セル生産方式のメリットを理解するためには、ベルトコンベアを用いたライン生産方式のデメリットを理解していないといけません。
例えば、パソコンの組み立てを考えてみましょう。
単純化のために...
作業A:マザーボードへのCPU付け 60秒
作業B:マザーボードへのメモリ付け 40秒
作業C:マザーボードへの筐体への格納 50秒
作業D:マザーボードへのHDD付け 30秒
合計、180秒(3分)とします。
つまり、1人で生産した場合、非常に荒っぽい話ですが、1時間3600秒で最大、20台作れるわけです。
では、ライン生産方式で生産してみましょう。
作業Aを、アさん。
作業Bを、ビさん。
作業Cを、シさん。
作業Dを、デさん。
に分担してましょう。
では、一時間に最大、何台作れるでしょうか?
一時間に最大、60台つくれます。
計算の仕方は、3600秒/一番時間がかかる作業=3600秒/作業A:60秒=60台となります。
なぜ、一番時間がかかる作業なのしょうか?
1時間にどれだけの作業を出来るかを計算しますと...
アさん 作業A:60秒:60台分
ビさん 作業B:40秒:90台分
シさん 作業C:50秒:72台分
デさん 作業D:30秒:120台分
となります。
デさんは、120台分(作業D マザーボードへのHDD付け)できるのですが...
しかし、アさんが60台分しか供給できないので、デさんは120台分の作業Dをできません。
60台分しかできません。
そのため、全体の作業結果は、一番時間がかかる作業で決まってしまいます。
さて、1人で生産したら、1時間に20台。対して、4人を投入しているのに、1時間に60台。3倍の生産しかできません。1人当たりで15台。
生産性が下がっています。
これが、ライン生産の難点です。
ライン生産の弱点が発生してしまった原因は、作業と人間を固定化してしまったためです。
そのため、1人の人間がさまざまな作業が出来る多能工とすることにより、ボトルネックを解消させます。
【まだあるライン生産の弱点】
パソコンのDELLのような多品種少量対応を考えてみましょう。
作業B:マザーボードへのメモリ付け 40秒 をメモリを二枚にして、作業B’80秒とします。
作業A:マザーボードへのCPU付け 60秒
作業B’:マザーボードへのメモリ付け 80秒
作業C:マザーボードへの筐体への格納 50秒
作業D:マザーボードへのHDD付け 30秒
合計、220秒とします。
つまり、1人で生産した場合、非常に荒っぽい話ですが、1時間3600秒で最大約16.4台作れるわけです。
ベルトコンベアの場合、3600秒/80秒=45台になります。
3倍も生産できていません。
さらに厄介なのが、ラインのベルトコンベアのスピードです。
作業B'のために、ベルコンベアのスピードを下げないといけません
そもそも、さまざまなオーダーが混ざっている場合、ベルトコンベアの速度を上げたり、下げたり、対処が非常に困難になります。
つまり、DELLのような多品種少量の場合、ライン生産方式は対応が非常に困難になります。
そのため、ライン生産の工場では、Aラインは商品AとD,Bラインは商品BとCなどライン毎に専用化してしまいます。
商品切り替えの時間ロスをありますし、複数のラインを持つなど、中小企業向きではありませんね。
1日100種類のパソコンを組み立てる場合、セル生産なら難なく対応できますが、ライン生産では、非常に困難になります。
【まだまだあるライン生産のデメリット・弱点】
①病気
たとえば、シさんが、風邪をひいて休んだら、どうなるでしょうか?
作業分担を、変えるか、代わりの人を連れてこないといけません。
しかし、作業分担を変えるのは容易ではありません。
セル生産ならば、その日の生産量は落ちますが、代わりの人を連れて来る必要はありません。
②新人さん
作業に慣れていない、新人さんが入ったらどうなるでしょうか。
一番遅い人で決まるので、全体の生産性が落ちる危険性があります。
セル生産なら他者への影響はありません。
③作業ミス
作業ミスをしたとき、ライン全体を止めないといけません。
全員の生産性が落ちます。
セルなら、全員の生産性が落ちることはありません。
④生産の増減
生産が半分になっても、最低4人必要です。人数を減らすためには、ラインの再設計をしないといけません
セル生産なら、調整は容易です。
⑤生産性と評価
ラインですと、評価はライン全体での評価になります。
例えば、作業Dの生産効率を努力して上げたとしても、ライン全体の生産効率は上がりません。
1人セルの場合、生産性は個人単位で判りますので、それ応じて賃金差を付けることが可能になります。
生産性が高い人は高く、低い人は安くと、公平な賃金にすることができます。