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お知らせ:2007年3月のCoSTEPウェブ実習の終了にともない、今後当サイトでは定期的なコンテンツの更新は行われません。
ただし今後も実習チームOB有志が、時折新しい記事を追加していく予定ですのでよろしくお願いします。(2007/6/21)

【News】(2008/2/6)優れたブログを紹介する「スゴブロ2008」ベスト20の第3位に選ばれました!
【News】(2007/3/14)『クックブック サイエンス観光マップのすすめ』の配布を開始しました。
【News】(2007/3/1)日経BPのサイト「セカンドステージ」に当サイトの紹介記事が載りました。
【News】(2007/2/7)2月1日の記事にて、公開記事数が100本になりました。
【News】(2007/1/5)はてなの 「こんな人も書いています」コーナーに掲載されました。



2007-05-26

[][]地震予報士の誕生は何時〜FM三角山〜 地震予報士の誕生は何時〜FM三角山〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク


 今回ご紹介する場所は、コミュニティーFM放送局のさっぽろにしエフエムほうそう、通称三角山放送局(FM三角山)です。FM三角山では、CoSTEPが制作している「かがく探検隊コーステップ」を毎週土曜日18時から放送していますので、読者のみなさんもぜひ一度聴いてみて下さい。周波数は76.2MHzです。1998年に開局し、現在はJR琴似駅の駅前にある、洒落たレンガ造りの建物から番組を送り出しています。

f:id:costep_webteam:20070527023023g:image 図1(FM三角山: FM三角山提供)


 さて今回は、FM三角山のようなローカルで小出力なFM放送局を利用して、北海道内で地震予知の研究が行われているというお話です。残念ながらFM三角山の電波はこの研究には利用されていませんが、他の地域のコミュニティーFM放送が利用されています。


 日本でこれまで地震予知研究と言うと、地震そのものの性質や地下の構造など、直接地震を予知する、というよりはもっと基礎的な研究が主として行われてきました。これは、地震や地下の構造について我々の知っている情報がまだまだ少ないという現実があるからです。ですから公式に地震をはっきりと予知したことはありません。


 地震の直前に地面が変形するのではないか、と昔から考えられており、特に東海地方では地震直前の地面の変形(地面の変形を地殻変動と呼び、大きな地震の後には数10cm以上変形することもあります)を捉えようと集中して観測が行われています。他の地方でも地殻変動の観測は行われています。しかし、この地震の前に起こると言われていた地殻変動も、地震が起こる前に必ず観測されているわけではありません。かなり大きな地震が起こっても、何の変化も観測されないことが少なくありません。その他にも動物の異常行動などが前兆現象ではないかと話題になることもありますが、科学的根拠は何もありません。地震の後から振り返って、あれは前兆現象だったのではないか、と言っても地震の予知や災害の軽減には何の役にも立ちません。


 ここで、有益な地震予知について考えてみましょう。地震予知が実際に役立つためには、最低3つの要素を予知できなければなりません。その要素とは、地震の起こる「場所」と「時間」、そして地震の「大きさ」です。例えば、「今後1年以内に北海道内に地震が起きる」と言えば100%当たります。しかし、これでは地震予知に成功したとは言えません。北海道内という範囲が広すぎますし、1年以内という期間も長すぎます。また、体に感じないようなごく小さな地震は毎日のように起きているので、地震の大きさに触れず地震が起きる、と言うだけでは何の意味もないのです。


 さらに、地震予知が実用化されるためには、再現性や確実性も確かめなければなりません。再現性とは、誰が観測しても同じような現象が繰り返し観測されるかどうかで、科学的検証の基本になるものです。またここでの確実性とは、地震の前にはある現象が必ず起こるかどうかです。注目している現象が起こらないからと、安心している時に大きな地震が起こってしまうと、油断していた分かえって被害が大きくなる可能性があります。このように有効な地震予知を実現させるまでには、いくつものハードルが待ち構えています。


