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お知らせ:2007年3月のCoSTEPウェブ実習の終了にともない、今後当サイトでは定期的なコンテンツの更新は行われません。
ただし今後も実習チームOB有志が、時折新しい記事を追加していく予定ですのでよろしくお願いします。(2007/6/21)

【News】(2008/2/6)優れたブログを紹介する「スゴブロ2008」ベスト20の第3位に選ばれました!
【News】(2007/3/14)『クックブック サイエンス観光マップのすすめ』の配布を開始しました。
【News】(2007/3/1)日経BPのサイト「セカンドステージ」に当サイトの紹介記事が載りました。
【News】(2007/2/7)2月1日の記事にて、公開記事数が100本になりました。
【News】(2007/1/5)はてなの 「こんな人も書いています」コーナーに掲載されました。



2007-05-19

[][]コーヒーの香りの向こうには・・・ 〜旧小熊邸〜 コーヒーの香りの向こうには・・・ 〜旧小熊邸〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク

もいわ山ロープウェー乗り場の近くに、旧小熊邸が静かにたたずんでいます。

この建物は、北海道帝国大学(現 北海道大学)農学部の小熊捍 博士の邸宅を移築・再建したものです。

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  • 緑の中に佇む旧小熊邸(2007/4/30 撮影)

小熊博士は、現在の北海道大学理学部の創立時の教授で、動物学を担当されていました。後に理学部長なども歴任され、北海道大学のみならず、日本の遺伝学研究の発展に大きく貢献されたそうです。

現在、この建物は喫茶店として使用されています。

邸内では、素敵な空間の中でおいしいコーヒーを楽しむことができます。

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  • ゆっくりとコーヒーを楽しむ人たち(2007/4/30 撮影)

さて、みなさんが楽しんでいるこのコーヒー。

小熊邸でいただくときのように、リラックスしたい時にも飲みますが、

「眠いときに飲むと目が覚める」とも言われています。

コーヒーを飲むと、どのような作用があるのでしょうか。


■カフェインは「ブロックする」分子


コーヒー豆に含まれている成分の中で、眠気を覚ます覚醒作用をもたらすのは、「カフェイン」と呼ばれる物質です。


私達の体の中で働く物質の中に、アデノシンというものがあります。

アデノシンは、これを認識する「アデノシン受容体」と結合することで、様々な作用を起こします。

カフェインは、このアデノシン受容体に結合することができます。

受容体に結合はできますが、その後の反応を起こす引き金にはなりえません。

そして、カフェインが結合すると、そのあとにアデノシンが結合することができなくなります。

結果として、カフェインはアデノシンの働きをブロックすることになります。


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  • カフェインはアデノシン受容体に結合することができる

アデノシンが神経に作用すると、リラックス効果・疲労感をもたらします。

カフェインはこれをブロックすることにより、リラックス=眠気をブロックするのです。


■素敵なコーヒータイムを


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  • 旧小熊邸でいただくコーヒー(2007/4/30 撮影)

コーヒーには窓の外が映っていました。


カフェインの作用ではありませんが、

コーヒーの香りは気持ちを落ち着けてくれますね。

旧小熊邸でいただくコーヒーは、そこで生活した人たちのことを思い起こさせてくれました。

これから緑の美しい季節です。

室内から窓の外を眺めるのもよし、テラスで森の空気と共にコーヒーを味わうもよし。

素敵なコーヒータイムを満喫しに、もいわ山まで出かけてみませんか。


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2007-01-25

[][] いろいろな昆虫がいるのはどうして?〜札幌市北方自然教育園〜  いろいろな昆虫がいるのはどうして?〜札幌市北方自然教育園〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク


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 札幌市北方自然教育園は、札幌市南区白川の豊平川の北側・硬石山の西側にあります。ここには、約5ヘクタールの敷地に学習館・昆虫館や体験農場や果樹園・観察林などがあり、自然観察や作物の栽培体験などができる施設です。園内にある昆虫館は、240平方メートルあり昆虫に関しての解説展示や生きた昆虫をみることができる生態展示があります。また、学習館には世界中のいろいろな種類の昆虫の標本の展示があり、地球上にさまざまな形をした昆虫がいることがわかります。

