ソ連はなぜ崩壊したのか? 中央独裁から地方独裁へ

ソ連はなぜ崩壊したのか? 


経済停滞で崩壊するのであれば、ジンバブエキューバ北朝鮮などはとっくに崩壊しています。
さらに、その後の体制や経済状態を見ますと、ソ連末期よりも悪い経済状況、共産党独裁→個人独裁になっている点からみて、民主主義や経済で説明するのは無理があります。


崩壊する力、遠心力と崩壊しないようにする力、求心力で考えてみます。


・遠心力
 多民族国家

・求心力
 共産主義イデオロギー共産党による恐怖


多民族国家
 ソ連は、多民族国家です。
 しかも、連邦共和国ではなく、共和国連邦という民族国家のあつまりです。
(おもしろいことにウクライナ共和国は国連に加盟していた)
 ロシアはロシア民族中心、カザフスタンはカザフ民族中心、ウクライナウクライナ民族中心です。


 普通に考えますと、オーストリア帝国のように解体して、民族国家で独立していてもおかしくありません。
 バラバラになるのが普通なんです。


 それを、求心力つまり、共産主義イデオロギー共産党による恐怖で無理矢理くっつけていたわけです。


■求心力の崩壊 保守派によるクーデター
 共産主義は経済的な低迷と抑圧により魅力をなくなっていました。
 しかし、共産党による恐怖支配は十分可能でしたが・・・・
 共産党による恐怖支配を終焉させる事件がありました。


 共産党保守派によるクーデターです。
 保守派はクーデターを起こしたのですが、ついてくる人は少数でした。

 保守派を正統な権力と見る人は少なかったのです。
 結果として、これにより共産党中央が分裂してしまい、指揮命令系統がマヒしてしまいました。


 誰が正統性があるか判らないので、誰も乱暴なことはしません。
 サボタージュです。


 保守派が軍を動かし、戦車を動かそうとしても、末端の軍人は言うことを聞きません。
 処刑しろと言われても、それが正式な命令なのか、判らないのですから皆言うことを聞きません。
(正統性と命令系統がしっかりしていた人民解放軍との違いですね)

 KGBも軍もマヒするのですから、共産党による恐怖政治も機能しません。


 しかし、共産党地方支部は、まだ機能していました。
 つまり、各共和国のトップ(当然、共産党員)は正統性・権力を持っていて、指揮命令系統を維持していたのです。
 共和国のトップは、自分を中心にして指揮命令系統を整備していきます。
(というか、ソ連は西側が思う以上に分権国家で、共和国政府が事務処理など実務処理をしていた)


 その後、ソ連が共和国単位で解体、共和国のトップが独裁者になったわけです。


■まとめ
 共産党の内部分裂とクーデターにより中央の共産党の求心力がなくなり、中央共産党独裁体制から、共和国トップによる独裁体制になったから。

90年代ロシア経済の崩壊 ~ソ連とは別の原因

 90年代ロシア経済は崩壊しました。 
 しかし、それはソ連の経済低迷とは別の原因です。
 ごちゃごちゃにする人が多いので困ります。


 90年代のロシア経済の崩壊は、システムの崩壊です。
 システムが崩壊したので、物々交換(バーター取引)が行われていたレベルです。
 ルーブルも信用度が低く、ロシア国内でドルが流通するレベルです。


 なぜ、そうなってしまったのか?


 原因はいろいろありますが、
 まともな金融システムがないし、人材もいないのに経済システムを変更したためです。


 自由主義市場経済の国では、銀行が企業を審査してお金を貸し出します。


 対して、共産主義社会主義経済では、国営企業・公営企業ばかりなので、銀行の審査も形ばかりです。その制度があるかすら怪しいレベルです。
 共産主義社会主義の時代は、不渡りは前提にないので、買うことも売ることもできます。
 発注をすれば質や量、納期はメチャクチャですが、とりあえず商品来るわけです。
 また、買ったからといって金欠になることもありません。


 個人レベルでも、電気ガス水道は使い放題で無料、集中暖房です。当然、メーターなんてありません。


 自由主義市場経済では、そうはいきません。 
 不渡りが存在します。
 商品売りました。でも、お金が入って来ませんは十分考えられるのです。


 市場経済に以降しますと言っても、取引先の企業の信用度が不明なわけですから、買うことも売ることもできません。



 金融システムを機能させようにも、どう制度を運用したら良いのか判っている人材がいません。



 金は天下の回りものと言いますが、お金が回らないのです。
 しかも、そのお金の信用度も低いです。


 当然、物も回りません。
 部品が来なければ、完成品は作れません。素材がなければ部品も作れません。
 何にも作れなければ、売り物もありません。


 悪循環のスパイラルです。
 毎年のように経済がマイナス成長になります。


 これが経済の崩壊です。


 さらに事態を悪化させたのが、共和国の独立です。
 ソ連時代は分業体制だったのに、部品や素材が来なくなったのですから、生産は崩壊します。


 個人レベルでみた場合、当然、電気ガス水道も有料になりますが・・・メーターがありません。そしてメーターを測る人もいません。庶民はそもそも金がありません。多くの家庭は止められたみたいです。
 ソ連時代はガス使い放題だったのに、マッチとマキの世界です。


自由主義市場経済に移行すれば、全てが上手くいくという幻想。
 共産主義社会主義がすべて悪い。
 自由主義市場経済に移行すれば、全てが上手くいくという幻想を持って、経済システムを変更。


 人材もいない。制度も整備されていない、商習慣もないので、当然上手くいくはずもない。


 結果、ソ連時代以下に生活水準は低下して、西側以上に貧富の差が激しい弱肉強食の世界へ。


 この手の勘違いは、現在の日本人も行うのでシャレにならない。



中国経済の崩壊
 中国はすでに市場経済に移行していますので、ロシアと同じシナリオで悪化することはないでしょう。


 バブル崩壊後の日本経済が崩壊しなかったように、中国経済は低迷することはあっても、ロシアのような経済崩壊はないでしょう。