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お知らせ:2007年3月のCoSTEPウェブ実習の終了にともない、今後当サイトでは定期的なコンテンツの更新は行われません。
ただし今後も実習チームOB有志が、時折新しい記事を追加していく予定ですのでよろしくお願いします。(2007/6/21)

【News】(2008/2/6)優れたブログを紹介する「スゴブロ2008」ベスト20の第3位に選ばれました!
【News】(2007/3/14)『クックブック サイエンス観光マップのすすめ』の配布を開始しました。
【News】(2007/3/1)日経BPのサイト「セカンドステージ」に当サイトの紹介記事が載りました。
【News】(2007/2/7)2月1日の記事にて、公開記事数が100本になりました。
【News】(2007/1/5)はてなの 「こんな人も書いています」コーナーに掲載されました。



2006-07-30

[][] 薬になる植物園 〜北海道立衛生研究所薬用植物園〜  薬になる植物園 〜北海道立衛生研究所薬用植物園〜を含むブックマーク


北海道大学の北隣に北海道立衛生研究所があります。水や食品の安全性評価や、感染症や食中毒の調査研究など、私たちの健康な生活のための研究を行っている施設です。


敷地内には薬用植物園があります。


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  • 薬用植物園の入り口(2006年6月16日撮影)

 

この植物園は薬用植物の優良な遺伝資源の保存、調査研究材料の供給を目的として、昭和46年8月に設置されました。中へ入ってみると予想以上に広いことに驚かされます。約3000平方メートルの敷地内には温室もあり、約750種もの植物が栽培されています。


人間は昔から、食用、薬用、工芸など生活の中で幅広く植物を利用してきました。そのなかにはゲンノショウコやドクダミ、センブリなどのおなじみの薬草もあります。これらは「民間薬」と呼ばれるもので、その使い方や服用量に理論的な裏付けはありませんが、日本でも昔からの言い伝えに基づいて利用されてきました。


一方、中国で発達した「漢方薬」は、複数の薬草(生薬(しょうやく)*1)を数千年の歴史をもつ独特の理論に基づいて正確に混ぜ合わせたもので、症状や体質に応じて用いられます。


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  • 漢方薬の一種「葛根湯」に用いられる複数の生薬の組み合わせ(カッコン、タイソウ、マオウ、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ショウキョウ)(2006年7月28日撮影)


昔から経験的に知られている植物の効能や言い伝えを科学的に研究することによって、今まで知られていなかった新しい成分が発見されることもあります。このような有効成分が現代医学でも薬として使われたり、健康食品として利用されたりしています。特に、北海道では、アイヌの人達が伝統的に利用してきた植物の効能に注目した研究が行われています。この薬用植物園の中でも、そのような植物を観察することができます。


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  • 北海道の人達には春の山菜としておなじみのギョウジャニンニクも、アイヌの人達が薬用や食用として古くから使用してきました。(2006年6月26日撮影)


衛生研究所の研究室の中では北海道産の薬用植物の化学的品質評価と有効利用の研究が行われています。


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  • ずらりと並んだ薬用植物(生薬)(2006年7月28日撮影)

実は北海道はわが国有数の薬用植物の生産地なのです。現在、北海道では、トウキ、センキュウ、シャクヤク、ダイオウ、オタネニンジンなど漢方薬の原料となる10数種類の薬用植物が栽培されており、その生産高は国内の約1割を占めているということです。


さて、薬用植物といっても、地味な草木ばかりではなく、観賞用としておなじみの美しい花が咲くものもたくさんあります。園内では、6月にはシャクヤクの花が盛りを迎えます。


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  • シャクヤクの花(2006年6月26日撮影)

 


『立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)』と言われるほど美しい花の代名詞ともなっているシャクヤクですが、薬として役に立つのは根の部分です。痛みをとり、筋肉の緊張を緩和する作用があるので、腹痛や婦人病に用いられます。

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  • シャクヤクの根(2006年6月26日撮影)


道立衛生研究所薬用植物園は、5月から9月までは毎月、第1金曜日と第3金曜日に、一般公開しており、また定期的に「薬草観察会」も行っています。詳しい日程は衛生研究所のホームページに掲載されています。

http://www.iph.pref.hokkaido.jp/



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  • 薬草観察会の様子(2006年6月26日撮影)

観察会では衛生研究所の専門家が、ひとつひとつの植物について詳しく説明してくれます。季節ごとに違う植物を見ることができるため、毎回参加している人もいるようです。また、春の山菜の季節には、山菜と毒草の見分け方の講習会も開かれています。


普段、一般の人は入ることのできない研究所で、四季折々の花の美しさを楽しみながら、人間と植物との関わりについて学ぶことができるのは魅力的ですね。



(文・写真 山岸理恵子)


【謝辞】

北海道立衛生研究所食品薬品部薬用資源科長 姉帯正樹様にご協力いただきました。ありがとうございました。


北海道立衛生研究所

  • 住所   :札幌市北区北19条西12丁目
  • TEL  :011−747−2711
  • アクセス :地下鉄南北線 北18条駅下車 徒歩15分
  • 公式サイト:http://www.iph.pref.hokkaido.jp/

【参考文献】

  1. 北海道立衛生研究所パンフレット
  2. 北海道立衛生研究所ホームページ

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*1:薬草の薬用部位を調整加工(乾燥、切断、加熱、湯通しなど)したもののこと

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2006-07-25

[][] 樹齢120年の色香 〜宮部記念館前のライラック〜  樹齢120年の色香 〜宮部記念館前のライラック〜を含むブックマーク

 北大植物園の宮部記念館前には、1885年に日本で最初に持ち込まれたライラックが120年以上経った今も現存しています。

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[写真左]宮部記念館(手前がライラックの木) 2006年7月23日筆者撮影  

[右]ライラックの花  提供:「ようこそさっぽろ」 http://www.welcome.city.sapporo.jp/ 


 昭和35年に札幌市の花に選ばれたライラック(仏名:リラ、別名:ムラサキハシドイ、紫丁香花)は、5月下旬から6月にかけて、北海道を彩ります。この時期は日増しに気温が上がりますが、ライラックが満開に咲く頃、一時的な寒の戻りがあります。これを、札幌市民は「リラ冷え」と呼んでいます。

「リラ冷え」という言葉、もともとは札幌の初夏をあらわす俳句の季語として生まれました。しかし、今ではすっかり生活語として定着し、札幌では桜の時期の「花冷え」よりも多く使われているようです。


