ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2004-05-26(Wed)

[]『ドーン・オブ・ザ・デッド』(ザック・スナイダー監督) 『ドーン・オブ・ザ・デッド』(ザック・スナイダー監督)を含むブックマーク

 ま、サラ・ポーリーね。この作品のプロモーションでのインタヴューで、「この世で一番恐いモノは?」という、記者からの質問に対して、「ジョージ・ブッシュね!」と答えたと言う話を伝え聞いて、その御祝儀で見に行った。

 いや、わたしはジョージ・A・ロメロの『ゾンビ(Dawn Of The Dead)』も見ていないんで、このリメイク作品がいったいどこまで旧作のコンセプトを引きずっているのかとかまったく知らないのだけれども、このザック・スナイダー版での振幅の幅の豊かさは楽しめた。とにかく、冒頭は、9.11以降こんな視点でよく企画が通ったなぁって危うさ満点、で、これって、黒沢清の『回路』ではないか。ラストの「船」にしたってそうだし、この監督はジョージ・A・ロメロはもちろん規範にしているだろうけれど、それ以上に黒沢清の『CURE』、『カリスマ』、『回路』を規範にしているね。ま、個人の崩壊と世界の崩壊を同期させるようなエグい展開こそ、この映画では露骨な採用はしていないけれど、世界の崩壊は、実はヒトの身体(=精神/または精神の不在)から始まる。つまり、内面的な問題なのだよ、という恐ろしさが、100分間持続する。とにかくそれは、「病」の旧時代的なロマンティックな隠喩としての「白血病」という病などという陳腐な題材からスタートする『世界の中心で、愛をさけぶ』などという、そのシノプシスだけで避けて通りたくなるようなシロモノとの距離はあまりにも大きい。

 とにかく、この2004年という時点で、AIDSとかの病、または、テロリズムの暗喩としての「ゾンビ」という存在が、より切迫した実在感を増してしまった、という事を考えてみよう。だからこそ、この悪夢のようなラストから、観客であるわたしは眼をそむけることが出来ないのだ(おそらくこの映画のエンディングのクレジット*1の途中で席を立ってしまう観客はそんなにいないだろう。このラストの回収の仕方は実に見事だ)。そうすると、黒沢清が提起している問題がいかにわたしなどに切迫した問題なのか、と言う事にもなるし、冒頭にあげたサラ・ポーリーのインタヴューの答えが、いかに的を得ているか、と言う事にもなる。マイケル・ムーアなどの展開するちゃちなプロパガンダ映像(もちろんわたしはマイケル・ムーアの新作を見てはいないが、『ロジャー・アンド・ミー』、『ボウリング・フォー・コロンバイン』を見てしまったあとでは、彼の新作など見る必要はまったくないのだ)の裏で、真摯なドラマ作品として世界を悪夢と捉える試みが、日本でもアメリカでも進行している。

 サラ・ポーリーのプロダクション能力は、一目に値するかも知れない。

*1:カイル・クーパーのデザインらしい

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