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昆虫は地球上で最も多くの種類がいる生物

 地球には多くの種類の生物が暮らしています。しかし、その中でも昆虫は現在知られている生物種の約55%を占めています。しかも、未だに発見されていない種類も多いと推測されていますから、種類から考えてみると地球上で最も繁栄している生き物は昆虫であると考えられます。それでは、どうして昆虫には多くの種類がいるのでしょうか? 昆虫の特徴からその秘密を探ってみましょう。

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その1:空を飛べる

 今、見つかっている最も古い昆虫の化石は、約4億年前のデボン紀中期のトビムシの化石といわれています。この当時は、まだ翅(はね)がなかったようですが、約3億年前の石炭紀には翅をもった昆虫が出現します。この時代に空を飛ぶことができたのは、昆虫だけだったようです。この時代には、翅を広げた大きさが70cmにも達する巨大トンボもあらわれました。

 鳥やコウモリの羽は手が進化した器官で、骨や筋肉の助けをかりて羽ばたくことができます。それに対して、昆虫の翅は背中の外骨格が薄く伸びたものです。この翅には翅脈(しみゃく)と呼ばれる筋が葉脈のように広がっています。この翅脈は、表側にふくらんだ面と裏側にふくらんだ面がほぼ交互に配列しており、強度を保っています。

 昆虫が空を飛べる秘密は、翅のついている胸部にあります。昆虫の胸部には2種類の筋肉が体壁についています。この筋肉を運動させることによって背中の硬い表皮がくぼんだりふくれたりすることで、翅が上下し飛ぶことができます。空を飛べるようになったことが、昆虫の活動範囲を大きく広げました。

その2:小さなからだ

 昆虫は体の表面が硬くなっており骨の役割をはたしています。このつくりはまるで外から枠をはめたのと同じようなもので、外骨格といわれています。昆虫は、外骨格であるために体を大きくすることができません。それは、体を大きくしていくと、外骨格では体を支えることが出来なくなり、つぶれしまうからです。また、表面を厚く丈夫にすると体が重くなるので、筋肉や内臓などの器官を収納できなくなります。このような理由で、ほとんどの種類の昆虫は、脊椎動物よりも体が小さくなりました。

 しかし、小型の種類が多い昆虫にとってはこの外骨格は、体から水分が蒸発することを防いでくれるという効果があり、陸上生活に適していました。また、小さな体は少ない食料ですみます。ですから、狭い場所にたくさんの昆虫が一緒にくらすことができ、枯れ木の間や樹木など、陸上のさまざまな空間を利用するためには便利だったようです。


その3:植物との共進化

 昆虫にとって植物は、非常に魅力的な食料です。それと共に生活する場所を提供しています。そこで、植物を食料とする昆虫が、たくさん現れたと考えられます。

 しかし、植物も食べられてばかりではなく、「身を守るために葉を硬くする。」「毒のある物質をたくわえる。」などができるものが出てきます。それに対して、昆虫はある特定のグループの植物が持つ毒に強い種類が現れます。このように昆虫が植物が身を守る仕組みを発達させる。するとそれをうち破る技を昆虫が身につけるというようにして、お互いが進化してきたようです。

 また、被子植物は花という器官を持ちました。花の出現は昆虫にとっては、花から蜜という食物を得ることができるというメリットがあり、植物にとっては、昆虫に花粉を遠くの仲間に確実に届けさせるというメリットがあります。このように、被子植物と昆虫は互いに依存し合う関係(共生関係)を持つことで、両方のグループは、繁栄したようです。

 

おわりに

 今までのことから、昆虫の種類がたくさんいるのはどうしてかまとめてみましょう。それは、多様な資源の利用と環境変化への適応がずば抜けて良かったことが理由のようです。

 昆虫は、翅を獲得したことで行動範囲が大きくに広がり、多様な棲み場所や食べ物などを利用できるようになりました。また、小さく成長が早いので世代交代のスピードも速くなり、地上の変化に富む環境や気候変化などに適応した種の出現(種分化)が素早かったことが大きな理由のようです。