 この「リラ冷え」、気象学的にどのような現象なのでしょうか?札幌管区気象台業務課の三浦郁夫さんに聞いてみました。

リラ冷えの原因にはいろいろあるそうですが、典型的なものとしては、寒冷前線あるいはオホーツク海高気圧により、冷たい空気が札幌に入り込むことが挙げられるそうです。

また、一例として、平成18年5月25日と6月11日の天気図を比較して説明してくれました。


 まずは5月25日の気象衛星画像と天気図です。

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資料提供:札幌管区気象台 http://www.sapporo-jma.go.jp/


 寒冷前線が日本の南東の沖に達しており、日本の北側から冷たい空気が日本海を通って、札幌平野に入ってきています。札幌は西に山がありますが、北は開けていますので、札幌では晴れているのに最高気温17度までしか上昇せず、文字通り「リラ」が咲く中での「冷え」となりました。


 次に6月の気象衛星画像と天気図をみて見ましょう。

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資料提供:札幌管区気象台 http://www.sapporo-jma.go.jp/


 北海道の北東に位置する高気圧がオホーツク海高気圧と呼ばれる高気圧で、この時期にはよく見られる高気圧です。このオホーツク海高気圧から吹き込んでくる冷たい北東の風が、気温が下がる原因となります。この日には東京のあたりまで高気圧の影響がありました。札幌では最高19度、東京では22度という涼しい一日でした。


 寒冷前線や高気圧は、地球の自転や、極と赤道付近の気温の差により、極付近の冷たい空気と赤道付近の暖かい空気が入り混じること(大気大循環といいます)によって発生します。特に、寒冷前線は、地球を取り巻く大気の極地方と赤道地域の熱交換の最先端であるといえます。気圧の差により風が吹くのですが、想像してみると、自然のエネルギーというか、偉大さを感じずにはいられません。


 三浦さんのお話によると、この二つ以外にもリラ冷えとなる原因はいろいろあって、毎回同じ原因ではないということでした。いずれにしても、5月に一度25度以上まで暖かくなった後に涼しい気温になることを、札幌に住む私たちはよく体験しています。今年は5月16,17,18日に25度以上の夏日が続いたあと、しばらく20度を超える日はありませんでした。


 三浦さんはさらに面白い事を教えてくれました。

 「春一番」や「小春日和」は気象用語として定義がありますが、リラ冷えは定義づけされていないそうです。ちなみに「春一番」は立春から春分までの間に広い範囲で初めて吹く暖かい南よりの強い風。「小春日和」は晩秋から初冬にかけての暖かく、穏やかな晴天とありました。(気象庁HPより   http://www.jma.go.jp/jma/index.html


 一般の人からの質問が多いことが定義づけされる理由の一つになるそうです。 「春一番」や「小春日和」に比べると時が浅い言葉ですが、札幌管区気象台のお天気相談所にリラ冷えについてたくさんの人からの質問が集まれば、いつかリラ冷えの定義が決まる日が来るかもしれませんね。


 ライラックの花が終わると、札幌は本格的な夏を迎えます。歴史あるライラックの木の下で、リラ冷えについて思いを馳せるのもおしゃれな感じがしませんか?

(文責・伊藤紀代)


 <謝辞> 札幌管区気象台業務課の三浦郁夫様、ご多忙中のところ、インタビューに快く応じていただき、ありがとうございました。

アクセス

北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 耕地圏ステーション植物園

札幌市中央区北3条西8丁目  TEL 011-221-0066

http://www.hokudai.ac.jp/fsc/bg/index.html

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2006-07-22

[][] 木の防衛戦略 〜円山原始林〜  木の防衛戦略 〜円山原始林〜を含むブックマーク

◆札幌市民の気軽なハイキングコース

 円山は札幌市内にある高さ225.4mの山です。地下鉄円山公園駅から10分ほど歩くともう登山口です。そこから、大人の足で1時間半もあれば、ゆっくり登って降りてくることができます。子供でも小学生以上ならまず問題ないほどの、気軽に登れるハイキングコースです。

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・頂上からの眺め(JRタワーを望む)


 市民の誰もが気軽にいける山なのですが、実はこの円山一帯の原始林は、天然記念物に指定されています。このため入山者は、勝手に植物を持ち帰ったり、地形に変化を加えたりしてはいけません。人の手を加えるのを最小限にしているので、2年前の台風でへし折られた木々をそのままの姿で今も見ることができます。

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◆チェンソーで切られた樹木の断面

 なるべく人の手を加えないというものの、さすがにハイキングコースは、危険がないように整備されています。チェンソーを使って切ったであろうと思われる切り株の断面をあちこちで見かけました。

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 切り株の断面は、中心部の円と、周辺部の円周部分では、色が違っています。年輪が、季節による木の成長速度の違いでできるという話は小学校で習いました。しかし、この中心部と周辺部の色の違いについては習った覚えがありません。

 さらには、こんな切り株も見つけました。

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 木の周辺部の円周部分にキノコ(菌類)が生えて、中心部のエリアには、生えていません。これは、なぜでしょう? 実は、そこには、木が大きく育つための巧みな防衛戦略の秘密が隠されているのでした。


◆木の構造―死んだ細胞を利用する木―

 木の断面には、中心部の色の濃い部分と、周辺部の薄い部分があります。中心部のことを「心材」。周辺部のことを「周材」といいます。一番外側を「樹皮」といい、樹皮と周材の間の薄い層を、「形成層」といいます。

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 さて、この図の切り株が切り倒される前の幹をイメージしてください。その時、生きている細胞はどこにいるでしょうか? 生物なんだから、どの細胞もみんな生きているんじゃないの、と思いたくなりますが、木の場合は違うのです。

 樹皮の部分は、生きている細胞(樹皮細胞)と死んでいる細胞(樹皮の表面部分)が両方存在します。形成層の部分は100%の細胞が生きています。(形成層は細胞分裂が行われる場所です。)周材の部分は5%〜20%の細胞しか生きていません。そして心材の部分では、生きている細胞はゼロ。つまり100%の細胞が死んでいるのです。

 これは動物との大きな違いです。動物の場合は、生きている細胞がほとんどで、死んでしまった細胞は分解され体外に排出されてしまいます。これに対して木は、死んだ細胞を排出することもなく、たくさんの死んだ細胞の周りを、生きた細胞が取り囲んでいます。生きている細胞たちは、木をしっかり支えるための材料として、死んだ細胞を利用しているのです。


◆木は微生物達に狙われている

 木の幹の細胞の一生をおおまかにいうと、細胞は、形成層で生まれて、数ヶ月で周材となり、10数年後に心材になるという道をたどります。この長い時間の間に、木は外からの敵と戦わねばなりません。

 例えば、生きている細胞中にある成分は、全体質量の5%ほどですが、抽出成分、無機質、デンプン、タンパク質、核酸などからなります。この中のデンプンやタンパク質などは、微生物達にとって美味しいごちそうです。だから微生物たちは、木に侵入する機会をいつもねらっています。木はこれらの微生物から身を守らねばなりません。どのような防衛戦略を木は採用しているのでしょうか?