 それではコミュニティーFM放送をどのように利用し地震予知を研究しているかをご紹介しましょう。


 その前に、ここで地震の大きさと揺れの大きさについて確認しましょう。地震の大きさは「マグニチュード(M)」で表されます。阪神・淡路大震災を起こした地震はM7.3、北海道南西沖地震はM7.8です。マグニチュードは2違うと1000倍エネルギーが違います。ですからM7の地震とM8の地震では規模が30倍以上違うことになります。南西沖地震は阪神の地震より5倍以上大きかったのです。一方、揺れの大きさは「震度」で表されます。いくら地震が大きくても遥か遠くで起きれば揺れはほとんどないこともあります。逆にそれほど大規模な地震ではなくとも、近くで起きれば揺れは大きくなります。また震度はその土地の地盤によっても大きく異なります。埋立地などでは通常震度は大きくなります。


 さて北海道大学では、道内に図2のような電波観測施設を6ヶ所設置しています(2006年3月時点)。この施設で毎日いくつかのコミュニティーFM局の電波を観測し、データを北海道大学に送っています。

f:id:costep_webteam:20070527023305g:image 図2(電波観測施設: 森谷研究員提供)


 コミュニティーFM放送の電波出力は弱いので、比較的狭い範囲でしかその放送を聴くことができません。例えば、FM三角山の場合は、札幌市の外ではよほど条件が良くないと聴くことができません。ところが地震の前のある期間には、普段は電波が届かず、放送を聴けないはずの遠くの場所でも放送をキャッチできることがあるのです。ここでは、この普段は捉えられない電波を捉えることを、「電波の異常」と呼ぶことにします。北海道大学の観測点は、普段はその地点で聴けない放送局に周波数を合わせ、じっとその電波が届くのを待っているのです。


 地震の起こる数週間前から約10日前までに、観測地点での震度が大きいほど、長期間、電波の異常が観測されます。観測地点での揺れが大きいほど、早いうちから異常が観測され、異常が終わってから10日程度で地震が起こるということになります。何故地震の前に電波が遠くまで届くのか、残念ながらこのメカニズムはまだはっきりと解明されていません。この研究の歴史も浅く、現象が確かに存在するとはっきりしてきたのが数年前のことなのです。現在は、震源域(地震は地下の断層が動くことによって起こり、その断層がある地上部分を震源域といいます)上空になんらかの電波を反射させるものができるのではないかと考えられています。つまり普段電波の届かない場所に、電波が上空で反射してやってくるのではないか、ということです。


 これまでの観測から、観測点での最大震度と電波の異常が観測される期間について経験式ができてきました。この経験式を利用し、観測地点の震度が予測できるかもしれないのです。


 余談ですが、「直下型地震」と言う言葉は学問の世界では使わない言葉なのですが、都市の直下で大きな地震が起きれば大変な被害が出ることは容易に想像できます。


 今回ご紹介しているFM放送を利用した地震予知の研究では、この震度が予測できるのではないかと考えられています。震度が予測できるということは、遠くて大きな地震が起きるか、近くて小さな地震が起きるかまではわからない、ということです。しかし実際の被害は震度に大きく影響されますから、我々がまず知らなくてはならないのは震度なのです。震度が予測できるということには、大変重要な意味があるのです。


 今回は地方のコミュニティーFM放送を使って地震予知の研究がおこなわれているということを紹介しました。本文では研究紹介として概要のみを記載しました。さらに詳しいことを知りたい方は北海道大学地震火山研究観測センター森谷研究員が書いた解説を見てください。


参考:

http://nanako.sci.hokudai.ac.jp/~moriya//fm.htm

(文:ひるあんどーん)


取材協力:さっぽろにしエフエムほうそう

所在地:札幌市西区八軒1条西1丁目2−5

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2007-05-01

[][] 札幌に春を告げる水しぶき〜大通公園西三丁目〜  札幌に春を告げる水しぶき〜大通公園西三丁目〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク




  雪に埋もれていた大通公園もすっかり雪がなくなりました。札幌市中心部の東西に延びるこの公園内では、ベンチ、花壇、そして噴水と春を迎える準備が急ピッチで進められています。大通り公園には、壁泉一カ所と噴水五カ所があります。壁泉とは、ビルや庭などの壁面を水が流れ落ちる滝のようなものをいいます。西二丁目にある壁泉は長さ33メートル高さ1.8メートルあり、清涼感のある「せせらぎの水音」を再現しています。また噴水は、大通り西三丁目、四丁目、七丁目、十一丁目、十二丁目の5箇所にあります。


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(大通り西二丁目の壁泉 2007/4/29撮影)              (大通り西三丁目の噴水 2007/4/29撮影)



【大通公園で一番古い噴水は】

  大通り西三丁目には、一番最初に噴水が取り付けられました。最初に取り付けられたのは、昭和37年で、地元銀行の記念事業の一環として札幌市に寄贈されました。その後、大通公園リフレッシュ工事(平成元年〜6年)に新しい噴水が取り付けられて、現在に至っています。よく見ていると、噴水がさまざまな形に変化していくことがわかります。静水面に始まり、噴き上げ→水の浅海→水柱の立ち上がり(6メートル)→水柱の分割→水柱の立ち上がり(最大10メートル、通常8メートル)→水柱の下降、そして静水面にもどるという流れになっています。この1サイクルに約15分かかります。これを145本のノズルから噴き上げる水によって作り上げられています。水はポンプでくみ上げられています。



【噴水とは】

  では、噴水とは一体どんなものでしょうか。広い意味では、池や湖などに作られた水を噴出する装置のことをいいます。また、噴出する水そのものを示すこともあります。しかし、いずれも人工的なものを示し、滝や間欠泉のような自然のものは含まれません。鑑賞用噴水の最古のものは、紀元前1000年ころとも言われていますが定かではありません。紀元前百年ころには、アレキサンドリアのヘロンが「サイフォンの原理」を応用して「ヘロンの噴水」を考案したと言われています。これには、動力は使われていません。では、どのようにして、噴水は高く上がるのでしょうか。

  今回の記事では、この「サイフォンの原理」と「ヘロンの噴水」について紹介します。


【サイフォンの原理】

  まずは、サイフォンの原理を考えてみましょう。サイフォンというと、コーヒーメーカーのサイフォン式を思い浮かべる人が多いでしょう。また、もともとの意味は、低い位置に液体を移すU字管そのものを示します。 しかし広い範囲で考えると大きく分けて三つの意味があります。

(1)コーヒーメーカーとしてのサイフォン

(2)液体(この場合は水)を一度高い位置に上げてから低い位置に移すしくみ

(3)(2)の逆で、一度低い位置に下げてから高い位置に移すしくみ

  いずれもサイフォンなのですが、実はその原理は違います。それぞれについて詳しくみてみましょう。


●(1)コーヒーメーカーとしてのサイフォン●

  サイフォン式コーヒーメーカーは、フィルターを載せてその上にコーヒー粉を載せるロートと、最初に水を入れて最終的にコーヒーの受け容器となるフラスコの大きく二つに分けられます。フラスコを下から熱することで、水が沸騰して気化して膨張し、フラスコ内の気圧が上がります。すると水(湯)は、より気圧の低いロートへと流れていきます。その後フラスコを暖めるのを止めると、フラスコが冷めてロート内よりも気圧がさがるため、コーヒーが落ちてきます。

  つまり、加熱と非加熱を繰り返すことによって、上下の気圧に変化が生まれて、水は気圧の高いほうから低いほうへと移動するのです。



  また、(2)(3)のサイフォンは、下のような図で表すことが出来ます。水の移動は、水面にかかる圧力やエネルギーの差によって決まります。


●(2)高い位置を通過するサイフォン●

  図のように、水が十分に詰まった管を使って、高い場所にある水を一端高い位置にあげてから低い場所に移すしくみをサイフォンといいます。身の回りの現象としては、灯油を別の容器に移し替えたり、浴槽や水槽の水をホースを使って、ポンプなどを使わずに別の容器に移すことなどがあります。