 更に、環境への適応性や種分化能力の高さは、植物との競争や共生関係などお互いに影響を与え合うことで強められ、たくさんの種類を生み出したと考えられます。

(文責:菊田 融)

アクセス

札幌市北方自然教育園 (札幌市南区白川1814)

じょうてつバス 定山渓・豊滝方面 十五島公園前下車 公園内のつり橋を渡って徒歩約30分

参考文献・HP

  1. 札幌市教育委員会文化資料室 編, 1990, 札幌昆虫記,北海道新聞社
  2. 鷲谷いずみ 大串隆之 編集, 1993, 動物と植物の利用しあう関係 シリーズ地球共生系5,株式会社 平凡社,
  3. 水波 誠,2006,  昆虫 驚異の微小脳,中央公論社
  4. 虫を飼うための豆知識 http://www.afftis.or.jp/konchu/breeding/1_1.html
  5. 昆虫ワンダーランド(愛媛県総合科学博物館) http://www.scimuseum.niihama.ehime.jp/special/konchu/data/kon/indexa.htm

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2006-10-30

[][][] 芸術に息吹く科学 〜札幌芸術の森〜  芸術に息吹く科学 〜札幌芸術の森〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク


地下鉄南北線真駒内駅からバスに揺られて15分。坂の上に、立派な門が現れます。この門のなかに広がる札幌芸術の森には、野外美術館・美術館・工芸館・コンサートホールなど、芸術に触れ合える様々な施設があります。その中でも野外美術館は、7.5ヘクタールの広大な敷地に、74点の作品が展示されている広大な施設です。屋内の美術館と違い、走ったり、歓声をあげたり、見上げたり中に入ってみたりと、様々な楽しみ方ができます。作品の解説をしてくれるボランティアガイドさんもいて、詳しい解説を聞きながらの散策もできます。


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  • 展示解説をするボランティアガイドさん(緑のパーカー)

(撮影:宮本朋美)

今回は、この野外美術館で芸術とサイエンスの意外にも親密な関係について探ってみましょう。


まず展示作品の中に、野外にあるにもかかわらず、ピカピカと光沢を放つ作品がたくさんあることに気づきます。ご存じのとおり、金属を水にぬらしたり長い時間放置したりすると錆が付いてしまいます*1。しかしここにある作品は、まったく錆がなく傷も見当たりません。

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  • ステンレスを用いた作品 (左上:「方円の啓示」/小田襄、右上:「位相」/多田美波、左下:「1・9・8・5知性沈下」/湯原和夫)

(撮影:石村源生)

秘密は材料にありました。

これらの作品は、材料にステンレスを使っていました。

ステンレスは、「stain(錆)less(ない)」という名前の通り錆がつかない金属です。ステンレスは鉄にクロムをまぜた合金で、常に水に濡れる台所用品などに使われています。

なぜ、鉄にクロムをまぜると、錆がつかないのでしょうか。実は、クロムは大変酸化しやすい金属で、空気中の酸素ともすぐに酸化反応を起こします。このような酸化還元反応のしやすさのことをイオン化傾向といい、クロムはこのイオン化傾向が強い物質です。酸化したクロムは、金属表面を覆う膜(不動態*2皮膜)をつくります。ステンレスでも、クロムがこの膜をつくり、ステンレス中の鉄と酸素や水分が反応し、錆(酸化鉄)ができることを防ぐことができます。


このほかに、さびにくい純金属としては金やプラチナなどが挙げられ、野外美術館には金箔を使った作品も展示されています。


さて、次に5分ごとに姿を変える不思議な作品に注目しました。*3


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  • 5分毎に赤矢印部が90度回転して姿を変える「1:1:√2」(作/田中薫)

 (撮影 石村源生)

 