◆周材での第1の防御:リグニン

 形成層では細胞の分裂がさかんにおこなわれますが、木の中心部側に位置した細胞は、数ヶ月もすると80%〜95%が死んでしまいます。これらの細胞は、死んでいくときに堅い細胞壁を作ります。その主な材料は、セルロースとリグニンという2つの物質*1です。

 セルロースとリグニンが結びついて木が堅くなることを、木化あるいは木質化といいます。(木質化された部分が周材になります。)セルロースの束だけだと、すき間だらけで、そこから水や微生物が浸入してきます。そのすき間をリグニンが埋めることで微生物が侵入できないようにします。また、リグニン自身が、多くの微生物にとって毒物のように働く化学的性質を持っており、天然の防腐剤と言われています。リグニンを用いた木質化は、微生物に対する防衛の役割を果たします。


◆強敵あらわる−木材腐朽(ふきゅう)菌(キノコ・カビ)−

 木の周材から内側はリグニンによって入り込むすき間がほとんどふさがれています。そして、セルロースやリグニンは分子的構造が複雑なため、多くの微生物にとって、栄養源として適しません。これで木の防衛ラインは安泰であるように見えます。ところが、自然界には、この防衛ラインを破ってしまう生物が存在します。それは、普通の微生物には歯が立たないはずのセルロースやリグニンを分解して栄養源としてしまう菌類たちです。このような菌類のことを「木材腐朽(ふきゅう)菌」といいます。身近な例ではキノコやカビたちで、シイタケがその代表です。木は、これらの強敵から、一体どうやって身を守っているのでしょう?


◆心材での第2の防御:抽出成分

 木質化して周材になったときに生き残った5%〜20%の細胞のことを、柔細胞といいます。この柔細胞は、栄養分を蓄える役割を果たしているのですが、十数年ぐらいするとやはり死んでしまいます。柔細胞は、死ぬ前に「抽出成分」と呼ばれる樹脂や色素を作り出して、細胞と細胞のすきまに詰め込んでいきます。こうして色の濃い心材部分が作られるのですが、この抽出成分が第2の防御の役目を果たすのです。

 抽出成分は、種類もたくさんあり、実に様々な働きをすることがわかっています。微生物に対しては、防菌、防カビ物質として作用しますし、昆虫に対しては、防蟻、防虫作用を持つこともあります。植物に対しても、同じ仲間の植物以外が成長しないような物質を作るものもあります。

 世界最古の木造建築である法隆寺はヒノキを使って建てられています。ヒノキにはヒノキオール、ヒノキオン、ヒノキニンなどの抽出成分が含まれていて、ヒノキの耐朽性は、これらの物質によると考えられています。また特に著しい耐朽性をもつ抽出成分としてトロポノイドという物質が知られていて、この物質を含むヒバやビャクレンは国産木材の中で最も耐朽性があります。

 これらの成分は心材部分に多く分布しています。心材ではすべての細胞が死んでいるのですが、抽出成分が作用することにより、木材腐朽菌類から、死んでしまった細胞が残してくれた堅い細胞壁を守っているのです。

 これでキノコ(木材腐朽菌)が、周材部にはついているけど、心材部にはついていなかった謎が解けました。木の2段構えの防衛戦略が働いていた表れだったのです。

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(文・写真・図 : 中村滋 )

【アクセス】

  • 地下鉄東西線 円山公園駅下車 徒歩円山公園内

【住所】

  • 札幌市中央区円山

【参考文献】

  1. 『すばらしい木の世界』日本木材学会編、1995、海青社
  2. 『木のはなし』科学全書6 善本知孝 著、1983、大月書店
  3. 『植物抽出成分の特性とその利用』谷田貝光克著、2006、八十一出版
  4. 『木材の秘密 リグニンの不思議な世界』榊原彰、1983、ダイヤモンド社
  5. 『もくざいと科学』日本木材学会編、1989、海青社
  6. 『森のふしぎな働き』谷田貝光克著、1989、農文協

*1セルロースとリグニンにヘミセルロースを加えた3つの物質で木の95%ができています。そのためこれらの成分のことを主要3大成分と呼んでいます。

nssnss 2006/07/24 20:11 まさにちょっとした切り口からのサイエンスですね。面白かったです。樹皮に直接キノコが生えないということは樹皮にも防御物質などがあるのでしょうか。また、キノコを栽培するときは樹皮ははがしているのでしょうか?

shigerunashigeruna 2006/08/02 17:35 nssさんへ。ご質問ありがとうございました。お返事が遅くなり失礼しました。2つの質問について調べたことでお答えします。まず「キノコを栽培するときは樹皮ははがしているのでしょうか?」に関してです。キノコの代表例であるシイタケ栽培を考えてみます。シイタケの場合は、木質部に届く深さ2-3センチぐらいの小さな穴を樹皮から掘って、そこに菌を埋め込みます。従って樹皮を全部はがすわけではありませんが、樹皮ではない部分にシイタケ菌を植えつけているということができます。次に「樹皮にも防御物質などがあるのでしょうか」についてです。こちらははっきりしたことがわかりませんでした。(どなたかご存知の方がいれば、ご教授ください)ただ、樹皮細胞の場合は、形成層から生まれた後、コルク化というプロセスを経て樹皮になっていくので、そのこととキノコが生えないことが関係していると思われます。

indigo-sumiindigo-sumi 2006/08/03 21:57 樹皮にもある防御物質ですか?タンニンはどうですか?染色ではこのタンニンを利用します。主にアブラムシの仲間や、樹皮に傷がついても出て着ます。虫が入ってこようとすると植物は自分を防御するためにタンニンを出します。虫はこれを利用して、ちゃっかり自分の家をこのタンニンで作ります。これが虫こぶです。ヨーロッパではガールといい、日本ではヌルデにつく五倍子が知られています。これはタンニンの塊で、それを煮た液で染めると、液はほぼ無色ですが、鉄と結合すると青からムラサキに染まります。また、タンニンとたんぱく質が結合すると固まります。にかわを塗った後、タンニンを塗ると耐水性が高まります。木が自分をまもるために分泌致したタンニンを世界中の職人が使ったのです。

shigerunashigeruna 2006/08/31 00:30 indigo-sumiさんへ 興味深いコメントをありがとうございました。木と虫や、木と染色というのは奥深いテーマのようですね。好奇心が湧きました。