では、なぜ水はポンプなどが無くても、流れ出てくるのでしょうか。これは、それぞれにかかる圧力の差が問題になります。

  図に示すように、Aの水面から管Bまでの高さをh1(m)とし、U字管の出口の方Cを、入口側の液面より高さh2(m)低くします。また、大気圧をP0とし、水の密度をρとし、重力をgとします。そして、入口側Aの水面を高さゼロと考えます。つまり、基準面と考えます。そうすると、A,CのU字管にかかる圧力は、次のようになります。

P 1= P0+ρgh1

P 2= P0+ρgh1- ρgh2

  つまり、P2はP1よりρgh2だけ位置エネルギー*1分の圧力が低いため、水は、AからCに流れるのです。

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●(3)低い位置を通過するサイフォン(逆サイフォン)●

  逆サイフォンと呼ばれるこのしくみは、高い場所にある水を一旦低い位置に下げてから最初よりも低い場所に移す仕組みです。原理は同じで、U字管が逆向きになっていると考えることができます。このしくみは、昔の用水路などに利用されており、金沢の兼六園から城への用水路などは、この逆サイフォンの原理が使用されています。

  基準面を先ほどと同じくAの水面とします。そうすると、Aの水面からU字管の一番深いところまでの高さをh1(m)とし、AとCの水面の差をh2(m)とします。(2)と同じようにことが出来ますが、基準点がAの水面なので、

P 1= P0

Cでは、水が流れ出てくるAと同じ高さまで、水面が上昇することができます。

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【そして、噴水の原理へ】

  この逆サイフォンの原理を応用して考案されたのが、「ヘロンの噴水」です。

  へロンの噴水は、3個の容器と3本の管によって構成されています。容器は、上から受け皿と密閉容器の容器(A)と容器(B)、そして、水通し管、空気通し管、噴水管の3本です。使い方は、次のようになります。

  まず、容器(A)に水を入れ、容器(B)は空気のみにしておきます。その後、受け皿に水を注ぎいれると、噴水管から水が噴出し、噴水が始まります。ここで、受け皿に水を注ぎいれるのをやめても、噴水は止まりません。それは、噴水管から出た水は、受け皿に落ちるので、それが水を注ぎいれるのと同じ状況を生むからです。この状態で、容器(A)の水が無くなるまで、噴水は継続します。

  この時、装置の中では、どのようなことが起きているのでしょうか。基本的には、「低い位置を通過するサイフォン」と同じしくみです。力(圧力や位置エネルギー)の伝わり方は、図の赤い矢印で示しています。

受け皿から水通し管を通って容器(B)に水が流れ込むと、容器(B)の空気は、空気通し管を通って、容器(A)の水面に圧力をかけます。そのため水は噴水管を通って、外に噴き出すのです。噴き出した水は、受け皿にたまり、また容器(B)に流れていきます。

また、噴水管と水通し管の内径を変えることで、噴水の高さや継続時間を変化させることができます。

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【今年も始まる】

  今年も大通公園の噴水の通水が始まりました。現代の噴水は、大掛かりで水柱の高さも高く、モーターなどを動力としています。また大通西三丁目と四丁目では、水中照明による夜間照明もあります。循環する水の衛生面も考慮されており、塩素自動注入機も導入されるなど、様々なシステムが導入されています。

  次々に変化する水しぶきの様子を見ることは、子どもだけではなく大人もわくわくするものです。「動力のいらない『ヘロンの噴水』だったらどのくらいの規模の仕掛けがあれば同様の高さの噴水を楽しむことが出来るのか。」噴水のそばのベンチに腰を下ろして考えてみるのも面白いかもしれません。

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(大通公園西3丁目 2007/4/29撮影)



(文・図・写真: かみむらあきこ)



  • 【住所】   札幌市中央区大通西3丁目
  • 【アクセス】 地下鉄南北線・東西線東豊線6番出口より徒歩1分

 【参考資料】   

 -ガリレオ工房の身近な道具で大実験        大月書店

 -のぞいてみよう!科学の世界            札幌市青少年科学館

 -高等学校物理機                    〃捨售

 -噴水     Wikipedia

 -サイフォン  Wikipedia



 【取材協力】

  札幌市大通公園管理事務所 様

                    取材のご協力ありがとうございました。

 