この作品のテーマは「1:1:√2」。これは、直角二等辺三角形の辺の長さの比です。

直角三角形の辺には、以下のような法則が成り立っていて、これを三平方の定理といいます。

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  • 三平方の定理

この作品の柱の幅と奥行きの比は1:√2になっており、これを45度の角度で切ると断面が正方形になります。

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  • 1:√2の立体の45°切断面

この作品は、回転部を90度回転させることで形を変化させます。

切断面が正方形なので、90度回転させても辺の長さがぴたりと一致します。

三平方の定理を発見したのは、有名な古代ギリシアの数学者であるピタゴラスでした。なんとピタゴラスは現在使われている音階の元になったピタゴラス音階を開発していたともいわれており、音楽と数学にも密接な関係があることがうかがえます。

野外美術館は森の中を歩くハイキングコースにもなっていて、コースを全て歩くと体がほかほかとあたたまり、今時期ですと自然の生み出す「紅葉」という芸術も楽しめます。(紅葉の仕組みはこちらをご覧ください。)

色づいた木々と人の作り出した作品の、静かで力強い鼓動が野外美術館には溢れていました。

【アクセス】

札幌市営地下鉄南北線 真駒内駅下車 2番バス乗り場よりバスに乗車しておよそ15分

【参考文献】

  1. ウィキペディア
  2. ステンレス協会
  3. 札幌芸術の森 情報誌「ルア」
  4. 札幌芸術の森 野外美術館パンフレット

(文・図 宮本朋美)

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*1:このように金属が外部の刺激を受けて性能が落ちることを腐食といい、腐食した金属に生成されるものの代表が錆です

*2:表面に膜ができて、内部を腐食させない状態のことを不動態といいます。不動態になりやすい金属には、クロムのほかにアルミニウム、ニッケル、コバルトなどがあります。鉄も純度がとても高いものは不動態をつくります。

*3:変化の様子はこちらをご覧ください。

2006-10-03

[][] 蛙の手がもみずる秋〜定山渓の紅葉〜  蛙の手がもみずる秋〜定山渓の紅葉〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク

 札幌から国道230号線を南へ向かって車で40-50分走ると定山渓に着きます。そこには、札幌の奥座敷といわれる温泉街があります。定山渓では、10月になると紅葉が始まります。木々は赤や黄色に着飾って秋の装いをこらします。

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 紅葉は「モミジ」と読むことができます。元々モミジは、「もみず(紅葉づ)」という、葉が紅葉または黄葉することを意味する動詞からできた言葉です。紅葉の代表選手はイロハカエデ。カエデの葉の形は蛙の手に似ています。そこから「蛙手(かえるで)」がつまってカエデになったといわれています。植物学的には、モミジとカエデの区別はなく、すべてカエデ科に属します。


 さて、こうした美しい紅葉が楽しめるのは、日本が、温帯地域を中心とする気候帯*1に属しているからです。そして、紅葉は、主に温帯地域に自生している木の生存戦略の一つである落葉性に大きく関わっています。四季がはっきりしている気候帯で、落葉樹が葉を落とすのには、どのような戦略が隠されているのでしょうか?

 葉は光合成を行う大切な器官ですが、葉を作るのにも、葉を維持するにもコストがかかります。葉はせっせと光合成をして、このコストをまかなう以上の栄養物を生産しなければ存在意義がありません。

 ところが、温帯地域では気温の低い冬が巡ってきます。冬には光合成効率が悪くなり、葉を維持することはコスト的に合いません。そのため秋に一旦、葉を落として、冬は休眠し、春に再生する落葉性が適しているのです。これに対し、熱帯地域では一年中気温が高いので、葉を落とさずに、一年を通じて日光を受け止める常緑性が適します。また、亜寒帯地域では、冬の低温に加えて、夏も気温が上がらないために、ひと夏の光合成生産では葉の再生コストをまかなうことができません。そのため寒さに強く、維持コストの低い葉を作って常緑にした方が得になります。*2