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2006-07-18

[][] ゆったりとした時間の流れを求めて 〜大通公園西6丁目 日時計〜  ゆったりとした時間の流れを求めて 〜大通公園西6丁目 日時計〜を含むブックマーク




札幌の中心を東西にのびる大通公園。

地下鉄大通駅から地上に出て、テレビ塔を背にして西に向かって歩いていくと、西6丁目に野外ステージが見えてきます。そのステージの斜め前の芝生の中に、花に囲まれた大きな日時計があります。

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(大通西6丁目:撮影2006年7月9日)



【日時計のしくみ】

さて、このように私たちが日常の風景の中でなにげなく目にする日時計ですが、それが「どのような原理で正しく時を示すのか」を調べてみると、思っていた以上に奥が深いことがわかります。日時計には様々な形式がありますが、一番簡単なものを例にとってそのしくみを説明しましょう。まず、日時計の文字盤(庭日時計の場合は地面)に対して垂直になるように、ノーモン(日陰棒)と呼ばれる棒を立てます。ノーモンに太陽の光があたると、文字盤に影ができます。この影の動きに注目しましょう。


太陽が一番高い位置にある(=南中)時刻を12時とし、その時のノーモンの影の向きを基準にすれば、そこからの影の向きの変化で、今の時刻を知ることができます。地球にいるわたしたちから見ると、太陽は空の上で少しずつ位置を変えながら、ちょうど一日、つまり24時間で同じ位置(厳密には少し違う)に戻ってきます。そうすると一時間あたり、360÷24=15ですから15度方向を変えていることになります。これは同時に、ノーモンの影も逆向きに同じ動きをします。したがって、日時計の文字盤をノーモンを中心として15度ずつ分割して印を付ければその影が印を通過するたびに一時間の時間の経過がわかるわけです。

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(図1:日時計の基本形)

         

【ずれを補正する】

これが一番簡単な日時計のしくみです。さてこの日時計は、どの程度「正確」なのでしょうか?現在私たちの社会が使っている時刻は「日本標準時」*1と呼ばれているものです。ところが、上で説明した通りの日時計を実際に作ると、一貫した時刻のずれが生じることがわかっています。この「ずれ」には、日時計が設置されている位置(緯度と経度)と地球の動き方(自転と公転)が大きく影響しています。これらの影響をうまく補正することで、日時計の示す時刻はより正確さを増します。


〃佚戮砲茲襪困譴諒篝

東西に長い日本では太陽が一番高くなる時刻(=南中時刻)が場所によって違います。例えば本日7月18日の場合、札幌や那覇における標準時との時間のずれは、表1のようになります。したがって、札幌は25分遅く、那覇では30分早くなるように文字盤をずらす必要があります。

f:id:a-kamimura:20060712153845j:image(表1)


地軸の向きと緯度によるずれの解消

地球は南極点と北極点を結ぶ地軸を中心軸にして傾いた状態で自転しています。このため、太陽は私たちから見ると地軸を軸に回転しているように見えます。そのため、日時計を正確に作動させるにはノーモンを地軸に向ける必要があります。北半球の場合、地軸の延長上にある北極星にノーモンを向けることになります。この時文字盤(地面)とノーモンの角度は緯度と同じ角度になります。


8転運動によるずれの補正

地球は太陽の周りを回っていて、これを公転運動といいます。公転運動の軌道は楕円形をしており、太陽と地球の距離によって、公転速度は速くなったり遅くなったりします。その結果、太陽が南中してから次の日に再び南中するまでの時間が変わってしまうので、それを補正する必要が生じるのです。*2


以上のことから、標準時は、

標準時=日時計の時刻―(公転運動でのずれ(分)+経度でのずれ(分))

で計算できることがわかります。

このように、「ずれを補正する」ことで、より正確な日時計をつくることができるのです。


【日時計のいろいろ】

また、日時計には様々な種類があります。

ノーモンを真北において緯度の角度分傾け、文字盤をノーモンに対して垂直においたものを、その形状から「コマ型日時計」といい、文字盤を地面に水平に置いたものを「水平型日時計」といいます。

また形態によって、庭日時計、携帯日時計、柱式日時計などと呼ばれるものもあります。

f:id:a-kamimura:20060724174924j:image

 


では、大通公園の日時計は何と呼べばよいのでしょう。地面に文字盤となる数字のブロックが見え、ノーモンは北の方向を指しています。ですから、これは「水平型日時計」になります。また、花壇の一部となっていますので、「庭日時計」でもあります。実生活で標準時を使用している現代では、このようにアクセサリー的に使用されることが多いようです。

「コマ型日時計」は新札幌の青少年科学館正面の館外で見ることが出来ます。これもどちらかというと芸術的な感じがしますね。

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(左:大通公園の日時計:撮影2006年7月9日 右:青少年科学館の日時計:撮影2006年6月25日)


【おわりに】

日時計の歴史は非常に古く、紀元前2000年古代エジプトではすでに使われていました。短所は昼の晴れた日にしか使えないということ。それでも手軽さもあって昔から多くの人々に利用されてきました。現在のアナログ式の時計の針は北半球での日時計の影の動きに合わせたものです。そのために時計回りが「右回り」になっています。


日時計の示す時刻はゆっくりとした流れを感じさせます。札幌の短くもさわやかな夏のひととき。あなたもお気に入りの本を持って、日時計の周りの木陰でゆったりとした時間を過ごしてみませんか。



(文、写真、作図 かみむらあきこ)


  • 【アクセス】 地下鉄南北線大通駅2番出口から徒歩約3分
  • 【住所】   札幌市中央区大通西6丁目

  • 【参考資料】   

       -理科年表平成18年版  国立天文台 編

       -国立天文台サイト http://www.nao.ac.jp/

       -日時計 Wikipedia  日時計

*1日本標準時は、1884年(明治17年)に万国子午線会議で決定したイギリスのグリニッジ天文台付近を通る子午線を基準にした「世界標準時」をもとに、その2年後の1886年に決定されました。日本では、兵庫県明石市の東経135°を基準の子午線としています。その後何度か補正項目が加えられて、現在は「協定世界時(UTC)」という時刻が基準になっています。

