かないでくっつきあっている状態(下図右)である。


  • 気体と液体と固体の違い(実際は3次元)

 上図をみると、同じ量なら液体より固体の方が小さそうに思える。実際、自然にある物質の大部分は液体より固体の方が小さい。しかし、もし水より氷の方が小さいならば、水道管が凍っても破裂しないでへこむはずである。ここに、水の不思議な性質がある。


 実は水は、液体より固体の方が大きいという、たいへん珍しい特徴を持つ物質なのである。氷の結晶を拡大してみると、下図のように6角形になるようにつながっている。この6角形のすき間が大きい為、液体よりも大きくなってしまうのである。



  • 氷の構造(実際は3次元)


 気温が低いと水道管が破裂するのは、水が凍ると大きくなるためである。水が一番小さくなる温度は4℃で、それより温度が下がると逆に大きくなってしまう。水は身近なものであるが、固体になると大きくなるという自然界ではたいへん珍しい性質を持った物質なのである。


ところで余談であるが、氷は6角形の結晶になる性質をもっていることから、ときたま我々に美しい姿を見せてくれることがある。(下の写真) 運がよければ寒い日に6角形を基本とした美しい氷や雪にめぐり合えるかも知れない。


  • 寒い日の朝に筆者の車のガラス上にできた氷(撮影 2004年)

  • 寒い日に筆者の車に積もった雪。6角形が基になった形状が(あまり)崩れていない。(撮影 2004年)

【公式サイト】
札幌市水道記念館
http://www.city.sapporo.jp/suido/c23/index.html

(撮影・文・図 宮下 友則) UPDATE 2005/12/24 Ver 1.0