 葉を落とすときのプロセスは複雑です。そして、この過程で葉の色が変化します。


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1.まず気温が下がって、光合成効率が悪くなると、葉の付け根と茎の間に、離層(りそう)と呼ばれる層ができます。この層により、葉と茎との間の栄養分の通路がふさがれます。この時期までの葉の色は緑色です。これは葉緑体の中にあるクロロフィルという緑色の色素のためです。葉緑体の中にはカロチノイドという黄色の色素もあるのですが、クロロフィルに比べて8分の1しかないので、目立ちません。


2.栄養分の通路がふさがれると、光合成でつくられたでんぷんが行き場を失い、葉の中にたまります。でんぷんは糖に分解され、この糖を材料として、アントシアンという赤色の色素が作られる葉*3があります*4。また、合成するための遺伝子がなかったり、この時期には発現しないためにアントシアンが作られない葉もあります。その一方、気温が低くなる*5と、クロロフィルをはじめとして、葉の細胞内容物の分解が進みます。分解によって生じる、窒素、リン、カリウムなどの元素は、回収されて他の器官で再利用されます。これは落葉前の木にとって大変重要な作業です。


3.アントシアンがつくられた葉は、赤色の葉になります*6。アントシアンがつくられなかった葉は、クロロフィルが分解されることにより、隠されていたカロチノイドという黄色の色素が目立つようになり、黄色になるのです。

 やがて、紅葉の盛りが過ぎると、葉の付け根にできた離層で、細胞壁を溶かす酵素がつくられます。この酵素の働きで細胞壁が弱くなると、水分の通路が切れてしまいます。そうなるともはや葉は茎に留まることができなくなって落葉します。


 こうしてみると、落葉のプロセスというのは、葉の有効構成成分を分解して、回収再利用するための執行猶予期間と見ることもできそうです。落ちた葉にしても、やがては微生物によって分解されて腐葉土となり、次の世代の新芽や若葉や種子のための養分となることでしょう。私たちは、もっぱら赤や黄色に葉が色を変える様子*7に目を奪われ、行く秋を惜しむことに熱心ですが、植物たちは、その裏で資源の再利用を粛々と行い、来年の春のための準備をすでに始めているようです。

(文・写真: 中村滋、図: 中村景子)

【住所】

札幌市南区定山渓温泉

【アクセス】

自家用車で

  • 国道230号線を札幌市中心街から南へ約40分

バスで

  • 札幌駅南口バスターミナルより じょうてつバス「定山渓温泉」行き、料金750円、所要時間約1時間15分、1時間に2〜3本
  • 市営地下鉄南北線真駒内駅より じょうてつバス「定山渓温泉」行き、料金600円、所要時間約50分、1時間に1〜2本

【参考文献】

  1. 『朝日百科 植物の世界13 植物の生態地理』朝日新聞社、1997
  2. 『朝日百科 植物の世界3 種子植物 双子葉類3』松下まり子「紅葉と落葉」pp158-160、朝日新聞社、1997
  3. 大井次三朗他編『モミジとカエデ』誠文堂新光社刊、1968
  4. 八田洋章『木の見かた、楽しみかた ツリーウォチング入門』朝日選書、1998
  5. 増田芳雄他『絵とき 植物生理学入門』オーム社、1988

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*1:厳密には、北海道と、本州の高原地帯は亜寒帯地域。火山列島、南鳥島、沖ノ鳥島、波照間島、沖大東島の5地域は熱帯地域。それ以外の日本の地域は温帯に属します。

*2:実際には、植物の種によって、ここで説明した性質の表れ方が異なりますし、過去の地球の気候変動の履歴を引きずっているために、同じ地域でも、常緑樹と落葉樹が同居します。また厳密には亜寒帯地域に分類される北海道にも落葉樹は存在します。しかし大きくみれば、低緯度と高緯度地方で常緑性が多く選択され、中緯度では落葉性が現れるのです。

*3:落葉期に、アントシアンがなぜつくられるかについては、専門家の間でも意見は一致していません。一方、若葉の紅葉現象というものがあり、やはりアントシアンが作られるのですが、こちらの方は、葉緑体を紫外線から守り、日光を吸収して温度を上げるためとされています。