*2:公転運動による一日の長さの変化は、本日7月18日の場合は約6分短くなります。また、今年の場合、最長は11月3,4日で約16.5分長い日になり、最短は7月26,27日で約6.5分短くなります。

tidbitですtidbitです 2006/07/20 12:05 自分だけの日時計を作ってみませんか?
http://cp.c-ij.com/japan/papercraft/science/sundial.html

a-kamimuraa-kamimura 2006/08/04 11:25 ご紹介ありがとうございます。最近はいろいろなキットが出ているようですね。実際に作ってみると日時計の面白さがより深まっていきますね。

ipuipu 2008/03/10 10:57 日時計の左、右が間違ってます。

ishimuraishimura 2008/03/13 16:53 ご指摘どうもありがとうございました。
修正しました。

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2006-07-15

[][] トンギョもつどう 〜札幌コミュニティードーム「つどーむ」〜  トンギョもつどう 〜札幌コミュニティードーム「つどーむ」〜を含むブックマーク



アクセス

 地下鉄東豊線栄町駅から東へ10分ほど歩くと、札幌コミュニティードーム「つどーむ」につきます。「つどーむ」は平成9年にオープンしたドーム型多目的施設で、名前の「つどーむ」は人々が集う場所との意味から名づけられました。札幌ドームができるまで、札幌ではドームといえば「つどーむ」のことでした。 

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  • トンギョの池について

 その「つどーむ」の敷地内、北側東端に長さ15m、幅5m、水深が20cmほどの池があります。この池は「つどーむ」を建設するときに同時に整備された人工池で、池の底はコンクリート製、周囲は芝生になっています。正式には貯留地といって、「つどーむ」の敷地内に降った雨水を一時的に貯めておく働きをもった場所です。池の水位が上昇したときには、敷地を隣接して流れる丘珠川という小川(どぶ川に近い)に、水を排出する仕組みになっています。

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 さて、散歩に出かけた5月のある晴れた日に池の中をのぞいてみると何やら小魚が泳いでいるのが見えます。何が泳いでいるのか確かめたくなり、家から網を持ってきました。捕まえてみると「トンギョ」でした。


  • トンギョについて

トンギョとは、北海道での俗称で、背びれの前方部分に棘があるトゲウオ目トゲウオ科の魚を指します。トゲウオは成長しても7cm程度の小魚ですが、水生昆虫や浮遊動物、小型の甲殻類などを捕食する動物食です。日本に生息しているトゲウオの種類は、背中に長くて3本の棘をもつイトヨ属が2種、背中に9〜10本程度の短い棘を持つトミヨ属が5種、合計7種が確認されています。本州に棲んでいたものの中には、残念ながらすでに絶滅してしまった種もあります。生殖地域は、本州の兵庫県・滋賀県あたりを南限として主に北陸・東北以北に分布しています。生息環境は淡水河川や池沼をはじめ汽水域*1や海の沿岸・潮溜まりなど種により様々です。しかし繁殖は、どの種も共通して、水草が存在する緩やかな流れの河川や池で行います。オスが水草などの植物で巣を作り、その中にメスを誘い込み産卵させ、卵や幼魚を保護するという独特の繁殖行動をとることが知られています。 

日本の中では、北海道が最も多くの種類のトゲウオが住んでいる、トゲウオの本場です。イトヨ属の「イトヨ」、トミヨ属の「イバラトミヨ」(キタノトミヨともいう)、「エゾトミヨ」、「トミヨ」の合計4種のトゲウオの生息が確認されています。

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「つどーむ」につどっていたトゲウオは…トミヨ属の「イバラトミヨ(淡水型)」でした。

「イバラトミヨ(淡水型)」は北海道では、多くの場所で生息しているあまり珍しくもない種類のトゲウオです。しかし、本州では河川の直線化による流速の増加や、宅地造成による湧水地の減少といった環境変化が原因でその生息場所がどんどん少なくなっています。もともとトゲウオは氷河期に分布域を広げた北方起源の魚で、本州では水温があまり上昇しない冷たい湧き水が水源となっているところに棲んでいる場合が多く、そのような場所が減少していることが本州で生息数を減らしている原因となっています。個体数が激減し絶滅の危機に瀕している地域もあります。

ここ北海道でも、汽水域に生息している「イバラトミヨ(汽水型)」は、環境変化によって容易にその生息数を減らす可能性があり、北海道レッドデータブックという北海道の希少野生生物の情報を記載した本の希少種に指定されています。さらに、日本では北海道だけに生息するエゾトミヨは、その生息する場所と個体数が明らかに減少していることから、北海道レッドデータブックだけでなく環境省レッドデータブックの準絶滅危惧種に指定されています。

  

  • トンギョ達よフォーエバー!!

 「つどーむ」の池に棲むイバラトミヨは成魚だけでなく稚魚もいることから、この人工池に定着していることがわかります。イバラトミヨが生活し繁殖するための生態系がいつのまにかできあがっていたのです。イバラトミヨに限らず、野生動物は新たに生息場所を広げようとする強さと、人間にとってはちょっとした環境変化でも生息場所が脅かされるという弱さの両面を持ち、その微妙なバランスの上で我々の住む地球の生態系や自然が成り立っているのです。

f:id:costep-miura:20060705213502j:image:w320(トンギョの親子)


人工池である「つどーむ」の池に人知れず「つどい」住み着いたイバラトミヨは、都市化が進む札幌に自然の豊かな環境が残っていることを象徴する存在かもしれません。トゲウオの本場、北海道がいつまでもトンギョの「つどえる」場所であり続けてほしいものです。

 (文・写真 三浦久和)


【アクセス】

【住所】

  • 東区栄町885番地1

【参考文献】

  1. 日本産魚類検索   東海大学出版
  2. 原色日本淡水魚図鑑 保育社 

【関連リンク】

「閲覧画面へ」をクリックしトゲウオ科を参照して下さい。トゲウオ科5種の画像と分布が閲覧できます。


【謝辞】

 トゲウオの同定について、札幌市豊平川さけ科学館 学芸員 岡本さんにご協力をいただきました。ありがとうございます。

*1:海水と淡水が交じり合っているところのこと

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2006-07-12

[][] 光のいたずら・蜃気楼 (その1・光学編)〜小樽市朝里〜  光のいたずら・蜃気楼 (その1・光学編)〜小樽市朝里〜を含むブックマーク


■石狩湾で蜃気楼が見られます


 JR函館本線の朝里駅で電車を降りて、海岸沿いに札幌方向へ3分ほど歩けば朝里海水浴場に着きます。ここからは、石狩湾を広く見渡すことができます。私はよくこの場所に来ますが、ただ海をぼーっと眺めているだけではありません。ここ小樽市朝里の海岸は蜃気楼の「おすすめ観察スポット」なのです。


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  • 小樽市朝里の蜃気楼観察スポット:朝里海水浴場

 ここから対岸を見ると、約17km先の石狩湾新港のタンク群を望むことができます。蜃気楼が発生すると、この景色がいったいどんなふうに変化するのでしょうか?


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  • 朝里から見た石狩湾新港のタンク群。

■ 蜃気楼はどのように見えるの?