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*1:物理の分野では、エネルギーとは仕事をすることの出来る能力のことをいいますが、その仕事とは「仕事=力の大きさX動いた距離」で表すことができます。位置エネルギーとは、高いところにある物が持つエネルギーのことをいいます。物はある高さがあってもそのままでは重力によって下に落ちてしまいますが、反対方向に重力と同じだけの力で支えることでその高さにとどまっていることが出来ます。その力は、物の質量と重力で表されるため、位置エネルギーは「位置エネルギー(仕事)=質量X重力X高さ」で表すことができます。

2007-03-04

[][]水の恩恵ここにもあった〜茨戸川のワカサギ釣り〜 水の恩恵ここにもあった〜茨戸川のワカサギ釣り〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク


札幌北部を流れる茨戸川は、冬期間(1月〜3月上旬)に厚い氷で水面が覆われる場所があります。そこでは、多くの釣り人が氷に穴を開けてワカサギの穴釣りを楽しんでいます。ワカサギは成魚になっても15cm程の小魚で、湖や汽水域*1に生息しています。天ぷらやフライなどにして食べると、とても美味しい魚なので冬季間の釣りの対象魚として人気があります。

ワカサギ釣りが盛んな茨戸川は、もともとは石狩川の本流でした。しかし、曲がりくねった石狩川の流れを直線化する河川改修が行われ、その際に現在の茨戸川が石狩川の支流として残されました。大きく蛇行する茨戸川の流れは非常に緩やかで、場所によっては雨が降ったときにしか流れが生じない場所もあり、湖沼のような環境になっています。

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筆者が釣りに行った2月の中旬のある日の気温は1.9℃、国道337号線・生振大橋下では氷の厚さが約45cmほどです。ドリルで穴を開けて、釣り糸を垂れると、氷の下から元気なワカサギやウグイが釣り上がってきます。


さて、元気なワカサギやウグイ達が棲んでいる氷の下の水はどれくらい冷たいのかと思い、温度計で水中の温度を測ってみました。

測定地点の水深は約5mです。すると、水面近くでは約0.5度、川底の水温は約3℃となっていて水面近くの温度が低く、川底の方の温度が高くなっています。

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お風呂や夏のプールでは、水面近くの温度が高く、底のほうの温度が低くなっていることはよく知られています。しかし、氷の下では水面近くの温度が低く、底のほうの温度が高くなっていて、ちょうどお風呂やプールの逆の状態になっています。同じ水同士なのに何故このような違いが生じるのでしょうか。



それは、水の温度による密度変化の特殊性が原因となっています。

 物質は、温度によって密度*2が変化します。一般的な変化の傾向は、温度が低くなればなるほど、密度が大きくなります。したがって物質の三態でいうと、同じ物質間であれば気体より液体、液体より固体の方が密度は大きくなります。


ところが、水は他の物質と比べ非常に特殊な密度変化をします。グラフのように温度が約4℃(正確には3.98℃)のとき密度が最も高く(0.999973g/cm3)、温度がそれ以上低くても高くても密度が小さくなる性質を持っています。特に水が固体となった氷になると密度が大きく減少するので、氷が水に浮くことになります。(さっぽろサイエンス観光マップ北極の未来は〜円山動物園〜 参照)

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水は私達にとって非常に身近でありふれた物質ですが、温度変化に伴う密度変化は他の物質と比較すると非常に特殊な性質を持っているのです。


この水の性質によって、生物にいくつかの恩恵を与える現象が起こります。

 

ひとつは、湖や沼は底から凍るのではなく水面から凍ることです。冷えて密度の小さくなった水は水面近くに上昇し、水面から凍っていきます。水面を覆う氷は、お風呂のふたのような働きとなり水中の熱を逃げにくくします。このことにより湖沼の完全凍結がしにくくなります。生物は凍結による死滅の危機から守られます。


