ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2004-05-28(Fri)

[]『身体へ浸透する美術:パフォーマンス アートの30年、ニューヨークの視座から』
     講演:ローズリー・ゴールドバーグ 進行:木幡和枝
     at 東京芸術大学美術学部講義室 『身体へ浸透する美術:パフォーマンス アートの30年、ニューヨークの視座から』     講演:ローズリー・ゴールドバーグ 進行:木幡和枝     at 東京芸術大学美術学部講義室を含むブックマーク

 Kitchenの初代キュレーターでもあった、ローズリー・ゴールドバーグによる講演ツアーの最終回。どうでもいいことだが、(おそらく同一内容で)森美術館で行われた講演会は有料だったらしい。どうでもいいことだが、今回は一般に公開された無料講演会である。

 で、生まれて初めて、「同時通訳機」というヤツを渡される。Macに取り込まれた映像/音声を、プロジェクター/スピーカーを介して会場に流し、ローズリー・ゴールドバーグはまったくブレイクを入れずに講演を進め、その内容を木幡和枝が同時通訳する。おそらくはこのシステムで何度も講演して来ているのだろうから、実に流暢である(ただし、途中でMacの調子が悪くなって一時中断はあったけれど)。

 先に知っていた情報でも、当日受け取ったインフォメーションでも、『パフォーマンスアートの30年』となっていたが、会場に映された映像の出だしは「100 years of Performance Art」となっていて、その内容も、「未来派」のパフォーマンスの紹介から始まる、20世紀の通史、であった。

 先に個人的な事を書いておくと、わたしの英語能力はものすごっくおぼつかない。6〜7年前にヨーロッパに5週間程滞在した時には、いやおうなく全ての会話を英語で通し、その旅の終わりの頃には「英語でモノを考えるとはこういう事か」という境地に差し掛かった事もあるけれど、それ以来、カラオケで英語の歌を歌う時ぐらいしか英語は使っていないし、英語圏の映画を見ても、まず字幕をあてにしてしまう事もあって、何を言っているのか、本当に断片的にしかわからない。

 で、「同時通訳機」だが、左耳にそのイアーフォンをあて、木幡さんの声を聴き、右耳からローズリー・ゴールドバーグのしゃべる英語を同時に耳にすると、もう英語の方はほぼ完全にわたしの頭がオミットしてしまう。雑音としか聞こえない。この体験はちょっと面白かった。

 ところが、わたしが借りたその「同時通訳機」、講演が始まって30分ぐらいでバッテリーが切れてしまったのだな。あとはもうわたしの英語力だけが頼り。日常会話程度なら何とかついていけるけど、専門用語の飛び交うレクチャーを聴き取るには相当力不足。だから要点はことごとく聴き逃しているだろうけれど、映像などでは初めて眼にするような素材が多く、それだけでも楽しめた。そういう地点からの感想。ゴールドバーグ自身も、ここで紹介するのは20世紀の膨大な作品の中から、一面的な見方での紹介に過ぎないから絶対視しないでほしい、みたいなことを言っていたような(???)気がするから、ま、気ままな気持ちで。


 まずは、20世紀の美術が、実はパフォーマンスが先行した世紀ではなかったかという問いかけ。未来派やダダイズムは言うに及ばず、マニフェスト(こういう言葉を今さら政治的に流行させてほしくないのだけど)が先行したシュルレアリスム、さらに抽象表現主義をも含めて、「まずはパフォーマンスありき」ではなかったか? これは近年のシンディ・シャーマンやマシュー・バーニーまで含めて。そして、フィリップ・グラスにせよ、スティーヴ・ライヒにせよ、そのスタートが「パフォーマンスとしてのアートの舞台」から始まっているとの指摘。

 で、このような視点から、『未来派宣言』が、その発表からわずか3週間というタイムラグ(というより、同時性)で日本で翻訳発表された事なども踏まえ、村山知義や「マヴォ」の運動が評価紹介され、「具体」の村上三郎や、(ちょっとあいだがぬけるけれど)森村泰昌の活動が紹介される(オノ・ヨーコの1965年のパフォーマンス、「Cut Piece」のヴィデオも流されるけれど、彼女は「亡命者」だからね)。

 ま、この講演が日本で行われる事を前提としているのであるから日本のマテリアルを、と探索した結果なのかも知らないけれど、表現が貧弱であれば、写される映像にその弱さも露呈してくるだろう。わたしは本当に不勉強な人間だから、村山知義が屋外で行った公演の写真などは初めて見たりしたんだけど、なんかこう、スコーンと抜けちゃっているような強さがある。