 蜃気楼とは、遠くから届く光が途中で屈折するために、景色が実際とは異なって見える現象です。どのように見えるかというと、遠くの景色が伸び上がって見えたり、上方に反転して見えます。石狩湾新港が蜃気楼になると、下の写真のように丸いはずのタンクは伸び上がって反転し「ひょうたん」のように見えることもあります*1。ここ石狩湾では毎年4〜7月頃、年に10回程度蜃気楼が発生します。見応えのある蜃気楼は年に1〜2回しかないので、そのチャンスにめぐり合うのは大変好運なことです。


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  • 石狩湾新港のタンク群(超望遠撮影)。蜃気楼(2001/05/30)と実景(2006/06/30)

 〜風車は、あとから2005年に作られました〜


 蜃気楼が発生している時は、遠くの景色がかすんでいてはっきりとは見えません。そのような状況でも、良く観察していると、タンクがちぎれたりくっついたり、刻一刻と変化します。その変化する様子は、まるで「おばけ」でも見ているようで、とても面白いです。


■蜃気楼を科学的に考えると


 それでは、蜃気楼が起きる仕組みを説明します。科学的には蜃気楼は光の屈折により起きる光学現象であると言えます。光が通過する物質(空気や水など)が均一ならば、光は通常その中を直進します。水槽の中に水を入れて、レーザー光をあててみましょう。下の写真のように、レーザー光は水の中をまっすぐ進みます。水槽の向こう側に置かれた「蜃気楼」という文字も、ゆがんではいません。


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  • 水槽での実験1:均一な水の中でレーザー光は直進する。向こう側の文字がゆがまずに見える。

 ところが、水槽の中の下層に濃い食塩水、上層に普通の水を入れた場合、食塩水と普通の水では光がその中を進む速度が異なるため、その境界で光がわずかに屈折します。したがって下の写真のように、横方向に進む光は上に凸になるように進みます。光がまっすぐに進まないので、水槽の向こう側の文字も本来とは違って見ます。


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  • 水槽での実験2:塩水と普通の水の境界層でレーザー光が屈折して、光が凸に進む。向こう側の文字も変形して見える。

 つまり、「光の進む速度が物質の種類によって異なるために、その境界で進行方向が変わり、景色が実像とは異なって見える」というのが蜃気楼発生のメカニズムです。


 石狩湾の場合は、温度の異なる空気が上下にあることによってそこを通る光が屈折し、蜃気楼が発生するのです。それでは、どんなときに温度の異なる空気が存在するのでしょうか?8月20日掲載の記事「光のいたずら・蜃気楼(その2・気象学編)」では蜃気楼が発生する際の気象条件について紹介をしていきます。


(文・写真・図 大鐘卓哉)


朝里海水浴場

  • 【アクセス】:JR函館本線朝里駅下車。海岸沿いに札幌方向へ歩いて約3分。
  • 【住所】:小樽市朝里4丁目1

【参考サイト】

  1. 北海道・東北蜃気楼研究会(石狩湾の蜃気楼を詳しく紹介)
  2. 琵琶湖蜃気楼情報(水槽の実験についての紹介があります)

*1:蜃気楼は遠くの景色が変化して見えるので、双眼鏡を使って観察することをおすすめします。

2006-07-09

[][][] 札幌にも続々登場!LED式信号機 〜豊平区役所前交差点〜  札幌にも続々登場!LED式信号機 〜豊平区役所前交差点〜を含むブックマーク



札幌市を巡る環状通と、札幌ドームへ続く羊ヶ丘通とが交差する地点は、片側3車線の大きな交差点となっています。その一角に豊平区役所があります。

区役所前の長い横断歩道に立ち止まり、交差点の信号機を見上げてください。光の粒が集まって赤・黄・青の円形を作っています。これが「LED式信号機」です。

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  • 写真: 左/豊平区役所 右/LED式信号機 (撮影 2006/6/19)

【 LEDとは? 】

LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)とは電流を流すと発光する半導体*1の一種です。炎・電球・蛍光灯に次ぐ「第四のあかり」と期待され、電球や蛍光灯に比べて寿命が長く、消費電力が少なく、発熱しないのが特徴です。


LEDは2種類の異なる半導体(P型とN型)を組み合わせたチップが発光します。電圧をかけるとチップの中で、電気的に−の粒子と+の粒子*2がぶつかって結合し、このとき余ったエネルギーが光エネルギーに変換されて発光するのです。

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  • 図: LED発光のしくみ

また、半導体にGa(ガリウム)、N(窒素)、Al(アルミニウム)などのさまざまな物質を加えると、色の異なる光を作り出すことができます。電気製品のOn-Offを表すランプには赤や黄緑のLEDがよく使われていますね。また、最近街で見かける大型ディスプレイは、「光の3原色」である赤・青・緑のLEDを組みあわせてフルカラーの映像を表示しています。(→参考記事:最近街角に増えた大型ディスプレイ)


【 LED式信号機のメリット 】

さて、LED式信号機が導入されるようになった理由は3つあります。


1.消費電力が少なく、CO排出量を削減できる

車両用信号機の場合、LED式の消費電力は1機あたり約15w。従来の電球式の消費電力が70wであるのに比べて約55wの節電になります。LED照明推進協議会によると、日本全国の交通信号機をすべてLED式信号機に交換すると年間8.65億kWhの節電、原油に換算して約21.4万klの節約、約2300万本のスギを植林したのと同じCO2削減効果が得られるそうです。


2.発色が鮮明で、疑似点灯が起こらない

電球式信号機は、西日など強い光が当たると、どの色が点灯しているのか見分けがつかない、いわゆる「疑似点灯」が起こります。

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  • 写真: 疑似点灯(撮影 2006/6/19) 

 図: 疑似点灯の起こるしくみ(LED照明推進協議会サイトの図を改変)


これに対してLED式信号機は半導体が発する光そのものに色があり、点灯していないところは真っ黒に見えます。疑似点灯は起こりません。

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  • 写真: 赤信号から青信号へ切り替わる一瞬の間! 真っ黒です・・・ 

(撮影 2006/6/19)


3.寿命が長いため維持費が少ない

電球式信号機は使用している電球の消耗がはやく、年に一度は交換する必要があります。LEDは寿命が長いため、10年に一度程度の交換でよいとされ、維持費が節減できます。


【 北海道でのデビューは 】

北海道に初めてLED式信号機が登場したのは平成10年。創成川通りの右折を許可する「青矢印」に初めて使用されました。歩行者用信号機の第1号機は平成16年に白石区東札幌に登場しています。


車両用信号機は、歩行者用信号機に遅れること2年、今年から設置が始まりました。第1号機が小樽の運河通に、続いて札幌でも北1条西24丁目のスクランブル交差点に設置され、徐々に増えてきています。北海道では、信号機のひさしに積もった雪で信号灯が見えにくくなることがあります。LEDの発熱しないという特徴が、「ひさしの雪をとかさないため雪の多い地域には不適当」と考えられて導入が遅れたのですが、今年の冬期間(1月〜3月)は積雪によるトラブルはありませんでした。


省エネルギー、CO2削減効果ありと環境に優しく、経済的なLED式信号機。強い西日の下で、どの色が点灯しているのかと左右を見回す必要もなくなります。

もうすでに、みなさんのご近所の交差点にも登場しているかもしれません。

時には先を急がずに、信号機をじっくり眺めてみませんか?