ふたつめは、水中の上層部と底層部で水の循環が起こることです。この循環は、次のような仕組みで起こります。

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〜瓦討凌綽爾硫硬戮4℃以上のときに、表層部の水が冷やされて低層部へ沈むことで起こる循環で秋季に起きる。

∩瓦討凌綽爾硫硬戮4℃以下のときに、表層部の水が温められて低層部へ沈むことで起こる循環で、春季に起きる。

この2回の循環により、水中の底の方に沈んでいる栄養分が表層まで運ばれます。光が良く届く表層に栄養分が運ばれることにより、光合成を行なう植物プランクトンが繁殖しやすくなります。植物プランクトンは様々な動物の餌となり豊かな生態系が成り立ちます。

  水の温度による密度変化の特殊性により、私達人間もワカサギの穴釣りをすることが出来ます。とても楽しいワカサギの穴釣りをしながら、多くの水がこの地球にあることに感謝しようと思います。この日、隣で釣っていた人はなんと200匹も釣り上げていました。ちなみに、筆者の釣果は……!?


ちょっと感謝が足りなかったようです。


(文・写真・図:三浦久和)

【アクセス】

  • 国道377号線・生振大橋下

【住所】

  • 札幌市北区篠路町篠路

【参考文献・参考リンク】

  1. 水の密度表

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*1:淡水と海水が混じりあう水域のこと

*2:単位体積(普通は1cm)当たりの質量(g)を表し、物質を構成する原子や分子の詰まり具合と関係している

2007-02-16

[][][] FISノルディックスキー世界選手権大会がやってくる! 〜 白旗山競技場、札幌中島体育センター 〜  FISノルディックスキー世界選手権大会がやってくる! 〜 白旗山競技場、札幌中島体育センター 〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク

(白旗山競技場)

(札幌中島体育センター)


2/22から3/4の11日間にわたって札幌にFISノルディックスキー世界選手権大会がやってきます。


ノルディックスキーとは、ジャンプ、クロスカントリーと、この二つを組み合わせたノルディックコンバインド(複合)の総称です。


ダイナミックなジャンプ*1に比べるとクロスカントリーはあまりなじみがないのではないでしょうか。

クロスカントリーとは、スキーを履いて起伏のあるコースを滑走し、そのタイムを競う競技です。コースの距離は1200mから50km(女子は最長30km)に及び、陸上の中長距離走のスキー版と考えればよいでしょう。


クロスカントリー競技が行われる会場のひとつが、清田区にある白旗山競技場です*2。白旗山競技場は札幌の中心部から車で一時間ほど走ったところにあり、スプリント用のトラックと、山林の中を走る25kmの距離用のコースがあります。今は大会準備の真っ最中で、選手と思しき人が練習に励んでいました。


f:id:dinosauria:20070121200251j:image

  • 白旗山競技場のトラック

というわけで、今回は白旗山競技場をクロスカントリー競技と関係の深い、「歩くスキー」*3で歩いてみてレポートしようと思っていたのですが・・・


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  • が〜ん

白旗山競技場の方に聞いてみると、中央区にある中島公園の札幌中島体育センターで、歩くスキーが無料で借りられると教えて頂いたので、早速行ってみました。


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  • 札幌中島体育センターの歩くスキーコース

「歩くスキー」のスキー板や靴を良く見てみると、普通のスキーと異なる部分がいくつかあります。


そのひとつが、スキー板の裏面につけられたうろこ状の模様です。


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  • 歩くスキーでは、靴のあたりの裏面にうろこ状の模様がつけられています

もうひとつの違いが、歩くスキーでは、スキー靴が柔らかく、つま先だけが固定され、かかとを浮かせることができることです。


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  • 歩くスキーでは、かかとを浮かせることができます

これらの構造の違いは、スキーで「歩く」ことと、どう関係しているのでしょうか。スキーを借りて、よちよち歩きで滑りながら考えてみました。


まず、歩くスキーを履いて歩いてみると、スキーは後ろにはほとんど滑らないことがわかりました。これはスキー裏面のうろこ状の模様のためだと考えられます。この模様は、前に向かっては緩やかに傾いていますが、後側は切り立った刻みがつけられていて、雪をかみやすい構造になっています。