 個人的には、日本の現代美術のことに考えをめぐらしてみたりする事が多くって、例えば今、この芸大の美術館と木場の現代美術館で開催されている『再考:近代日本の美術』(タイトル間違えてるかも知れない)など気になっていて、ま、西欧近代の歴史性の中に参入する事を絶望的に希求しながら、椹木野衣の言う「悪い場所」の「閉じられた円環」という呪縛から逃れられない「日本」の「現代」の「美術」。このような「場」の中でいったいどのようにして主体性を獲得すればよいのか。これは美術作家(と呼ばれたいと思っているらしいよ、ワタシ。)としてのわたしの、それこそ一番の主題ではあるのよ。このくらいの認識はたいていの美術作家は認識しているわけだけど*1、そういう事で、先日わたしの知っている批評書いてらっしゃる方が、彼のホームページのご自分の日記に、先にあげた『再考:近代日本の美術』展を『ONO YOKO展』と比較されて、日本の美術総体が西欧追従に過ぎない「粗大ゴミ」だ、と切り捨てられた事に、深い怒りを感じているのだ。「再考」してほしいのだな。

 とは言え、わたしはこのような講演会で海外の講演者が日本の表現を持ち上げてくれた事を素朴に喜んでいるわけではない。そうではなく、こと日本の事はちょっと置いておいて、「正史」としての西欧の20世紀とは、はたしてどのようなモノであったのか、というヒントが、この講演会にはいっぱい詰められていたと思うのだ。つまり、西欧とはどのような場たり得るのか。

 この講演の終盤の木幡和枝とローズリー・ゴールドバーグの対談で、木幡和枝の「これからのアート・パフォーマンスの主題はどのようなモノになっていくと思うか?」との問いに、ローズリー・ゴールドバーグは、「より政治的なモノになるだろう」と答えていたが、う〜ん、わたしの苦手なテーマだなぁ。でも、確かにそうなって行くのだろう。

 そういう意味で、ローリー・アンダーソンが、「9.11」のわずか10日後のライヴで、それまでずっと封印して来た「O SUPERMAN」*2を、実にン十年ぶりに舞台で歌った、そのライヴの冒頭の、短い(実に短い)映像を見る事が出来たのが、今日の一番の収穫だったかもしれない。

 あと、パフォーマンスの記録としての写真の問題など、興味深い話題はいろいろとあったようだけど、とにかくちゃんと聴き取れていないのだから、墓穴を掘るのはやめて置こう。


 ‥‥しかし、講演会の最後、好例の質疑応答、すごかったな。「某SONYの社員」と自己紹介した英語しゃべる男が、「ロボットとパフォーマンス(というよりダンス)の可能性」についての質問をする。そういった「企業戦士」という立場で、こういうパブリックな講演会で、企業のバックアップを臭わせた設問をするのはルール違反、というか、「今すぐここから出て行け!」と言いたかったな。木幡さんの応対はミゴトだったと思う。英語だったからよくわからないけど。で、最後の質問も、また村上隆ネタ。「コスプレがアートと認定されずに、村上隆がアートなのはなぜか」って。コスプレをアートの舞台に持ち上げようとかの戦略も持ち合わせていないくせに、よくそんな設問ができるよな。これは今の美術志向のやつらの悪いクセで、一夜明けたらそれまで自分が興味を持っていたサブカル的な現象が「アート」と認定されてしまっている事を夢見ているだけ。で、「わたしもそれって昔ッから興味あったのよ」って参入しようとする。自分で方策を練って戦略作れよ。

 あ、オヤジが若いコを叱りつけるような口調になってしまった。そんなわたしって何者だよ。

*1:わたしが「crosstalk」というイヴェントを立ち上げたのも、このような認識と深くつながっているのです

*2:わたし、このシングル盤持ってます

kijiqkijiq 2004/05/28 23:56 あれ。行かれたのですね。自分はチラシ配りに行ってました。ソニー戦士、責めないでくださいな。仲良くなったし。

crosstalkcrosstalk 2004/05/29 00:09 あ、はじめまして。読ませていただいてます。って、チラシという事は、霜田さん関係のお方なんですか??? 黒田さんも来られてましたが(いや、入り口で黒田さんとお会いして一緒に会場を探したんですけど)。これからもよろしくです。

kijiqkijiq 2004/05/29 00:11 霜田さんとさっきまで茶しとりました。私は仕事で途中から入ったのですが、そうですか、ニアミスですね。黒田さん、生きた芸術作品ですよね。

crosstalkcrosstalk 2004/05/29 00:39 馬六明のパフォーマンスの事とか、読ませてもらいました。今日の講演でも、マリーナ・アブラノビッチがそういうパフォーマンスをやって、相当ヤバい状況になってしまった事など、ちょっと紹介されてましたね。西欧人は節度というモノを知らんようですな。

H-WORKSH-WORKS 2004/05/29 01:05 お邪魔します。行きたくていけなかった者です。NIPAF関係の方がだいぶ絡んだ企画だったのですかね。レポありがたいです!

crosstalkcrosstalk 2004/05/29 01:23 H-WORKSさん、はじめまして。(こんなに忙しいのも始めてだな。)いえいえ、NIPAF組は便乗して宣伝しただけですよ(と、いきなりkijiqさんを激怒させてみる試み)。‥‥25時を過ぎると自分の発言に責任が持てなくなって来ますが、失礼をばお許し下さい。しつれい。

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