鼻腔への共鳴を練習する方へ
鼻腔は喉の上の位置にあります。 この練習は上に響かせる練習です。 したがって、故意に喉で声を低くしてしゃべっているとこの練習は出来ません。 普通のしゃべり方で練習してください。 練習中生徒さんから声の高低についてご質問が出ましたので(10月16日のブログを参照してください)お伝えいたします。 (喉を開ける練習は発声練習や「ロンリータイガーの練習」で、別に行います。ただ、それをしなくても沢さんは川合メソッド2の練習だけで、こういう音質からこういう英語の音質に変わりました。(出典 オー・ヘンリー「最後の一葉」) 鼻腔への共鳴ができましたので声の響く空間が変わりました。)
今日から川合メソッド2第二部、英語の音質で話す練習を始めます。
9月18日にもお伝えした通り、英語の音質で話すことは、「英語が通じる、通じない」には全く関係ありませんので、興味のない方はする必要はありません。
まず、音質の練習を川合メソッド2に入れることになった経緯をお話しいたします。
昨年10月から娘と歌の練習をしていたことはすでに皆さんにお話し致しました。 娘は平日は帰りが遅いので、土日しか発声練習は出来ませんでした。 週2回の発声練習では、鼻腔への通り道を開けることは出来ませんので、鼻腔に共鳴させた発声は出来るようにはなりません。
歌は鼻腔への通り道が開かないと、きれいに声を共鳴させることはできませんし、声量も出ませんし、音程も安定しません。 ですから鼻腔に共鳴させられないまま歌の練習をしても無駄なのです。
ただ娘は一生懸命、やっていましたので、それではかわいそうだと思い、「土日しか発声練習が出来なくても、鼻腔に共鳴させることは出来ないか」と、私は考えてみました。
2011年7月8日のブログ「機械に発音の判定をさせるということ」を読むと、お分かりのように、私は「聞いた声と同じ声を出させるのは耳の働きだ」と思っています。 ですから発声練習が出来なくても、「耳の力を使って鼻腔への通り道を開けさせることは出来ないか」と考えてみました。
そこで、私のDVDの発声練習2番ニアニアの発声練習の音声を録音して、娘の携帯電話に送り、「お母さんはいつも由紀子と発声練習をしている時に言っているように、軟口蓋を上げて発声しています。 お母さんのこの声がどうやって体から出てきているか考えながら一日一回聞いてちょうだい」と言いました。
それが去年の11月22日でした。 一週間後、11月29日の練習で、娘の鼻腔への通り道がわずかですが開いているのがわかりました。 やはり、聞いた音と同じ音を出すように体を変えるのは耳の力だったと、この時、わかりました。
ただ娘は帰国して10年たったとはいえ、アメリカに4年いたので、彼女の例をそのまま日本の学習者に当てはめることは出来ない、と思いました。
その頃ちょうど、相田さんと沢さんに川合メソッド2の練習をやってもらっていました。 そこで、相田さんに娘と同じ私のDVDにあるニアニアの発声練習の音声を送って「私の体からどうやってこの声が出てきているのか考えながら一日一回聞いてください」とお願いしました。
それが11月29日でした。 そして、2日後の12月1日、相田さんから「違っているかも知れませんが、鼻腔に共鳴させるというのはこういう感じですか?」というメールとともに、相田さんのNの例文の音声が送られてきました。
わずかではありましたが鼻腔への通り道が開いていました。 たった3日聞いて相田さんの鼻腔への通り道が開いたことに私は驚きました。 (相田さんは、50代の女性です) やはり同じ音を出そうと体を変えるのは耳の働きだと確信しました。 それと同時に、発音習得の全般について臨界期仮説が当てはまるわけではない、と私は思いました。 少なくとも、英語の音質で話す鼻腔、口腔の形については、50代でも耳から聞き取って、変えられる、と思いました。
数日後、私はICレコーダーを持って相田さんのところに伺いました。 けれども私がICレコーダーを持って前に座っていた間、相田さんは、その鼻腔に共鳴した音を再現できませんでした。 非常に近い音は出るのですが、鼻腔への通り道は開いていませんでした。 ご本人も、「違うなあ」と感じられて首をかしげていらっしゃいました。
ですから耳で聞いて同じ音を出そうとすると出来る時もあるけれど、それが「自分の体のどこをどうした時に出てくる声なのか」まだ自覚していない段階だったのだと思います。
ただ12月1日に送られてきた相田さんの音声は、次に沢さんが音質の練習をした時、非常に役に立ちました。 沢さんが「自分と川合先生の声を比べても違いすぎてどうしたらいいのか全然分からない。 そこに自分と川合先生の中間に位置する相田さんの発音を聞くとどうすればいいのかよくわかった」と言っていました。 もちろんこの時の相田さんの録音はみなさんにも聞いていただきます。
けれどもまず、第一週目は娘や相田さんと同じように聞く練習から入っていただきます。