(文・写真・図 原林滋子)



*1 電気を通しやすい「導体」と電気を通さない「絶縁体」との中間の性質を持つ物質。シリコンが代表的。


*2 ここでいう「電気的に−の粒子」は電子、「電気的に+の粒子」は正孔(せいこう)です。正孔とは固体の結晶構造の中の電子が欠落した「穴」の部分で、あたかも正の電荷を持った電子のように動きます。


【アクセス】

  • 地下鉄南北線南平岸駅から 徒歩15分
  • 地下鉄東豊線美園駅から 徒歩10分

【取材協力】


北海道警察本部交通部交通規制課信号機係


【参  考】

  1. NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構  http://www1.infoc.nedo.go.jp/kaisetsu/nan/na03/
  2. LED照明推進協議会  http://www.led.or.jp/about/features.htm
  3. 松下電工 LED照明器具エバーレッズ  http://biz.national.jp/Ebox/everleds/led/principle/index.html

hypotheticalhypothetical 2007/05/22 15:29 札幌駅近くでどこにあるかご存じだったら教えていただけませんか。今日,探し回ったのですが,見つけられませんでした。

a-kamimuraa-kamimura 2007/07/05 14:27 Webチームのひとりです。札幌駅南口・北口付近を探してみましたが、hypothetical様のおっしゃるとおり、なかなか見つけることができませんでした。唯一見つけたのが、北5条西3丁目の札幌駅南口から大通り公園に向かう歩行者用信号機でした。歩行者用信号機は、LED信号機の場合、背景が黒でヒトの形が赤や緑になっています。また、以前からある信号機は、背景が赤か緑で、ヒトの形が白抜きになっています。ですから、歩行者用の信号機のほうが見つけやすいかもしれません。

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2006-07-06

[][][] 観覧車は無限のレールを走る 〜nORBESAの観覧車〜  観覧車は無限のレールを走る 〜nORBESAの観覧車〜を含むブックマーク



地下鉄南北線の「すすきの」駅を降り、地上に出て西に向かってロビンソンデパートの前を歩いてゆくと、道路の向こうにこんな風景が見えてきます。


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  • ちょっとびっくりする風景

札幌のビル街の、ど真ん中のてっぺんで観覧車がのんびり回っているのです。


この観覧車は今年の5月にオープンしたばかりのnORBESA*1というビルの上にあり、nORIA*2という名前がついています。


では、nORBESAのてっぺんまで登って観覧車の足元へ行ってみましょう。


観覧車はnORBESAの七階の屋上にあって、その周りをガラス張りの廊下が囲んでいます。屋上という狭い空間の中で、観覧車を間近で安全に観察するための配慮がなされています。


観覧車の両側には太いパイプが3本ずつあって、大きな三角形を作っています。この三角の頂上に観覧車の中心軸があり、観覧車の重さを支えています。太いパイプの間に細いパイプが組み合わされ、三角形の構造がたくさん作られています。以前テレビ塔の回(リンクはこちら)で取り上げられていたトラス構造と呼ばれる構造です。

観覧車には32台のゴンドラが取り付けられていて、お客さんを乗せてゆっくり回りながら空に上ってゆきます。


さて、この観覧車は、どうやって回っているのでしょうか?


ゴンドラ乗り場の斜め左上を見てみると、こんなもの(下の左側の写真)を見つけることができます。


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  • 左の写真:観覧車の駆動部(右の写真の黄色い丸の部分にあります) 右の写真:駆動部とレールとの位置関係

回転する4本のタイヤが赤いレールを両側から挟み込んでいます。

赤いレールは観覧車の両側に取り付けられていて、直径36mの大きな円を作っています。

この赤いレールが回転するタイヤに押し出されることで、観覧車を回しているのです。


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  • 観覧車の駆動部を裏側から見てみました(撮影:nORIA 大坂様)

両側合わせて8本のタイヤにはそれぞれモーター(青いケースがそうです)が一台ずつ取り付けられています。モーターの出力は2.2kW(3馬力)です。これは50 cc のバイク(スーパーカブ)のエンジン出力とほぼ同じです。(スーパーカブのスペックはここ


タイヤの回転は摩擦力により、観覧車のレールに伝えられます。

この力はタイヤとレールの間が滑りにくく、タイヤがレールを挟み込む力が強いほど大きくなります。


この観覧車では、タイヤとレールの間を滑りにくくするため、ゴムタイヤを使っています。ゴムは柔らかい物質で、レールの表面に密着することができます。タイヤとレールの触れ合う場所が多くなるため、レールに効率よく力を伝えることができます。


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  • ゴムタイヤとレール(撮影:nORIA 大坂様)

観覧車のレールは円形をしているので、始まりも終わりもありません。つまり、観覧車とは無限に続くレールの上を走り続ける乗り物といえます。


では、観覧車のタイヤはどれほどの距離を走っているのでしょうか。


ちょっと計算をしてみると*3、一日に約8km、一年で約3000km走っていることになります。人は一時間で4km歩けるので、一日の走行距離は二時間の散歩と同じくらいですが、一年に走る距離は札幌とサイパンの間の距離(約3100km)*4に近いのです。ゆっくりのんびり回っているように見えて、実は結構働き者なのです。


せっかくここまで来たので、観覧車に乗ってみましょう。


乗ってすぐの間は、屋上の建物に視界がさえぎられますが、屋根を越えると一気に視界が広がります。どんどんすすきのの街が小さくなり、札幌ドームや恵庭岳など遠くの景色が見えてきます。


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  • 観覧車の頂上付近からテレビ塔方面を見る

観覧車のゴンドラは地面から78mの高さまで登ってゆきます。


最後に観覧車に乗ったのはもういつのことか思い出せませんが、家族みんなでゴンドラに一緒に乗ってはしゃいだのを覚えています。

久しぶりに観覧車に乗って遠くの風景をぼんやりと眺めていると、そんな遠い日のことを思い出しました。


約十分で空中散歩は終わります。ゴンドラを降りてビルを出るといつもと変わらない風景がありました。


(文・写真:佐藤 登志男)