*4:もうひとつ、同じ仕組みによってタンニン系の褐色の色素が作られる葉があります。

*5:最低気温が8度を下回ると、紅葉がはじまり、5-6度以下になると紅葉のスピードが速くなると言われています。

*6:タンニン系の物質が作られた葉は褐色になります。

*7:一般に良い紅葉になる条件は、3つあります。昼と夜の寒暖の差があること。日光。そして湿度です。昼、暖かいとよいのは、残された葉緑体による光合成によって、アントシアンの原料となるでんぷん(糖)が葉の中にたくさん溜められるからです。夜、寒いとよいのは、クロロフィルの分解が低温ほど進むことと、低温の方が植物の呼吸が少なく、溜まったでんぷん(糖)を消費しなくてすむためです。日光は、アントシアンを作るための必須条件であり、湿度は、湿気が足りなくなるとはやくに葉が落ちてしまうからです。

2006-09-28

[][] フライフィッシングで自然とコミュニケーション〜十五島公園〜  フライフィッシングで自然とコミュニケーション〜十五島公園〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク


 国道230号線を札幌から定山渓方向へ走り、カーボーイ藤野店を通り過ぎ三つ目の信号を右折して住宅地を抜けると十五島公園に着きます。十五島公園は豊平川河畔にある清らかな渓流と渓谷美が見られる公園です。園内には炊事場があり、渓谷を眺めながら野外で食事ができるので、遠足で人気のスポットです。また、公園脇を流れる豊平川ではニジマスやヤマベといった渓流釣りで人気のあるマス科の川魚を釣ることができることから、魚釣でも人気スポットです。今回は、釣りの技法の一つ、フライフィッシングについて紹介をします。

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■フライフィッシングとは

 魚釣りの方法には、えさ釣り・ルアーや毛ばり釣りなど様々な方法があります。中でもフライフィッシングは十数年ほど前から楽しむ人達が増え、釣具屋さんにもフライフィッシングの道具が一般的に置かれるようになりました。

 フライフィッシングは、フライとよばれる毛ばりをフライラインという特殊な釣り糸につけます。そして、釣り糸を収納してあるリールを付けたフライロッドと呼ばれる専用の竿で、フライを魚のいそうなポイントまで投げ入れます。この動作をキャスティングといいます。キャスティングで自由自在にラインを操り、自分の思い通りの場所にフライを投げ入れるためには、少しの熟練を要します。

■フライの種類について

 フライはフライフィッシングで最も重要なアイテムです。釣具屋さんのフライフィッシングコーナーには、形・大きさ・色合など実に多種多様の美しいフライが置かれています。

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 フライ(毛ばり)は疑似餌と呼ばれ、鳥の羽や動物の毛などを利用して、魚が補食している生き物に形や色を似せて作られています。現在では、魚・エビやカエルの形に作られたフライもありますが、古くからあるフライ(Fly)はその言葉が表すとおり昆虫の形を真似て作られたものです。


 これらのフライは、一体どんな昆虫をモデルとして作られたのでしょうか。北海道のフライフィッシングで最も人気がある対象魚のヤマベやニジマスなどのマス科の魚を釣るフライを例に見てみましょう。

 マス科の魚たちを釣るためのフライのモデルとなっている代表的なものは、カゲロウ目(メイフライ)・トビケラ目(カディス)・カワゲラ目(ストーンフライ)・ユスリカ目(ミッジ)の4グループの水生昆虫です。これらの水生昆虫は、季節によって幼虫・さなぎ・成虫といった成長段階は異なりますが、一年を通して存在しています。このことから、マス科の魚の主たる餌となっています。