下は私のDVDからとりました発声練習2番ニアニアの練習の音声です。 この音声を「川合典子は、口の後ろから鼻にかけて、どうやってこの声を出しているか」考えながら一日一回聞いてください。
私は軟口蓋を上げて発声しています。 軟口蓋というのは口の天井を後ろに行ったところにある柔らかい部分です。 私の本「英語発音、日本人でもここまでできます。」のマニュアル12ページに絵があります。 DVDでは11分30秒のところで説明しています。 でもそのことにあまりとらわれないで結構ですから、この声がどうやって出てきているのか、それを考えながらじっと集中して聞いてください。
発声練習2番ニアニアの練習 音声はこちらです。
[file:creato-k:LS105329.MP3:sound]
相田さんは50代の女性です。 その彼女が3日で、鼻腔への通り道が開いた、ということは、この練習は年齢とは関係ないということです。 皆さんの中にも3日で、鼻腔への通り道が開く方が出てくるかもしれませんね。 とにかく「この声は川合典子の口の奥から鼻にかけてどうやって出てきているのか」それを想像しながら一日一回音声を聞いてください。
なお、最初の本を出版するときに、声楽の萩原先生に確認いたしましたところ、「鼻腔への共鳴のさせ方は、基本的に男性も女性も同じです」とお答えを頂きました。 男性の方も、私の声が口の後ろから鼻腔にかけてどのようにして出てきているか想像しながら聞いてください。
その時、耳に神経を集中して、音を聞いてください。 第二部の練習は、聞いた音と同じ音を出すようにする耳の働きを使って、鼻腔への通り道を開けていきます。
Where are you? の練習は、今回から唇の力をつけるというよりは、軟口蓋を上げる力をつけるのが目的となります。
簡略腹式呼吸の練習は、鼻腔への共鳴ができるようになると今までより大きな空間に声を響かすことになりますので、たくさんの息が必要になります。 そのためにやっています。 今までは4秒x5回でしたが、今日から5秒x5回で行ってください。
Where are you? の練習と簡略腹式呼吸の練習は毎日行い、英語の例文は一日1種類を3回言っていただくだけで結構です。 下が今週1週間の練習内容です。 来週から実際に自分の声を録音していきます。
* * *
こういう英語の音質で話す練習のお話をすると、必ず、「日本人は日本人の発音でよいのだ。 アメリカ人のような発音をする必要はないのだ」という方がいます。
なぜ、私がこの練習を川合メソッド2に入れたか、というと理由は2つあります。
一つ目は、発声練習をすることなく、鼻腔への通り道を開けることが出来るからです。
日本は住宅事情が厳しいので、家で発声練習ができる方が少ないと思います。 私は最初の本を出版した時からこの問題をどう解決したらよいか、ずっと考えてきました。 この方法なら発声練習をすることなく英語の音質でしゃべれるようになります。 また、娘のように会社から帰ってくるのが遅い人でも、この方法なら鼻腔への通り道を開けられます。
2つ目は、鼻腔に共鳴させて英語を話すと、相田さんも沢さんも大変声が大きくなりました。 口腔だけでなく鼻腔も使いますので、響く空間が大きくなるからでしょう。(だから簡略腹式呼吸の練習も必要になります) 「声が大きくなる」ということは通じやすくなる、自信を持って話しているように聞こえる、ということで、とてもいいことだと思いました。
以上2つの理由から川合メソッド2に英語の音質で話す練習をいれました。 もちろん「自分は英語の音質で話すことに興味はない」と思う方はする必要はありません。 川合メソッド2第二部の位置づけはあくまでも「選択科目」です。
===川合メソッド2第二部、英語の音質で話す練習===
10月2日から8日までの練習
発声練習2番「ニアニアの音声」を、この声がどうやって出てきているか想像しながら
一日一回聞く
毎日する練習
(A)Where are you? の練習5回
(B)簡略腹式呼吸の練習(5秒x5回)
(簡略腹式呼吸は5秒x5回で行ってください。(4秒から5秒に増えています)
月曜日 長いLの練習(2) 3回
火曜日 長いNの練習(2) 3回
水曜日 長いWの練習(2) 3回
木曜日 長いFの練習(2) 3回
金曜日 長いMの練習(2) 3回
土曜日 長いRの練習(2) 3回
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なお、川合メソッド2の練習を営利目的で使用するのはご遠慮ください。
皆様にそのようなお願いをする理由は、こちらでご覧いただけます。
学習者どうしの情報交換は歓迎します。 どんどん行ってください。
発声に関しては日本語と同じ狭い口の空間で、日本語と同じ小さい息の量で声だけ低くすると非常に聞きにくい英語になります。 少しざわざわしているところでは聞き返されてしまいます。
一方、鼻腔も含めた大きな空間にたくさんの息を使って声を共鳴させるとこういう発音になります。(川合典子HP(Wの練習「音声を聞く」)より) 川合メソッド2ではこちらを目指します。