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  • スキー板のうろこ状の模様の役割

このため、歩くスキーは前には滑りやすく、後ろには滑りにくいつくりになっています*4


しばらくどたばたと滑っていると、滑り方のコツのようなものがつかめてきました。例えば、下の図のように左足で体を前に押し出して勢いをつけた後に、右側のスキーに体を乗せると、スキーがつーっと滑ってゆきます。左右交互にこれを繰り返すと、スムーズに前に進めることがわかりました。


歩くスキーを履いて右足を前に踏み出すと、左足はかかとが上がり、スキーを後ろに押し出そうとします。しかし、スキーが後ろに滑りにくく、左足の位置はほとんど動かないため、反動(スキーを後ろに押し出そうとした力の反作用)で体は前に向かって押し出されます。


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  • 歩くスキーが前に進むしくみ

力が与えられて速度がついた物体(このときはスキーを履いた人になります)は、その速度と向きを保ったまま進みつづけようとします(慣性の法則と呼ばれています)。このため、踏み出してしばらくの間は、スキーが前に進みます。

スキー板と雪の間には摩擦があるので、速度は次第に小さくなり、やがて止まるのですが、うまく滑れるようになると、普通に歩くときの歩幅より長く一歩で進めるようになります。


中島公園で歩くスキーをしている間、ずっと雪が降っていました。たまたま黒いフェルトの手袋をしていたので、手袋の上に落ちた雪の結晶はしばらく溶けず、じっくりとその形を見ることができました。

寒く厳しい札幌の冬は外に出るのも億劫になりがちですが、じかに自然と触れ合うときにだけ、自然が見せてくれるものもあるのです。


ノルディックスキー世界選手権大会では、世界のトップアスリートたちは、白旗山でどんなレースを見せてくれるのでしょうか。大会中にクロスカントリー競技を見たときには、選手の表情や駆け引きと共に、その足元にもちょっと注目してみてください。


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  • 手袋に降った雪の結晶

(文、図、写真:佐藤登志男)


【アクセス】

  • 白旗山競技場
    • 札幌市清田区真栄502
    • 地下鉄東豊線「福住駅」下車、中央バス福87「白旗山競技場入口」から徒歩30分
    • 大会中は無料のシャトルバスが運行されます

  • 札幌中島体育センター
    • 札幌市中央区中島公園1-5
    • 地下鉄南北線「幌平橋駅」下車 1番出口から徒歩5分

【参考リンク】

  1. 2007年FISノルディックスキー世界選手権札幌大会公式ホームページ 
  2. ウェブシティさっぽろ 2007年FISノルディックスキー世界選手権札幌大会 

【参考文献】

  1. ヨコヤマ・ノルディックスキー・スクール編著 歩くスキー 成美堂出版(1975)
  2. 今村 源吉 歩くスキー・装備・ワックスから楽しみ方まで 北海タイムス社(1976)
  3. 岩岳スキースクール編著 クロカンスキー入門 スキージャーナル(1982)
  4. R. クロフォード=カリー クロスカントリースキー入門 ベースボールマガジン社(1984)


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*1:「さっぽろサイエンス観光マップ」にはスキージャンプについての記事もあります。詳しくはこちら 「世界ノルディック大会に向けて 〜札幌ウインタースポーツミュージアム〜 」 とこちら 「スキーと体の揚力で飛ぶ 〜大倉山ジャンプ競技場〜」 をご覧ください。