  • 住所 札幌市中央区南3条西5丁目1−1
  • TEL 011-271-3630(代)
  • アクセス方法 地下鉄南北線「すすきの」駅を下車。徒歩5分
  • 公式サイト
  • 営業時間 AM11:00〜PM11:00
  • 乗車料 600円

[参考リンク]

観覧車について


タイヤについて


[取材協力]

株式会社 太平エンジニアリング nORIA運行管理者 近藤 和夫 様、nORIA運転者 大坂 和弘 様

nORBESA運営事務所 営業担当 松田 恭昌 様

*1:ノルベサ:フランス語で「北」の意味の「Nord」(ノール)という言葉と、北海道弁の「べさ」を組み合わせたもの

*2:ノリア:スペイン語で観覧車の意味

*3:観覧車のレール一周分の長さ:直径 36m x 円周率 3.14 = 113m です。約10分で一周するので、1日12時間営業で72周回ります。したがって、一日の走行距離:113m x 72周 = 8.1km、年間走行距離:8.1km x 365日 = 約2960kmとなります。

*4:都市間距離計算のページ http://gakusyu.ne.jp/linksyu/earth.htm から計算

佐藤 登志男佐藤 登志男 2006/07/07 15:41 本文中に「名古屋のHEP FIVEの観覧車」の記述がありましたが、ある読者の方からHEP FIVEの所在地は「大阪」であるとご指摘いただきました。訂正のうえお詫びします。また、ご指摘いただき、ありがとうございました。

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2006-07-03

[][] ジンギスカンの魅力 〜北海道大学 エルムの森〜  ジンギスカンの魅力 〜北海道大学 エルムの森〜を含むブックマーク



北海道大学の博物館横に広がる「エルムの森」では、週末になると大学生のグループがジンギスカンをしています。

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  • たくさんのグループがジンパを楽しむ(撮影日:2006年6月24日)


 エルムの森ではジンギスカンやバーベキューといった火を使うレクリエーションが認められていて、炭を捨てる筒も設置されています。

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  • 炭を捨てる筒(撮影日:2006年6月26日)


ジンギスカンとは羊肉を焼く焼肉の一種で北海道の名物料理として有名です。

浅い帽子のような中央が盛り上がった形の鍋を使って野菜と一緒に羊肉を食べるスタイルが一般的ですが、ジンギスカン鍋を使わなくても、羊の肉を焼いてたべることを「ジンギスカン」とよんでいます。

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  • ジュージューと焼ける羊肉と野菜(撮影日:2006年6月24日)


大学構内でジンギスカンを楽しむ学生達の姿は、観光名物ともなっているようです。

 全国的には屋外で牛肉や豚肉を使ったバーベキューを食べることが多いようですが、北海道では断然ジンギスカンが人気です。北海道大学の学生は、ジンギスカンを外で楽しむことをジンギスカン・パーティーの略で「ジンパ」とよんで親しんでいます。


今回は、ジンギスカンで食べられている羊肉の成分という切り口から、ジンギスカンの魅力を探ってみました。


【羊肉の魅力は豊富な鉄分】

豚肉や牛肉と羊肉とを比較してみると、まず含有鉄分量の違いに目がいきます。

鉄分は私たちにとって非常に重要なはたらきを持つ成分です。

その鉄分が100g中の肉にどれだけ含まれているかを比較してみると豚もも肉には0.5mg、牛もも肉には1.0mg含まれています。対して、子羊(ラム)のもも肉には2.0mg、羊肉(マトン)のもも肉には2.5mgの鉄分が含まれています。

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  • 含有鉄分量を比較したグラフ

ちなみに鉄分が多いことで有名なレバーは7.7mg。レバーにはすこし及びませんでしたが、赤肉ではトップクラスの鉄含有量です。


【鉄は赤血球作りに不可欠な成分】

なぜ私達の体に鉄分が必要なのでしょうか。

私達の血液には赤血球という「酸素の運搬係」の役目を持つ弾力性のある細胞があります。私達が吸った空気はいったん肺に入ります。赤血球は肺に入った新鮮な酸素と結合した後、体中をめぐり、その弾力性を生かして細い血管にも入り込んで、隅々までいきわたります。目的地についた赤血球は酸素との結合をとき、組織に酸素を提供するのです。

赤血球の主成分はヘモグロビンというタンパク質です。このヘモグロビンを作るときに鉄が必要なのです。体内に鉄分が少ない状態ではヘモグロビンができなくなってしまい、正常に赤血球をつくることができなくなってしまいます。

酸素の運搬係が不調になったり数が足りなくなったりすると、体のあちこちで酸素が足りなくなり体調不良(貧血)を起こしてしまうのです。


羊肉は、特に貧血を起こしやすい女性にとって体にうれしい食べ物ですね。筆者は鉄分の多いレバーが苦手でどうしても食べられないのですが、羊肉ならどれだけでもたべられますので、羊肉で鉄分補給をしたいところです。

さらに、鉄分はビタミンCと一緒にとると吸収率がぐんとよくなります。ビタミンCたっぷりの野菜と一緒に鉄分たっぷりの羊肉を食べるジンギスカンは、理にかなったバランスのよい食事といえるかもしれません。


【北海道とジンギスカンのつながり】

北海道の人にジンギスカンが愛されている歴史的な背景も、少し調べてみました。

ジンギスカン普及の発端は明治時代までさかのぼります。

第一次大戦後、軍服の材料につかう羊毛を確保するために政府は「綿羊百万頭計画」を推進しました。羊毛の自給自足を目指したのです。政府は羊の飼育を奨励し全国5箇所に種羊場をおきました。そのうち二つが北海道に設置され、北海道は羊飼育の中心となりました。この頃、種羊場で羊の毛だけではなく肉も利用しようという試みがはじまり、提案メニューのひとつとしてジンギスカンが誕生したそうです。

当初は臭みが強くあまり受け入れられませんでしたが、第二次大戦後、食糧難だったことと臭みを緩和するタレの改良によってジンギスカンがいっせいに普及したのです。


【おいしく食べて心とからだのメンテナンス!】

ジンギスカンは北海道という土地にしっかりと根付いた、栄養たっぷりの食事ということがわかりました。

最近雨の多い北海道ですが、はれた週末には友達を誘って一緒にビールとジンギスカンで乾杯! 心のリフレッシュもかねて「ジンパ」を楽しみたいと思います。

(文・写真 宮本 朋美)

【アクセス】

北海道大学 総合博物館 向かって左側に広がる森


【住所】

  • 北10条西8丁目


【参考文献】

  1. 北海道新聞HP 「Oh!さっぽろ」
  2. 食品成分データベース
  3. 北海道新聞発行 道新ポケットブック
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