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さらに、これらの水生昆虫はそれぞれ多数の種から構成されています。地域によって生息している種類数は異なりますが、日本全体ではカゲロウ目が約140種、トビケラ目が約400種、カワゲラ目が約200種、ユスリカ目では約1000種もの種が知られています。同じグループの水生昆虫でも、種が異なると形・色・大きさが異なります。さらに、同種でも幼虫・さなぎ・成虫といった成長段階によって形・色・大きさが異なります。フライは種や成長段階での形・色・大きさの違いを表現して作られています。このことが、多種多様なフライが存在する理由の一つとなっており、一説ではフライの種類は数百万種もあるそうです。

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■フライタイイングについて

 多種多様なフライが存在するもう一つの理由は、フライは簡単に手作りができるということです。フライを作ることをタイイング(tying)といいます。水生昆虫は同じ種類でも地域によって形・色・大きさが異なることがあります。そこで、釣り人達は自分が釣りに出かける地域や川に棲んでいる水生昆虫の種類や特徴をよく観察します。そして、その特徴から最もよく魚が釣れるフライの形・色・大きさを考え、フライを作ります。自分で作ったフライで魚が釣れたときは、格別の思いを味わうことができます。市販されているフライだけでなく、釣り人達がタイイングするオリジナルフライまで入れると、フライの種類は莫大な数となります。

■フライの選び方

 では、このような沢山の種類のフライから、釣り人達は使用するフライをどのように選ぶのでしょうか。まず、川に出かける前に季節や場所から、どのような水生昆虫がどのような成長段階で生息しているか予想して、数種類のフライを準備します。川についたら水生昆虫の観察です。水面に浮かんでいるもの、飛んでいるもの、草や木の枝にとまっているものを観察します。さらに、川の石を裏返し幼虫も確認します。最も多く確認できた水生昆虫は、魚に捕食されている可能性が高いと考えることができます。そこで、多く確認できた水生昆虫の形・色・大きさに最も近いタイプのフライを選択します。また、水温や川の水のにごり具合といった要素も重要です。例えば、水温が高く川の水が透明であれば、魚が活発に行動するので水面に浮くタイプの、反対に水温が低く、川の水がにごっている場合では沈むタイプのフライを選択します。フライの選択が不適切だと、ライズ(魚が水面近くで跳ねること)や魚が泳いでいるのが見えているのにボウズ(さっぱり釣れない状態)となります。

■フライの魅力

 フライフィッシングの根底にある哲学は、自然観察です。地域や川によって、魚や餌となる水生昆虫の生息する種類や生態が異なります。フライフィッシングでは大切なことは、注意深い観察によって得られた知識から川全体の環境や生物同士のつながりを理解することです。その理解を元にオリジナルのフライを作ることや、使用するフライを選択するといった行為を通して魚に問いかけます。自分の知識や理解の通りに魚が釣れたとき、自然とのコミュニケーションが成立したような気持ちになります。また、その川の自然全体に強い愛着を持つこともできます。と同時に自然は必ず人間の知識や理解を超えた結果をもたらすことがしばしばあります。そんな時には自然の不思議さや懐の深さを感じることができるのです。フライフィッシングの魅力は、魚を釣ることにより自然に対する愛着・不思議さ、自然の懐の深さをリアルに感じることができるところなのです。

(文:三浦久和)

【アクセス】

  • 地下鉄真駒内駅前からじょうてつバス真駒内線[12]定山渓車庫前・豊滝行乗車,「十五島公園」下車,徒歩15分

【住所】

  • 南区藤野108地

※北海道内水面漁業調整規則により4〜5月はヤマベは禁猟です。

※釣り針や釣り糸の放置は野生動物にとって大きな脅威です。いつまでも魚たちと遊んでもらえるように、後始末をしっかりしましょう。

【参考文献】

  1. 「フライフィッシング・ハンドブック」 デイヴ・フィットロック著 翔泳社
  2. 「英国のフライフィッシング史」 椎名重明 著 つり人社

【引用・参考リンク】

※記事の中の写真「代表的なフライのモデルとなっている生昆虫たちの」の水生昆虫の画像は、上記サイトから引用させていただきました。

【謝辞】

 写真の引用を承諾していただいた「フライフィッシングに使う水生昆虫」のHPを運営されている鈴木さんにお礼申し上げます。

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