*2:もうひとつは札幌ドームです。なんと、ドーム内に雪を持ち込んで、屋外とつないで競技を行うようです。

*3:「歩くスキー」は冬の野山をスキーで散策するものですが、この用具をスピード競技用に改良し、いわば「走るスキー」としたものがクロスカントリースキーといえます。

*4:うろこ状の模様をつけるかわりに、雪が食い込むように厚くワックスをかけたり、毛皮を貼ったりすることもあります。

マツウラマツウラ 2007/02/22 01:23 佐藤さま、HBNから来ました。素晴らしいブログですね。是非、TBお願いします。僕もこのブログを紹介させてください。

佐藤登志男佐藤登志男 2007/02/22 19:47 北海道♥ブログネットワークのマツウラ様、トラックバックご了承いただきありがとうございます。私達のブログも紹介していただければうれしいです。よろしくお願いします。

2007-02-13

[][][] 単なる単位の簡単物語〜JR札幌駅〜  単なる単位の簡単物語〜JR札幌駅〜 - さっぽろサイエンス観光マップ を含むブックマーク




 札幌駅の南側に気温を表示する大きな電光掲示板があります。


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筆者は通勤で毎朝この前を通ります。冬や夏には、朝から見るのも嫌になるような気温が表示されることもありますが、街中や道路沿いの気温表示は、路面が凍結しているかどうかの目安として、特に冬の運転には有難い情報です。


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 この気温や温度を日本では[℃](摂氏度)で表します。アメリカなどでは[ºF](華氏度)*1を日常で使用しています。さらにまた物理の世界では、温度は[K](ケルビン)*2で表します。この[K]という単位は、日本も加盟している国際度量衝総会(メートル条約)で定められた基本単位(SI単位)で、加盟国では原則として基本単位を基にした単位系(SI単位系)ですべての物理量を表さなければいけないのです。しかし現実にはSI単位系だけを用いると、日常生活に不便や混乱があるので慣用的単位も使用されています。基本単位は全部で7個あります。[K]以外の基本単位は、[m](メートル、長さの単位)、[kg](キログラム、質量の単位)、[s](秒、時間の単位)、[A](アンペア、電流の単位)、[cd](カンデラ、光度の単位)、[mol](モル、物質量の単位)です。


 それぞれの基本単位の定義は科学(特に測定技術)の進歩とともに変化しています。例えば長さの基本単位である[m]は、最初メートル原器という金属製の棒を作成して基準としていました。現在では、光が真空中を1秒の299792458分の1の時間に伝わる距離と定められています。


 日本では1991年に日本工業規格(JIS)が完全に国際単位系準拠になりました。それにともなって、身近なところでも記載がかわりました。それ以前は車のカタログではエンジン出力に「馬力」という表示がされていました。しかし最近は「kW」で表されています。また天気予報で以前は気圧を「ミリバール」で表していました。現在では「ヘクトパスカル」で表しています。


 慣用的単位には用途を限定して正式に認められているものもあります。例えば、ダイヤの「質量」はカラット*3が用いられます。カラットは宝石の質量を表す時だけ使用が認められています。自動車の「速さ」も本来なら、基本単位の組み合わせで「秒速何メートル、[m/s]」と表さなければいけませんが、私達は日常「時速何km、[km/h]」と1時間に何km進むかで表しています。これは[秒]と[m]だけでは計算の桁数がどんどん大きくなって不便だからです。皆さんは「100kmの距離を時速40kmで進むと何時間かかるか?」という問題の答えは2.5時間(2時間30分)とすぐわかりますね。この問題を[秒]と[m」に置き換えて計算してみてください。基本単位では不便なことがすぐ実感できると思います。


 普段全く意識しない単位にも意味や変遷の歴史があるのです。単位について調べてみるのも面白いものですよ。


 えっ?最近は単位が気になってしょうがないですって?そういえば学生さんは単位がかかった季節ですものね。


(文、写真:ひるあんどーん)


参考:理科年表

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*1:[℃]と [ºF]の関係はt[ºF]=1.8×T[℃]+32で表されます。人間の一般的体温36.5 [℃]は97.7[ºF]になります。

*2: [℃] と[K]の関係は0 [℃]=273.15[K]。また温度差1[℃]=1[K]です。

*3:1[カラット]=0.2[g]=0.0002[kg]。


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